君へ
僕達の卒業式がおわり、僕は、今、君と最後に一緒いたこの三階の教室を名残惜しく眺めている。
「おーい、ヒロト。卒業の記念にクラスで写真を取るんだってよー。早く来いよ。」
「うん、わかった。すぐ行く。」
僕は、その教室を背に歩いていく。
僕と君は、ずっと同じクラスだったね。
知ってる?
僕は、まだ君のこと好きなんだよ。
※※※※※※※※※
三年の春
一年の頃から恋人同士という関係にあった僕達は、初めての大きな喧嘩をしてたっけ
原因は、とても些細な事で今になっては、忘れてしまったよ。
君は、その時、ちっとも喋ってくれなかったね。
目すら合わせてくれなかった。
僕は、その時、寂しくって、切なくって、悲しくって、孤独感に押し潰されそうだったんだよ。
本当だよ。
結局、春が終わりを見せる頃に、仲直りしたよね。
謝ったのは、僕の方。だけど、実は、トモコさんに君の事で相談されてたんだ。
「あの子、あんたと喧嘩して後悔してるよ。ほら、あんな子だから、自分から、仲直りの言葉が言えないのよ、きっと。あんたの方から仲直りしてあげてよ。あの子の悲しい顔は、あまり見たくないよ。」
てさ、
僕は、なんだかうれしい気持ちになった。
君が、後悔してるって、聞いて
僕は、嫌な気分になった。
君に悲しい顔させてる自分に。
だから僕は、一所懸命に謝ったんだ。
一言
「ごめん。」
て、
一生懸命に
そして、僕達に笑顔が戻って来た。
高三の夏は、気付けば、いつも一緒にいたね。
夏祭り
君の着物姿は、やっぱり可愛かった。そして、二人の秘密の場所で花火を見たね
海水浴
君と海へ行ったのは、この夏が初めてだったね。
あと、ゲームセンターに映画館にカラオケ、ボーリング
その夏は、これまでに無いって位に君と遊んだよね。
そして、高三の秋
僕達は、少しギクシャクしてた。
理由は、高校卒業の進路の事。
君と僕は、付き合い始めてから、ずっと大学は、同じところに行こうと、決めてたんだよね。
だけど、僕は、自分の夢を追いたくなった。
君は、反対はしなかった。
けど、不満はあったんだよね。
君の態度でわかったよ。
ギクシャクが、続いたまま秋は、流れていった。
笑い声も少なくなった。
高三の冬
教室で君と話してる時、いきなり喧嘩になったっけ。
いろいろ不満や不安が溜まってたんだよね。
君も
僕も
君は、大声出してさ
クラスのみんなビックリしただろうな…
君は、僕に不満をいっぱいぶつけた。
僕も君に不満をいっぱいぶつけた。
その日は、それから一言も喋らずに僕達は、家に帰った。
その夜
僕は、君に電話した。
「ごめん」
と、僕は言った。
君は、電話の向こうで泣いてた。
そして、しばらくして君は、言った。
「もう疲れた。別れよう」
※※※※※※※※※
「はい、チーズ。」
カメラマンの人が言い、シャッターを押した。
僕は、一番前の右端
君は、一番後ろの右端から二列目
そんなに距離は離れてないのに、僕達の『キョリ』は、遠い。
あれから、君とは一度も喋れてない。
写真の中の僕は、ちゃんと笑顔が作れてるだろうか
あれから、僕は、上手く笑えない。
少し上を見上げてみれば、僕と君が二年の頃過ごしたクラスが見えた。
僕は、あの頃は、どんな声で、どんな顔で笑っていたんだろう
※※※※※※※※※
高二の春
僕は、少しだけ嬉しかった。
君とまた同じクラスになれて
君は、とても嬉しそうだった。僕と一緒のクラスになって
そんな喜ぶ君を見て、僕は照れた。
高二の夏
夏祭りで君の着物姿を、見た時、僕は、君にまた惚れた。
一緒に手を繋いで歩いた。
僕は、君を花火のよく見える川へ連れてった。
誰も知らない僕だけの秘密の花火がきれいに見えるスポット。
それが、君と僕だけの秘密の場所へと変わった。
花火を見てる時、君が足を滑らして、川へ落ちたっけ。
僕の不安そうな顔を見て君は、ビショビショになりながら、笑った。
つられて、僕も笑い、僕は、川へ飛び込んだ。
僕と君は、大声で笑った。
ホントに大きな声で
その次の日
君は、風邪を引いたよね。
僕は、君のお見舞いに行った。
「海行く約束、行けなくて、ごめんね」
と、残念そうな顔で君は言った。
