第十三話
色んな意味でハルノートを投げ返しました。
―――同日、ホワイトハウス―――
「大統領。恐らくは日本と開戦になります」
山本との会談が終わったハルは、直ぐにホワイトハウスへ向かってルーズベルトに報告した。
「そうか。決して我々から撃ってはならんからな。向こうから撃たせるのだ」
ルーズベルトは眼鏡をハンカチで拭きながらハルに言う。
「はい、それは分かっています。ですが大頭領。満州の扱いは少し間違っていたのかもしれません」
「うん?どういう事だ?」
ハルは先程の山本との会談をルーズベルトに語った。
―――回想―――
「この件については大統領に確認するまでもありません。我々の最終案は、既に提出済みということで大頭領も承認しています」
「……………」
ハルの言葉に山本は無言でハルの顔を見た。
ハル国務長官は山本の顔を見るのを嫌って、視線を横に背けた。
「……………(アメリカは何がなんでも日本と戦いたいのか……)」
山本はゆっくりと溜め息を吐いた。
「交渉……決裂ですな………」
山本は部屋を出ようとするが、途中で止まった。
「窮鼠猫を噛む……ですな」
山本はハルにそう言い残して部屋を出たのであった。
―――回想終了―――
「ふむ。ということは日本は戦争を起こす気だな」
「やはり目標はフィリピンや東南アジアですか?」
「うむ。ノックスやスチムソンはそう考えている。フィリピンのマッカーサーの援軍もその一つだからな」
フィリピンにはP-40などの戦闘機が多数配備されつつあった。
「充分な警戒は必要ですな」
「あぁ、ただし何度も言うが最初の一発は日本に撃たせるのだ」
「分かりました」
ハルは頷いて、大統領室を出た。
「………フフフ。これでアメリカは参戦出来る………」
椅子に座ったルーズベルトはニヤリと笑った。
しかし、そのにやけた顔は一時間後に無くなるのであった。
「大変です大統領ッ!!」
「何事だね国務長官?」
慌てて大統領室に入ってきたハル国務長官にルーズベルトは少し驚いた。
「日本のノムラ大使とクルス特使がまた来たのですが、我々のハルノートを投げ返してきましたッ!!」
「何ッ!?どういう事だッ!!」
ルーズベルトは驚きながらもハルから手渡された文書を読んだ。
『1、大日本帝国は東南アジアにおける欧米勢力の排除を念願し、米英蘭に対してアジア全域からの撤収を要求する。2、欧米勢力は東南アジア各国の民族自決政府を樹立させる。3、右の要求が貴国らによって受諾かつ実行されると同時に我が国はハルノートの要求を受諾する。右通告は東南アジアにも伝達される』
「………何だとぉ……」
文書を持つ手がプルプルと震えている。
「どうしますか大統領?」
「………ブラフだ。これは奴等のブラフだ。ジャップにそこまでやる必要は無い」
ルーズベルトはそう言い切った。
「この回答は無視だッ!!」
―――第一航空艦隊旗艦赤城―――
「………今頃、ルーズベルトは慌ててるんかな?」
「あえて無視をしているかもな……」
三笠の部屋で、金剛と三笠が将棋をしていた。
部屋の中には榛名や赤城、加賀、翔鶴などがおり、更には霧島大尉もいた。
「艦魂は綺麗だなぁ」
どうやら霧島大尉も艦魂が見えるらしく、彼女いない歴=年齢なのでナンパとかしていた。(本当に陸軍軍人なのか?)
「五月蝿いわよグズ」
飛龍がギロリと霧島大尉を睨んだ。
小沢第一航空艦隊は、北太平洋を航行していた。
艦艇は以前にも述べた艦艇だが、追加艦艇として金剛と榛名も加わっていた。
「しかしな三笠。私と榛名が第一航空艦隊に加わっていいのか?南方に配備しなくていいのか?」
三笠と将棋をしながら金剛が聞く。
「南方にはあいつら四隻がいるから大丈夫や。それにお前らは『アレ』をするためにおらなあかんからな」
三笠は金剛に言う。
「そうか。なら構わんがな……王手だ」
「マジッ!?」
金剛の言葉に三笠は慌てて将棋盤を見るが王将が逃げる場所が無かった。
「………負けたわ……」
「これで三笠の五戦五敗だな」
榛名がニヤニヤしながら言う。
「本当に弱いな」
「うるせぇ。てか金剛、それは地味に心に突き刺さるから止めて」
『ハハハッ!!』
三笠の言葉に周りの皆は笑うのだった。
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