第百十五話
「じゅ、巡洋艦部隊が……」
「……くそッ!!」
リー中将が双眼鏡で被雷した巡洋艦を見ていた。
見ていた巡洋艦ジュノーは右舷に魚雷四発を食らっており、ジュノーの行き足は完全に停止していた。
ジュノーでは総員退艦が出ているのか、艦内から次々と乗組員が飛び出して海面に身を投げる。
ジュノーは徐々に傾斜が酷くなっていたが、それは他の巡洋艦でも似たような光景をしていた。
それを尻目にして、南雲水雷戦隊の軽巡と駆逐艦が米戦艦部隊に突撃していく。
「右舷両用砲撃てッ!! 奴等を追い払えッ!!」
アイオワの右舷両用砲が接近してくる軽巡と駆逐艦に砲撃をする。
それを見ていた南雲司令官は直ちに援護するために重巡部隊でアイオワ以下の戦艦部隊の両用砲を目標にして砲撃を開始した。
重巡は戦艦の主砲には敵わないが、両用砲には勝てる。
南雲司令官はそう判断したのである。
「水雷戦隊だけ活躍させてはならんぞッ!! 此方も撃てェッ!!」
戦況を見ていた宇垣司令官もそう乗組員達を鼓舞する。
大和以下の戦艦部隊も砲撃を開始させた。
「リー司令官、このままでは……」
「……………」
参謀長の言葉にリー中将は何も言わない。
ややあってからリー中将は口を開いた。
「……此処までのようだ。全艦回頭、戦場を離脱する」
それは敗北宣言であった。
「他の艦を見逃すために殿が必要だ。殿はアイオワが引き受ける」
その言葉はまさに死にに行くような事であった。
「……リー司令官、失礼しますッ!!」
「うッ!?」
アイオワ艦長がリー中将の腹を殴った。
リー中将はいきなりの事に、リー中将は気絶をした。
「リー司令官はこれからも必要な人だ。丁重に駆逐艦へ移送して戦場を離脱させる」
「艦長は……」
「私はアイオワの艦長だ」
乗組員の言葉にアイオワ艦長は笑った。
そして、気絶したリー中将が駆逐艦に移送されるとアイオワは大和以下の戦艦部隊に向かって突撃を開始した。
「敵先頭艦、突撃してきますッ!!」
「……他の艦を見逃すためだろうな」
「……止めを刺しますか?」
松田参謀長が宇垣司令官に聞いた。
「……いや、捕らえよう。アメリカの技術力をどんな物が見る必要がある」
宇垣司令官は沈めるより捕獲する事にしたのだ。
「……成る程。ですが、ワシントンは無理そうですな」
ワシントンは大傾斜をしており、いつ沈んでもおかしくない状況だった。
「本当ならワシントンもと思うが仕方ない」
そして宇垣司令官の命令は全艦に伝わり、突撃してくるアイオワの周りを航行する。
無論、沈められるのは御免だからアイオワの艦橋を狙ったりしてアイオワの戦意を失わせる事にする。
その間にも四隻の戦艦を主力にした米戦艦部隊は水平線上に消えていく。
遂にアイオワも終わりを迎える時が来た。
重巡足柄が放った砲弾が艦橋に直撃したのだ。
これにより、艦橋にいた艦長以下全員が戦死をし、ダメコン隊を指揮していた副長が代理のアイオワ艦長になった。
副長はこれ以上抵抗するのは無理と判断をして白旗を掲げて航行を停止した。
「よし、臨検隊を送れ。丁重にな」
「分かりました」
松田参謀長が敬礼をして作業に移る。
宇垣司令官はそれを見ながら長官席に座り込んだ。
「……後は陸軍に任せるか」
宇垣司令官はそう呟いた。
海軍の仕事はほぼ終わっていた。
後は陸軍がハワイに上陸をして陸上戦を展開するのだ。
――第二機動艦隊旗艦翔鶴――
「宇垣の戦艦部隊が米戦艦部隊を撃滅をしてアイオワを捕獲したそうだ」
電文を読んだ山口長官が皆に言う。
「なら我々も陸軍を楽させるようにもう二回程ハワイを爆撃しましょうか」
三笠が山口長官に言う。
「ふむ……それもそうだな。爆撃を翌日にして徹底的にやろう」
山口長官も三笠の案に賛成し、奥宮航空参謀等も賛成したので案は通った。
そして翌日、第二機動艦隊からハワイ攻撃隊が発艦していくのであった。
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