第百四話
―――四月二十日―――
ガトー級潜水艦のアルバコアはミッドウェーを偵察中にその大艦隊を見つけた。
「Ohッ!!何という艦艇の数だッ!!」
潜望鏡を見ていた艦長は思わず叫んだ。
「至急太平洋艦隊司令部に知らせろッ!!」
「ジャップのデストロイヤーが接近してきますッ!!」
その時、ソナー員が叫んだ。
「急速潜航ッ!!」
「デストロイヤーが爆雷を投下ッ!!」
「総員対ショック防御ッ!!」
ズズウゥンッ!!
ズズウゥンッ!!
アルバコアの左右で駆逐艦から投下された爆雷が爆発する。
「漏水ィィィッ!!」
「バルブを閉めろッ!!」
ゴン。
その時、アルバコアの右舷の艦体に爆雷が当たってそのまま沈む。
ズズウゥンッ!!
ズズウゥンッ!!
爆雷はアルバコアの下で爆発。
爆発の衝撃をアルバコアは耐える事は出来なかった。
「このままでは沈没しますッ!!」
「………やむを得ん。急速浮上ッ!!砲戦用意ッ!!」
そしてアルバコアは傷つきながら浮上をして待ち構えていた駆逐艦と砲撃戦をして、艦体は穴を開きながら沈没していった。
しかし、アルバコアが発した無電は太平洋艦隊司令部に届いていた。
―――太平洋艦隊司令部―――
「大変ですニミッツ長官ッ!!」
「どうしたレイトン?」
長官室にレイトン情報参謀が駆け込んできた。
「ガトー級潜水艦のアルバコアから緊急電ですッ!!ミッドウェーにジャップの大艦隊を発見しましたッ!!」
「何ッ!?それは本当かッ!!」
ニミッツ長官は思わず実を乗り出した。
「はい。ですが、アルバコアはその直後にジャップのデストロイヤーに沈められたので信憑性は分かりません」
「………いやそれは真実だろう。ジャップはソ連との戦いは終わったのだ。ハワイ攻略を考えてもおかしくはない」
「それでは………」
「陸軍にも要請をしてミッドウェー周辺を中心に偵察機を出すんだ。パールハーバーにいる艦艇は全て出撃準備だッ!!」
ニミッツ長官は指示を出す。
この時、パールハーバーにはハルゼー中将の機動部隊とリー中将の戦艦部隊がいた。
戦艦はアイオワ、ノース・カロライナ、ワシントン、アラバマ、インディアナ、マサチューセッツの六隻である。
「クソッタレッ!!空母四隻でジャップのオザワ達とどう戦えと言うんだッ!!」
ハルゼー中将は空母エセックスの艦橋で怒り狂っていた。
ハルゼー機動部隊は大型空母は四隻だけだが、中型空母四隻、小型空母十隻を揃えていた。
「何としてでもジャップのハワイ占領を阻止だッ!!」
ハルゼーはそう叫び、ハルゼー機動部隊とリー戦艦部隊はパールハーバーを出港した。
アルバコアが見つけた大艦隊は陸軍の上陸船団とそれを護衛する第三機動艦隊だった。
上陸船団はミッドウェーを経由してハワイを目指していたのだ。
第一、第二機動艦隊の存在は全く気付いていなかったのだ。
「ハワイにいる伊号艦の報告ではハルゼーの機動部隊とリーの戦艦部隊が出撃したようです」
「ふむ。なら第一機動艦隊と戦艦部隊はハルゼーに向かうとするか。ハワイは山口に任せよう」
草鹿参謀長の報告に小沢長官はそう決断した。
―――第二機動艦隊旗艦翔鶴―――
「山口長官、赤城より発光信号です。『我、敵機動部隊ニ向カウ。貴艦隊ハ任務ヲ遂行セヨ』です」
「………悔しいが第一機動艦隊はそのための艦隊だからな。了解すると返信しておけ」
第一機動艦隊は敵機動部隊との決戦のために編成されている機動艦隊であり、第一機動艦隊には空母大鳳、雲龍、天城の新型艦が配備されていた。
なお、葛城は第二機動艦隊に配備されている。
「第二機動艦隊はこのまま突き進む。対潜警戒を厳とせよ」
「分かりました」
山口長官の命令に古村参謀長は敬礼をした。
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