第百二話
―――1944年三月二十八日、ホワイトハウス―――
「何という事だッ!!まさかソ連がナチスとジャップに破れるとは………」
ホワイトハウスの大統領室でルーズベルトが怒り狂っていた。
「………これで、ナチスとジャップは我が合衆国と戦うわけか。いや、ナチスはまだチャーチルがいるから先にイギリスの再攻撃だろうな」
ルーズベルトは報告書を見ながらそう呟いた。
「キング、大西洋にいる空母は何隻かね?」
ルーズベルトはキングに聞いた。
「大西洋にいる空母は八隻で実践に参加出来る空母は三隻だけです。何分、太平洋を重視してますので」
「太平洋には何隻いる?」
「竣工している空母は十隻、実践に参加出来る空母は六隻です」
太平洋艦隊はこの六隻を機動部隊にした第五八機動部隊を編成した。
壊滅したアメリカの機動部隊はハワイにて甦ったのである。(麦人風)
「………二隻を大西洋に回航しろ。イギリスは助けねばならん」
「ですが太平洋は………」
「まだ訓練中のがいるだろ」
キングの言葉をルーズベルトは一蹴した。
「それに太平洋でジャップは防御が不可能な島は放棄しているらしい。そこを占領して前線基地にするのだ」
この時、日本陸海軍はアメリカが攻める気配があるならマーシャル諸島を放棄する予定である。
「は………分かりました」
キングは頭を下げた。
―――聯合艦隊旗艦敷島―――
「………諸君、漸く対ソ戦も終わりを告げた」
豊田長官が椅子に座る提督達に言う。
「陸軍の準備が揃い次第、ハ号作戦を決行するッ!!」
『………………』
豊田長官の言葉に提督達に緊張感が走った。
『八号作戦』
それは山本五十六の悲願とも言えるハワイ諸島攻略作戦の事である。
「機動艦隊は全て投入する。無論、戦艦部隊もだ」
「………今回は敷島は動かないんですね?」
「あぁ。敷島は柱島泊地にて情報を発信させる役目がある」
作戦の参加兵力は第一、第二、第三機動艦隊、大和を主力とする戦艦部隊、そして三式中戦車や機動九〇式野砲等を装備する今村中将を司令官とする十万の陸軍部隊である。
「八号作戦はハワイを攻略するためだが、もう一つの意味がある」
「………富嶽の飛行隊が配備された事ですね」
「そうだ」
三笠の言葉に豊田長官は頷いた。
集中生産されていた富嶽は三月までに何とか三六機が飛行隊として設立したのだ。
なお、富嶽飛行隊隊長は野中五郎少佐である。
「この上、八号作戦は絶対に成功せねばならん。諸島の健闘を祈るッ!!」
『ハッ!!』
小沢長官や山口長官、三笠達は豊田長官に敬礼で答えた。
そして1944年四月十日、『八号作戦』は開始された。
「出港用意ッ!!」
ガラガラガラガラガラッ!!
各艦隊は出港準備に追われ、艦を固定していた錨が次々と引き上げられていく。
「山口長官、佐伯航空隊から通信で潜水艦の反応は無しです」
「そうか」
寺岡参謀長から新たに古村啓蔵少将が就任していた。
「第一機動艦隊が出港しますッ!!」
その時、見張り員が叫んだ。
『帽振れェッ!!』
拡声器から流れる言葉に山口長官達は出港する第一機動艦隊に帽を振る。
「第一機動艦隊が出港次第、第二機動艦隊も出港します」
「うむ」
古村参謀長の言葉に山口長官は頷いた。
第一機動艦隊が出港すると、次は第二機動艦隊である。
『〜♪〜♪〜♪』
敷島の艦上では軍楽隊による『軍艦行進曲』が絶えず流れている。
「………いよいよやな」
防空指揮所にいた三笠はポツリと呟いた。
「史実だと山本五十六はハワイを攻略すれば講和道筋が見えるとか言っているけど、難しいわな」
「そうなのか?」
何故か翔鶴の防空指揮所にいる金剛が言う。
「まぁな。ま、ハワイ攻略で終わればいいんやけどな」
三笠はそう呟いた。
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