第百九話
明日明後日更新出来るか未定です。
黒煙をあげる第一機動艦隊から離れていく攻撃隊がいた。
国籍のマークは星なので米軍の攻撃隊だと分かる。
米攻撃隊の各機はどれも被弾しており、無事な機体はいなかった。
出撃した二百機あまりの米攻撃隊は今や約六十機ほどしかなかった。
残りは撃墜か不時着水を余儀なくされたのである。
しかし、それは米攻撃隊だけではない。
小沢第一機動艦隊も黒煙を噴いている。
黒煙を噴いているのは空母蒼龍、雲龍、炎龍の三隻である。
「……三空母の被害はどうなっている?」
大鳳の艦橋で小沢長官は草鹿参謀長に聞いた。
「沈没の気配は無いそうです。三空母とも爆弾での被害ですので。これで飛行甲板に爆弾や魚雷を搭載していたミッドウェー海戦なら三空母は沈没していたでしょう」
草鹿参謀長はそう報告した。
黒煙を噴いていた蒼龍達三空母はいずれも急降下爆撃機ヘルダイバーによる爆撃で損傷していたのだ。
ちなみに雷撃機の戦果は無かった。
「それに大鳳の防御力も凄いですな。二発の爆弾を食らったのにも関わらず、三空母みたいな損傷はしていないんですから」
大鳳の飛行甲板は七五ミリの装甲を装備しているので五百キロ爆弾も耐えれるのである。
「攻撃隊の戦果はどうだ?」
「同行した彩雲からの報告によれば、大型空母三、中型空母三、小型空母二隻を撃沈しています」
「……それは本当か?」
小沢は思わず聞き返した。
「は、はい。自分もそう思って彩雲に何度も聞き返しましたが、本当のようです」
「……いくらベテランの攻撃隊だからといって大中小の空母八隻を撃沈出来るなど無理だと思うのだが……」
「台湾沖航空戦の事ですか?」
「うむ。草鹿参謀長、念のためにもう一度彩雲を出して確認しておいてくれ」
「分かりました」
草鹿参謀長は小沢長官に敬礼した。
「……戦場での誤認はよくある事だ。しかし、これが真実だとすれば喜ばしい事だがな」
それから数時間後、発艦した彩雲も同様の無電を送ってきたため漸く小沢長官達も空母八隻撃沈を信じたのである。
「攻撃隊の被害は?」
「戦闘機八機、艦爆十一機、艦攻十六機です。ですが電探欺瞞紙のおかげで被害は出来る限り抑えられています」
「……三五機だけでもマシだと言う事か。マリアナに比べたらな」
小沢長官はそう言って苦虫を潰したような表情をする。
この世界の小沢はマリアナ沖海戦を経験していないが、確かにマリアナで日本海軍の機動部隊は壊滅したのである。
「それで敵機動部隊はどうなっている?」
「彩雲からによりますと、西海岸に進路を向けています」
「……逃げたか」
「はい。更に彩雲は敵戦艦部隊を発見しています」
「……それは宇垣に任せよう。たまには戦艦部隊にも仕事をやらせてあげないとな」
「そうですね」
「失礼しますッ!!」
その時通信参謀が艦橋に駆け込んできた。
「山口中将の第二機動艦隊より入電ッ!! 『我、真珠湾爆撃ス』」
「よし、成功したか」
第二機動艦隊からの電文に小沢長官は綻んだ。
山口中将の第二機動艦隊は、航空戦をしていた第一機動艦隊とハルゼー機動部隊の隙を突いて真珠湾に向けて攻撃隊を発艦させていたのである。
二百四十機あまりの攻撃隊は真珠湾にあるレーダーに引っ掛からないように低空飛行で真珠湾を目指したのである。
奇襲に近い形で攻撃を受けた真珠湾は深い傷を負ったのだ。
更に真珠湾の空襲にキングが動いた。
――オアフ島、太平洋艦隊司令部――
「ニミッツ長官。キング作戦部長から緊急電です」
「何?……こ、これは……」
通信紙を受け取ったニミッツ長官は驚愕した。
『貴官は直ちに西海岸へ向かえ』
電文はこう書かれており事実上、海軍は真珠湾を放棄したのも同然だった。
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