第百二十四話
「まず一つ目はサンディエゴです。此処は海軍基地があり、アメリカ西海岸での米艦隊の基地となるでしょうね」
「だろうな。伊号潜からの情報でも艦隊は集結しているようだからな」
山口中将が頷いた。
「二つ目はサンフランシスコです」
「何故サンフランシスコなんだ?」
大西中将が三笠に訊ねた。
「サンフランシスコには金門橋があります。金門橋は世界一の吊り橋なのでこれを破壊すればアメリカ国民も動揺はすると思います……が、反対に激怒して戦争継続意思になりそうですが……」
「……むぅ、難しいな」
豊田長官は腕を組んで唸る。
「三つ目はシアトルです」
三笠はシアトルを指差した。
「何故シアトルなんだ?」
「シアトルにはボーイングの工場があります。勿論あのB-29も……」
『……………』
三笠の『B-29』という言葉に山口中将達はしかめ面をした。
「シアトル爆撃は大賛成だ。日本を焦土化する事は出来ん」
宇垣中将がシアトル爆撃の賛成を表明した。
むしろシアトル爆撃は全員が賛成を表明した。
「そして最後の四つ目は……ロスアラモスの原爆研究所ですッ!!」
『ッ!?』
三笠の言葉に豊田長官達は息を飲んだ。
「……成る程、サンディエゴ、サンフランシスコ、シアトルは全て囮で本命はロスアラモスというわけか」
豊田長官は頷いた。
「ただ問題はロスアラモスの何処に原爆研究所があるかです。開戦前にスパイをアメリカ本土に送りましたが、それらしい情報は一切ありません」
「……富嶽で偵察するわけにはいかんな」
山口中将がそう呟いた。
「そうなれば奴等にロスアラモスを爆撃する事がバレてしまいます」
「……サンディエゴ攻撃の時に空母から彩雲を出して強行偵察しか無いだろうな」
小沢中将がそう呟いた。
彩雲は単発機で約五千キロの航続距離を持つ艦上偵察機である。
速度が速い彩雲なら強行偵察が出来る可能性は十分にあった。
「……それしかないだろう。姫神もそれで構わないかね?」
「はい、それしき手は無さそうですし」
豊田長官の言葉に三笠は頷いた。
「作戦は出来るだけ早めにした方がいいですが……」
「そこは軍令部と相談しよう」
そこで会議は終了となり、豊田長官は急いで二式大艇に乗り込んでミッドウェー経由で内地に帰還するのであった。
豊田長官が内地に帰還してから軍令部も大忙しであった。
なにせ三笠の攻撃作戦に再び仰天したのである。
「姫神は我々と斜めの思考をしているようだな」
作戦を聞いた山本五十六は苦笑していたそうだ。
結局軍令部も三笠に代わる作戦を思い浮かばず(サンディエゴとサンフランシスコ攻撃は案としてはあった)、ほぼそのまま了承する事になったのだ。
軍令部の関係者曰く「シアトルやロスアラモスの攻撃は無かった」と悔しげに言っていたらしい。
兎も角、日本軍は新たな攻撃作戦のために急いで準備に移ったのであった。
――翔鶴、姫神の部屋――
「……さて、覚悟は決めたのかしら?」
「………………」
三笠は自分の部屋で何故か八重達、艦魂達に対して正座をしていた。
「この集まった奴等は皆、貴様に好意を持っているが……自覚は無かったのか?」
艦魂代表として金剛が訊ねるが、当の金剛は三笠を睨んでいた。
「……その……言い訳というかなんやけど……自分は未来から来たと言ったやろ?」
三笠の言葉に皆は頷いた。
ちなみに人員は人間側から八重、樹里、聖、静流、美紀の五人。
艦魂側は金剛、榛名、長門、レックス、エンターの五人で合わせて十人である。
「未来ではオタクとか言われていたから……俺に恋愛は無いと思ってたから皆が俺に好意を持っているとか全く気付いてなかった。その……こんな俺やけどホンマにええんか?」
「今更な事を言わないでよ」
樹里が溜め息を吐いた。
「貴方だから私達は貴方を好きになったのよ」
美紀は三笠にそう言った。
「……皆、ありがとうな。大好きやッ!!」
三笠は顔を赤くしながら言った。
「……ちょっと恥ずかしいな」
「気にしない気にしない。それで、日本の法律は選ぶの一人だけど、どうするの? 戦国時代とかなら側室とかあったけど」
静流が三笠に聞いた。
「……俺としては選べないから……ジャンケンで」
「……分かったわ。ただし金剛達は駄目よ。申し訳無いけど金剛達は……」
「構わん。三笠が傍にいるだけで十分だ」
プイと金剛がそっぽ向くが、金剛の耳は赤かった。
「似合わない事を言うんだな姉貴は」
「よし榛名。お前は後で特訓だ」
「げッ!?」
『アハハハッ!!』
三笠の部屋は笑いに包まれた。
なお、八重達による壮絶なジャンケンは美紀が勝ったのであった。
「よ、よろしくお願いいたします」
「こ、此方こそ……」
「……甘いな……」
初々しい三笠と美紀に、決勝で負けた聖が口から砂糖を吐きながらそう呟いた。
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