「風邪が、治ったらいつでも行けるよ」
僕は、言った。
僕は、リンゴを切って、君に食べさせてあげた。
そして、君の寝顔を見て、帰った。
君の風邪が治った。
今度は、僕が風邪を引いた。
結局、その夏は、海へ行けなかった。
高二の秋
君のお兄さんが事故で亡くなった。
君は、学校に来なくなった。
僕は、君の家に行った。
今は、誰にも会いたくないと、言われて、追い出された。
だけど、僕は、毎日、君に会いに行った。
君が誰にも会いたくないと思わなくなるまで
ある日、君は、部屋の中に僕を入れてくれた。
僕は、いろんな話をした。
授業の事。
休み時間の事。
みんなが君に会いたがっていること。
僕が、君に会いたかった事。
その日、僕は自分でも信じられないくらい喋った。
翌日、
君が学校に来た。
僕は、涙が出そうなくらい、嬉しかった。
高二の冬
僕と君は、『約束の日』『約束の場所』で、小さいキスをした。
※※※※※※※※※
「ヒロトー。卒業パーティー一緒に行こうぜ」
「あ、ちょっと待ってて。トイレ行って来るから」
僕は、一番近い一階のトイレへ駆け込んだ。
トイレから出て、僕の一年の頃のクラス
君と出会ったクラスが見えた。
※※※※※※※※※
高一の春
トモコさんと一緒にいた君に声をかけられた。
トモコさんとは、中学が一緒で喋れたけど、中学が違う君とは、初めての会話だった。
あまり話した内容は、覚えてないけど、僕は、この時、君をかわいいと思った。
一目惚れかな?
僕達は、遠足のグループが一緒になった。トモコさんも一緒に。
忘れられないあの日
遠足の日
僕と君だけ、何故かみんなからはぐれちゃったんだよね。
あの時は、ホントにビックリしたなぁ…
その時、君が、不安がってるように見えたんだ。
だから、僕はみんなを探しながら君に面白い話をしたんだ。
そしたら、お礼に君は、君の話をしてくれた。
その時、僕の中で君が『かわいい』から『好き』へ変わったんだ
あのハプニングがなかったら、僕達が付き合うことは、多分なかったと思う。
その後、二人共先生にこっぴどく叱られたけどね。
高一の夏
クラスで、僕と君が相思相愛って、噂が流れてたよね。
確かに、僕は君が好きだったし、君とも仲良かったけど、
僕は、君が僕を好きだって思えなかった。
だから高一の秋に君に先手を取られたよ。
君が僕に告白したんだよね。
もちろん答えはOK。
それからは、友達同士じゃ言えない愛の言葉を君にいっぱい捧げた。
高一の終頃
二コ上の先輩達の卒業式があった。泣いている先輩達を見て君も泣いてた。
「私達もいつか離れ離れになるのかな?」
君が言った。
「ならないよ。同じ大学行くんだもの」
「その後は?」
………………………
僕と君はそのまま無言のまま先輩達の姿を見ながら、歩いた。
そしたら君が
「あ、」
「どうした?」
「あれ」
君が指差したのは、校舎の奥の方にあるあまり目立たない桜の木。
君は、その木に向かって歩いていった。
僕は、それについて行った。
桜の木の下に来た時、あまりの静かさに僕は、ビックリした。
「ここ、誰もいないね」
……………
僕の言葉に君の返事が無い。
君は、桜の木の根にしゃがみ込んで何かを考えているようだ。
すると、君は何かを思い付いたように
「ねぇ、いいこと考えた」
「何?」
「毎年、この日は、必ずこの場所に来るの」
「何で?」
「いいじゃない!ここ静かだし、一年に一度の約束なんて、なんかロマンティックで!」
「そうかなぁ」
「この約束は、絶対ね。たとえお互い嫌いあってもだからね」
「お前の事、嫌いになんかならねーよ」
「うん。私も。」
……………
「で、ここで二人集まってなんかするの?」
「ちゅーとか」
………………
「今日も?」
僕達は、この時初めてのキスをした。
※※※※※※※※※
「そーだよ!約束だよ!」
「どうしたんだ、急に?」
「ごめん、俺、約束あるから、先行ってて」
急がなきゃ
ハア ハア
※※※※※※※※※
大好きな君へ
僕は、まだ君の事が好きです。
もし君が約束通りあの桜の木の下にいるなら
その時は
その時は
今度は、僕から君へ告白するよ
大好きな君へ
勢いで書きました。