第百十四話
「ぐおッ!?」
リー中将達はいきなりの被雷に、身体を床に叩きつけた。
「な、何事だッ!!」
リー中将はよろめきながら立ち上がる。
「ジャップのサブマリンですッ!!右舷に二発の魚雷が命中しましたッ!!」
「な、何ぃ?」
リー中将は驚いた。
「魚雷二発命中ッ!!」
「よし、水柱が上がっているッ!!」
潜望鏡でアイオワが被雷した瞬間を見た伊七七潜水艦の艦長が歓喜した。
伊七七潜は伊七八潜、伊七九潜と共に米戦艦部隊に接近をして魚雷を放ったのだ。
魚雷はアイオワの他にもサウスダコタ、インディアナ、アラバマ等にも命中している。
「敵駆逐艦接近ッ!!」
「急速潜航ッ!!深度八十ッ!!」
伊七七潜は急いで潜航していく。
駆逐艦が爆雷を投下しようとした瞬間、戦艦山城からの砲弾が命中して爆沈した。
「今が好機だッ!! 水雷戦隊は敵戦艦部隊に突入せよッ!!」
「はッ!!」
宇垣司令官の言葉が直ぐに水雷戦隊旗艦愛宕に伝わる。
「南雲司令官、大和から突撃命令が出ています」
「……うむ、全艦突撃せよッ!!」
水雷戦隊参謀長の田中頼三少将の言葉に水雷戦隊司令官である南雲忠一中将が突撃命令を出した。
水雷戦隊は旗艦に重巡愛宕を筆頭に重巡五、軽巡四(うち二隻は重雷装艦の北上と大井)、駆逐艦二四隻で編制されていた。
突撃命令を受けた水雷戦隊の各艦は一斉に最大速度で米戦艦部隊に突撃していく。
「ジャップの水雷戦隊が突撃してきますッ!!」
「追い払えッ!! 此方も水雷戦隊を出すんだッ!!」
「アイアイサーッ!!」
リー中将の命令を受けた水雷戦隊が宇垣艦隊へと向かう。
「敵戦艦部隊から水雷戦隊が離脱をして此方に向かってきますッ!!」
「……面白くなってきたな……」
「そうですな。これで第三機動艦隊の戦艦部隊も参戦したらより面白くなりますが……」
「ハハハ、それもそうだな」
松田参謀長の言葉に宇垣司令官は笑う。
しかし、実は第三機動艦隊から戦艦豊後と常陸が離れて此方に向かっている事は知らなかった。
一方、水雷戦隊旗艦愛宕は至近弾で多数の水柱に包まれていた。
「これは迫力満点だな参謀長」
「そのようですな。日本海海戦を戦った英霊達もこんな体験をしていたんでしょうな」
愛宕の艦橋で南雲司令官と田中参謀長が笑いあう。
愛宕は接近してくる米重巡部隊から砲撃を受けていたが、今のところ命中弾は無かった。
逆に、愛宕以下の重巡部隊は米重巡部隊に対して命中弾を出していた。
「訓練の賜物だな」
「は、姫神中佐のお陰でしょう。知らせてくれなかったら史実とやらのスラバヤ沖海戦になっているでしょうな」
「それもそうか。駆逐隊は突破出来たか?」
「まだかかるみたいです。向こうも軽巡部隊を出しているようなので」
「むぅ、敵重巡部隊との砲撃戦も終わらせるか。重巡部隊は前進ッ!! 奴等の土手っ腹に魚雷を食らわせるぞッ!!」
南雲司令官はそう叫び、愛宕以下の重巡部隊は米重巡部隊に舵を切る。
「ジャップの重巡部隊が突撃してきますッ!!」
「ジャップの奴等を近づけさせるなッ!!」
巡洋艦アトランタの艦橋でスコット少将が叫ぶ。
しかし、スコット少将も日向からの砲弾がアトランタの艦橋に命中して戦死してしまうのである。
これを受けて他の巡洋艦は動揺してしまう。
それを南雲司令官は見逃さなかった。
「奴等が動揺している。今が好機だッ!! 魚雷戦用意ッ!!」
愛宕以下の重巡部隊の魚雷発射管が隊列が乱れている米重巡部隊に照準する。
「魚雷発射用意完了ッ!!」
「撃ェェェッ!!」
米重巡部隊との距離一万で、南雲司令官の叫びと共に日本海軍の秘密兵器である酸素魚雷が一斉に発射された。
目標は米重巡部隊である。
発射直後は航跡を出していた酸素魚雷であるが、米重巡部隊付近になると無航跡になっていた。
そして酸素魚雷は米重巡部隊の土手っ腹に命中したのである。
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