第百二十九話
ミッチャー機動部隊の攻撃隊が出撃をしてから二時間後、サンディエゴ爆撃に向かった攻撃隊が帰還してきた。
「小沢長官。如何致しますか?」
草鹿参謀長は小沢長官に訪ねた。
まだ電探が捉えてないが、米軍の攻撃隊が第一機動艦隊に向かってくるのは明白であった。
「……全空母に連絡。先に戦闘機を着艦させて燃料タンクを付けさせろ。戦闘機は燃料タンクを装着後、直ぐに発艦してサンディエゴ爆撃隊の護衛を当たらせろ」
「分かりました。直ぐに全空母に連絡しましょう」
小沢長官の判断は早かった。
直ぐに全空母に連絡が伝わり、烈風と陣風が全空母に着艦していく。
ただし、燃料が不足している、搭乗員が負傷している場合は優先してその機体は着艦が出来た。
「燃料タンクの装着急げェッ!!」
航空ガソリンが満タンに入った燃料タンクが着艦した烈風に装着された。
「よし、行くぞッ!!」
パイロット達は自分の身体に鞭を入れて再び発艦していく。
戦闘機の機銃弾の残量は少なかったが、パイロット達の士気は高かった。
戦闘機の発艦が終わると、漸く爆撃隊は着艦する事が出来た。
「よくやったッ!!」
「攻撃は成功だッ!!」
空母の乗組員達は着艦する爆撃隊に声援を送る。
爆撃隊のパイロット達も悪い気はしないため乗組員達に手を振ったりしている。
そして爆撃隊の着艦が完了すると、燃料タンクを装着して上空にいた戦闘機隊が着艦を始めた。
着艦した戦闘機はそのまま飛行甲板で機銃弾と燃料の補給を受ける。
パイロットは補給が完了するまで水を飲んだり、トイレに行ったりして準備を済ませる。
準備が完了した機体から順次、戦闘機は発艦していく。
「何とか間に合いそうですな」
「……うむ」
小沢長官がそう呟いた時、電探室から連絡が来た。
『電探に反応ッ!! 敵攻撃隊ですッ!! 数は約三百ッ!!』
「……敵さんも必死だな」
「此処は彼等の庭ですからな」
小沢長官の言葉に草鹿参謀長はそう言った。
「全艦に連絡ッ!! 対空戦闘用意ッ!! 此処が正念場だッ!!」
『対空戦闘用意ッ!!』
全艦のスピーカーから対空戦闘用意の発令が下り、乗組員達は主砲、高角砲、対空機銃に取りつく。
「青葉型にも活躍してもらわないとな」
小沢長官は空母の周りを航行する艦艇の青葉型防空巡洋艦を見つめた。
旧式の重巡であった青葉型重巡洋艦と古鷹型重巡洋艦は防空巡洋艦へと改装されていた。
主砲はそのままであるが、魚雷発射管とカタパルト、水偵は撤去されて代わりに十センチ連装高角砲、四十ミリ機銃、二十五ミリ機銃が増設されていたのだ。
青葉型は古鷹型も入れて四隻の同型艦となり、第一機動艦隊へ配備されていた。
これは敵の攻撃を一番受けるのが第一機動艦隊と判断したからである。
更に第一機動艦隊には秋月型防空駆逐艦が二八隻も配備されて輪形陣を構成していたのである。
「戦闘機は全部出すんだ」
「分かっております」
小沢長官の言葉に内藤航空参謀は頷いた。
既に艦隊は砲身を上空に向けていた。
「いたぞッ!! 敵攻撃隊だッ!!」
加賀飛行隊長の志賀少佐が敵攻撃隊を発見した。
「全機掛かれェッ!! 一機たりとも艦隊には近づけさせるなッ!!」
志賀少佐は操縦桿を倒して急降下に入った。
迎撃隊は敵攻撃隊に襲い掛かったのである。
「迎撃隊より報告ッ!! 全機の撃墜不可能で艦隊に敵攻撃隊が向かってきますッ!!」
「……戦闘機の数も多いみたいだな」
通信兵からの報告に小沢長官はそう呟いた。
「敵機接近ッ!!」
見張り員が叫ぶ。
その時、戦艦比叡と霧島の主砲が火を噴いた。
「比叡と霧島、対空射撃を開始しましたッ!!」
しかし敵攻撃隊は主砲の砲撃に怯まずに第一機動艦隊に突っ込んでくる。
「長官ッ!! 射撃許可をッ!!」
草鹿参謀長が叫ぶ。
「……全艦対空砲火開けェッ!! 敵機を近づけさせるなッ!!」
そして第一機動艦隊は一斉に対空砲火を開いたのであった。
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