第百話
遂に百話……長かったなぁ。
『あの時、ウラル山脈要塞で何が起こったのかは未だに戦後六十年経った今もよく分かっていない。しかし分かる事はただ一つ、スターリンは負けたのだ』作者姫神三笠。題名『大東亜戦争の真実』ソ連戦抜粋。
―――イルクーツク、ソ連極東軍司令部―――
「何ぃ?ウランウデが後数日で陥落しそうだとッ!?」
「ダ、ダー」
毛沢東の叫びに報告に来た兵士が身体を震えさせる。
「JS-2重戦車を投入したのだぞッ!?」
「ウランウデに配備されていたJS-2重戦車は初期生産型なので車体前面上部の操縦手バイザーが弱点なのでそこをやられました」
「何という事だッ!!同志スターリンは我々に欠陥品を送ったというのかッ!!」
実際はJS-2重戦車を開発した奴じゃないのか?
報告に来た兵士はそう思った。
「同志スターリンには更なる援軍を送るように要請するのだッ!!」
「ダーッ!!」
一方、スターリンは必死だった。
「この部隊は防衛線に投入しろッ!!この部隊は一旦下がらせろッ!!」
ドイツ軍の進撃で、南方軍集団はスターリンが立て籠るウラル山脈要塞まで後二百キロとなっていた。
更に、ドイツ軍が占領地域での治安維持を積極的に展開したせいで、ソ連軍兵士達の中では「ドイツ軍に投降しても殺されはしない」という噂が飛び交って、離反してドイツ軍に投降する兵士が続出していた。
まぁ、実際にドイツ軍は投降した兵士の虐待はしなかったしドイツ空軍がばら蒔いた投降ビラが予想以上に戦果を上げていたのだ。
これにはスターリンも予想外であり、ドイツ軍の治安維持は嘘でこれは策略であると言って敵に惑わされるなッ!!と厳命をしていた。
しかし、ソ連軍の士気は低下していたため脱走するソ連軍兵士が耐えなかった。
「くそ、こんな事なら粛清をするんではなかった………」
戦線に立つ士官も大戦前にスターリンが粛清したせいで極端に不足していた。
スターリンは後悔ばかりしていたが、いないものはいないのだ。
「………こうなればウラル山脈要塞を放棄して極東に逃げるか………」
それも一種の手だった。
しかし、ウラル山脈周辺の制空権は完全にドイツ軍の物だった。
「糞ぉ………これも全部は毛沢東のせいだッ!!」
誰もいない作戦室でスターリンはそう怒鳴り散らした。
それを扉の前で聞いた者達がいた。
「………もはや同志スターリンは駄目なようだな」
男はフルシチョフ軍事会議委員である。
「問題は何時するかだ」
フルシチョフに同調するようにラヴレンチー・ベリヤが呟く。
「私としては今直ぐにでも投獄をしたい。これ以上、ソ連人民を無駄に死なせたくはない」
フルシチョフはベリヤにそう言う。
「大粛清を決行した私が言うのもなんだが、確かにな」
「ならば………」
「あぁ、一個小隊を連れて来よう」
ベリヤとフルシチョフは互いに頷きあった。
それから三十分後、スターリンがいた部屋には一個小隊の兵士とフルシチョフにベリヤがいた。
「一体何故私を捕まえるのだベリヤッ!!フルシチョフッ!!」
縄に縛られたスターリンが二人に激怒をする。
「御覧の通りですよ同志スターリン。クーデターです」
フルシチョフはスターリンに言う。
「同志スターリン。貴方はソ連人民を殺し過ぎた。それを償う時ですよ」
「気でも狂ったのかフルシチョフッ!!」
「………今の貴方には何を言っても無駄でしょう。投獄させてもらいます」
「連れていけ」
「何故だッ!!何故だァァァーーーッ!!」
牢屋に連れて行かれるスターリンの叫び声が廊下に響いた。
「「До свидания(ダ スヴィダーニァ)同志スターリン」」
連れて行かれるスターリンにフルシチョフとベリヤはそう呟いた。
そして、フルシチョフとベリヤはドイツ軍と日本軍に降伏する前に、日本との戦線を開いた毛沢東も捕らえる事にした。
―――イルクーツク、ソ連極東軍司令部―――
「同志毛沢東、貴方を捕らえます」
屈強なソ連軍兵士の一個小隊が毛沢東を捕縛する。
「な、何をするんだッ!?粛清されたいのかッ!!」
「残念ながら貴方は極東軍司令官を解任されました。そして貴方を日本軍に渡します。暫く牢屋でお待ち下さい」
「なッ!?は、離せッ!!離せェッ!!」
こうして毛沢東も牢屋に入れられたのであった。
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