第百十話
さて、今日はバイトしてからヤマト2199見に行くか。
「よろしいのですか?あのような電文を送って……」
「構わん。パールハーバーは持たない」
部下の言葉にキングはそう断言した。
「ですが、パールハーバーは重要だと思いますが……」
「貴様に言われなくても分かっているッ!!」
キングは一蹴した。
「だがまだダッチハーバーがある。そこを拠点にする事も可能だ」
アリューシャン諸島にあるダッチハーバーは、工事によって港を拡張をしていた。
「太平洋艦隊司令部は当面サンディエゴに置くだろうな。ジャップもそこまでは来れまい」
サンディエゴ、ロサンゼルス等の航空基地には多数の戦闘機や雷撃機がいた。
更には訓練中のエセックス級空母群もいる。
「ハワイは時間を稼げればいいのだ(何が時間稼ぎだ。プレジデントがチャーチルを助けるとか抜かすからこうなったんだぞッ!!)」
キングは内心、ルーズベルトを罵倒していた。
「(……済まない)」
キングは心の中でハワイにいる将兵に謝った。
そしてオアフ島では、キングから撤退命令を受けたニミッツはカタリナ哨戒機に乗り込もうとしていた。
「……済まないエモンズ。ジャップを追い払ってくれ」
ニミッツ司令長官は、見送りに来ていた陸軍ハワイ地区司令官のエモンズ中将に申し訳なさそうに言った。
「仕方ありませんよニミッツ長官。出来る限り時間は稼いでみせます」
エモンズ中将はそう言った。
「……頼む」
ニミッツ司令長官はエモンズ中将にそう言うと、カタリナ哨戒機に乗り込み、ニミッツ達を乗せた二機のカタリナは発進した。
護衛は空襲からの破壊を免れたヘルキャット十七機である。
ニミッツ長官達は、西海岸まで撤退中のハルゼー機動部隊に合流しようとしているのである。
一方、リー中将の戦艦部隊は上陸船団の方向を目指していた。
リー中将も撤退命令は受け取っていたが、リー中将は自分も時間を稼ぐとして敵戦艦部隊に艦隊決戦を挑もうとしていた。
「……我々は決死隊だな」
戦艦部隊旗艦アイオワの艦橋でリー中将はそう呟いた。
「だがいい。ヤマトとムサシを沈めれば奴等の士気はがた落ちだ」
リー中将は大和と武蔵が日本戦艦の象徴だと確信していた。
そのため、二隻を沈めれば攻略を中止すると踏んでいた。
しかし、リー中将は知らなかった。
大和と武蔵は主砲を四六センチ砲から五一センチ砲へと換装していた事を……。
そして大和と武蔵に随伴する扶桑や伊勢等の戦艦が四十一センチ砲へ換装している事も……。
――戦艦部隊旗艦大和――
「何?敵戦艦部隊を発見しただと?」
戦艦部隊司令官に就任したばかりの宇垣纏中将は参謀長の松田千秋少将に聞いた。
「はい、瑞雲からの報告です」
松田参謀長は自信を持って言う。
「……艦隊決戦か……」
「やるつもりですか?」
宇垣の言葉に松田は聞いた。
「今やらなくていつするのかね?上陸船団の護衛は第三機動艦隊に任せると大西に伝えろ」
「分かりましたッ!!」
宇垣司令官の命令は直ぐに第三機動艦隊司令長官大西中将にも伝わり了承となった。
「これより戦艦部隊は敵戦艦部隊との艦隊決戦に入るッ!!」
宇垣の言葉に乗組員達の士気は上がった。
大和以下の戦艦部隊は上陸船団から離れて敵戦艦部隊へと向かった。
「敵戦艦部隊視認しましたッ!!距離五万二千ッ!!」
見張り員が叫んだ。
「……大和と武蔵の最大射程距離から砲撃を開始しますか?」
「うむ、それで頼む」
この時、宇垣司令官の戦艦部隊は戦艦大和、武蔵、改装が完了したばかりの長門、陸奥、扶桑、山城、伊勢、日向の八隻である。
長門と陸奥は史実の工業力ならまだ改装中たが、ドイツから大量に工作精密機械を購入しているので早めに改装が完了したのである。
艦政本部内では「神様仏様ドイツ様」とまで言われるほどだ。
「燃えてきたな」
「はい」
宇垣司令官の言葉に松田参謀長は頷いた。
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