第百六話
「ハルゼー長官ッ!! オザワの機動艦隊を発見しましたッ!!」
「……ヤマグチの機動艦隊はいないだと?」
通信紙を受け取って一読したハルゼーはそう呟いた。
「ヤマグチの機動艦隊はインド洋にでも行ったのではないですか?」
参謀長のカーニーが言う。
「馬鹿野郎ッ!! 今更インド洋に向かって何をする気なんだッ!!」
ハルゼーの雷がカーニー参謀長に落ちた。
「ハワイを攻略するならトヨダは全部注ぎ込むはずだ……」
ハルゼーは考え込むが何も見つからない。
「……仕方ない。今はオザワの機動艦隊を倒すのが先だ。カーニー、攻撃隊の準備は?」
ハルゼーはカーニー参謀長に聞いた。
「ハルゼー長官の出撃命令があれば何時でも行けます」
カーニー参謀長は自信満々に頷いた。
「よし、攻撃隊発艦だッ!! キルジャップッ!! キルジャップッ!! キルジャップだッ!!」
ハルゼーは叫んだ。
四隻のエセックス級大型空母と四隻のインディペンデンス級中型空母の飛行甲板に整列していた新型戦闘機であるF6Fヘルキャット、急降下爆撃機ヘルダイバー、雷撃機アベンチャーは勢いよくプロペラを回し始めた。
そして油圧カタパルトに設置されたヘルキャットが次々と発艦していく。
上空では小型空母から発艦したヘルキャットが攻撃隊の護衛をしていた。
発艦が終了した攻撃隊は編隊を組んで第一機動艦隊へ目指した。
「戦闘機は何時でも飛べるようにしておけ。ジャップは来るぞッ!!」
「アイサーッ!!」
カーニー参謀長は敬礼で答えた。
そして一時間半後、攻撃隊はやって来たのである。
「見えたぞハルゼーッ!!」
天山の操縦席で友永少佐は叫ぶ。
攻撃隊総隊長は関衛中佐である。
「総隊長機から『トツレ』ですッ!!」
偵察員が叫ぶ。
「よし、雷撃隊は降下するぞッ!!」
攻撃隊は烈風七二機、更に新型戦闘機の陣風十八機、彗星九十機、天山九十機であった。
既に烈風と陣風はヘルキャットと空戦をしている。
よく見れば、火を噴いて落ちていく戦闘機はどれもヘルキャットばかりである。
「頼むぞ千早」
友永少佐は六機の彩雲を見た。
彩雲は腹と左右の主翼に落下式燃料タンクを搭載していた。
しかし、中身はガソリンではなかった。
「よし、やるか」
彩雲の偵察席で千早少佐はそう呟くとパイロットは速度を上げて高度七千でハルゼーの機動部隊上空を飛行した。
「ふむ、そろそろ構わんだろう。全機『電探欺瞞紙』投下ァッ!!」
千早少佐の言葉と共に燃料タンクは落下した。
燃料タンクは途中でパカッと二つに開かれて中から銀色のアルミ箔製のテープが空中にバラまかれた。
更に彩雲の操縦席や偵察席からもアルミ箔製のテープがバラまかれる。
「な、何だこれはッ!?」
レーダー員が叫んだ。
スクリーンは乱れて白濁してしまった。
また、彩雲を狙っていた高角砲があらぬ方向で爆発する。
「何をしているんだッ!!」
「駄目ですッ!! 砲弾が自爆していきますッ!!」
ハルゼーの叫びにカーニー参謀長はそう答えた。
米機動部隊は大混乱をしていた。
「今が好機だッ!! 全機突撃ッ!!」
関中佐は対空砲弾が乱れた瞬間、『ト連送』を発信して急降下を始めた。
彗星隊はエセックス級を狙う。
「敵急降下ァッ!!」
見張り員の叫びにハルゼーは咄嗟に上空を見た。
爆弾倉を開いて投下寸前の彗星――関中佐機がいた。
「撃ェッ!!」
関中佐は投下索を引いた。
切り離された五百キロ爆弾は空母エセックスに向かってきた。
「総員衝撃に備えろォッ!!」
ハルゼーは叫んだ。
五百キロ爆弾は空母エセックスの飛行甲板を貫通。
貫通した五百キロ爆弾はエセックスの格納庫で爆発した。
御意見や御感想等お待ちしていますm(__)m




