第百七話
関中佐機が放った五百キロ爆弾は空母エセックスの飛行甲板を貫通して格納庫でその力を開放した。
ズガアァァァーーンッ!!
「ぐうぅッ!!」
ハルゼー達は衝撃で床に叩きつけられた。
「被害知らせェッ!!」
『格納庫で爆弾命中ッ!! 火災発生ッ!!』
「また敵機来ますッ!!」
見張り員の叫びと共に第二、第三の五百キロ爆弾が命中した。
「消火急げェッ!!」
ダメコン隊が消火ホースを持って消火するが、そこへまた五百キロ爆弾が命中してダメコン隊を吹き飛ばした。
「行くぞォッ!!」
エセックス級空母四隻が被弾したのを見た友永少佐は最大速度で硬度五メートルで炎上するエセックス級空母に迫った。
「撃て撃てッ!!」
エセックス級空母の対空砲火が友永少佐の天山隊を襲う。
「四番機直撃ッ!!」
友永隊の天山に対空砲弾が直撃して天山はバラバラに吹き飛ばされた。
「七番機撃墜ッ!!」
更に、対空砲弾が友永隊の天山七番機の左翼を吹き飛ばした。
片翼をもぎ取られた天山七番機はスパイラル回転をして海面に叩きつけられた。
「距離はッ!!」
「千二百ッ!!」
偵察員がエセックス級空母との距離を測る。
そこへ対空機銃が友永機の右翼に命中した。
「数発の穴が開いてますが飛行に支障無しッ!!」
機銃手が友永少佐に報告する。
「距離九百ッ!!」
偵察員の報告に友永少佐はソッと投下索に手を添えた。
「距離八百ッ!!」
友永少佐は対空機銃の弾丸をかわすために左右にぶれる。
「距離七百ッ!!」
「投下ァッ!!」
距離七百を聞いた瞬間、友永少佐は投下索を引いた。
フワッと浮き上がるのを利用して友永機は上昇して離脱していく。
「列機も上昇中ッ!!」
しかし、八番機はエンジンに機銃弾を受けて炎上。
八番機はそのままエセックス級空母の艦橋の根本に激突した。
「……………」
友永少佐は無言で敬礼をした。
一方、天山が激突したエセックス級空母は一番艦のエセックスであった。
天山は艦橋の根本に激突したが、幸いにもハルゼー達がいる場所に激突してはいなかった。
だがその直後、一機の彗星が敵討ちとばかりにエセックスの艦橋を機銃掃射をした。
ハルゼーはエンタープライズに乗っていた時も機銃掃射を受けて負傷していた。
しかし今回は重傷だった。
彗星が放った十二.七ミリ機銃はハルゼーの左二の腕付近から下を切断させたのだ。
「ハルゼー長官ッ!! しっかりして下さいッ!!」
頭を負傷したカーニー参謀長が倒れたハルゼーを起こす。
ハルゼーの左二の腕からは大量の血が流れ出ていた。
「軍医を呼べェッ!!」
ハルゼーは幕僚達に抱き抱えながら駆逐艦へ移送された。
エセックスもその生涯を終わろうとしていたのだ。
友永隊が放った魚雷は四発が命中して大量の海水でハルゼーが駆逐艦へ移送された直後には左舷に大傾斜をしていた。
エセックスがその身を海底へと潜ったのは攻撃隊が帰還してからであった。
その他にもバンカーヒル、フランクリンの飛行甲板が海面まで迫っており、中型空母四隻のうち三隻は既に沈没していた。
「たった一回の攻撃でこうも簡単にやられるなんて……」
頭に包帯を巻いたカーニー参謀長は沈みゆくバンカーヒルを見ながらそう呟いた。
「……だがまだ終わったわけではない」
米機動部隊が放った攻撃隊は第一機動艦隊へ迫ろうとしていたのだ。
「やはり来ましたな」
「うむ、迎撃機を出せッ!!」
各空母から烈風と陣風が発艦していく。
「此処を守りきれば我々の勝ちだ」
小沢長官はそう呟いた。
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