第十一話
―――九月下旬、伊予灘―――
伊予灘には、四月に編成された第一航空艦隊がいた。
ブオォォォォォーーンッ!!
その第一航空艦隊へ二機の零戦が飛来してきた。
二機の零戦は改装が完了していた第一航空艦隊旗艦赤城に着艦をした。
バババババババッ!!
「ふぅ、上手く三点式着陸が出来たな」
零戦の風防が開いて、操縦席から三笠と桃野少尉が出てきた。
「大分上手かったですよ少佐」
桃野少尉が三笠に言う。
「なら大丈夫か。艦橋へ行くで」
「了解です」
二人は赤城の艦橋へ向かった。
―――赤城艦橋―――
「失礼します」
「お、来たな」
二人が艦橋に入ると『鬼瓦』で有名な小沢治三郎中将がにこやかに出迎えてくれた。
「姫神三笠少佐、第一航空艦隊特務参謀として只今着任しましたッ!!」
「桃野静流少尉、姫神三笠少佐の副官として只今着任しましたッ!!」
二人は第一航空艦隊司令長官の小沢中将に敬礼をする。
「うむ。貴官達の活躍を期待しているぞ」
小沢は二人に返礼をした。
「第一航空艦隊参謀長の草鹿龍之介だ。階級は少将だが気楽に話し掛けてくれたらいいぞ」
史実同様に第一航空艦隊参謀長は草鹿龍之介少将が就任していた。
そして未来の知識を持っている三笠を活かすために第一航空艦隊を補佐する形の特務参謀として吉田大臣は三笠を送り込んだのである。
なお、史実での航空参謀は源田実だが、この世界での第一航空艦隊航空参謀内藤雄中佐であり、源田は練習航空隊の教官として赴任していた。
「よろしくお願いします」
二人は草鹿にも敬礼をする。
「どうだい姫神少佐?未来では到底見られない第一航空艦隊だぞ?」
小沢中将は桃野少尉には聞こえないよう三笠に外を見るように言う。
「………確かに未来では見られない光景ですよこれは……」
赤城の右舷には同じ第一航空戦隊で改装を終えている加賀がおり、後方には第二航空戦隊司令官山口多聞少将が率いる空母蒼龍と飛龍。
原忠一少将が率いる第五航空戦隊の空母翔鶴、瑞鶴が航行している。
そして空母を守るように輪形陣を組んでいるのが戦艦比叡、霧島。
重巡利根、筑摩。
軽巡長良、五十鈴。
駆逐艦十六隻である。
中型空母の隼鷹型や小型空母は別府湾で訓練をしていた。
「取り敢えず今日はゆっくり休んで構わない。明日からはしっかり働いてもらうからな」
「分かりました」
小沢の言葉に三笠は頷いた。
「ふぅ〜いい風や〜」
夜、三笠は赤城の飛行甲板にいた。
三笠と桃野少尉の歓迎会があって、小沢中将との飲み合いで一時的に飛行甲板へ転進してきたのだ。
「小沢中将は飲み過ぎやのによう倒れへんよな……」
三笠は苦笑する。
「今晩わ姫神少佐」
「ん?」
三笠の後ろから声がして振り返ると、長髪で士官服を着た女性がいた。
「貴女は………」
「会うのは初めてですね。私は赤城。航空母艦赤城の艦魂の赤城です」
赤城は大和撫子と言うべき振る舞いをしていた。
「これは御丁寧に。姫神三笠少佐です」
「はい。少佐の事は伺っています。未来から日本人だと………」
「情報が早いですなぁ」
「艦魂には独自に艦魂新聞と言う物があるので情報が入ってくるのです。これから皆を紹介したいのですが如何ですか?」
赤城は三笠に言う。
「構いませんよ」
「ありがとうございます。それと敬語じゃなくてもよろしいですわ」
「そうか?敬語はちょっと疲れるからな」
「フフフ」
三笠は赤城の案内の元、飛行甲板から移動して赤城の第三会議室に入った。
「………へぇ」
第三会議室に入った三笠は思わず嬉しそうに呟いた。
第三会議室には多数の女性―――艦魂がいたからだ。
「あら、貴方が未来から来た日本人ね?」
「あぁそうやけどあんたは?」
「私は航空母艦加賀の加賀よ」
加賀は髪を三つ編みにした女性だった。
「フン。((( ̄へ ̄井)あたしは飛龍よ。そしてあたしの後ろにいるのは姉の蒼龍よ」
ツインテールの飛龍とおずおずとしている三つ編みの蒼龍が言う。
「私は翔鶴だ。よろしく頼む」
「ボクは瑞鶴だよ」
ポニーテールにした翔鶴(山下利古里似)と、ボクっ子のショートヘアをした瑞鶴が言う。
「あぁ、よろしくな」
「建造中の艦を除いて大体の艦魂は姫神少佐の事を知っていますわよ」
「そうか………(ストーカーぽいで)」
三笠は心の中でツッコミを入れる。
「では今から艦魂による姫神少佐の歓迎会をしますわ」
『乾杯ッ!!』
「あ、こりゃぁどうも………」
三笠自身、そんなに自分の事が艦魂達に知られている事は知らなかった。
「姫神。未来の日本の事を聞かせてくれないか?」
日本酒が注がれたコップを持った翔鶴が三笠に近づく。
「そりゃぁ構わんで」
雑談したり、飲みあったりと艦魂の歓迎会をも受けた三笠であった。
しかし、日米の溝は深まっていくばかりであった。
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