7話「気がついたのは心の距離か優しさか」
「そういえば凰牙さんって何歳なんですか?」
「俺か?37」
「なんか納得できるようなできないような…」
「はぁ?」
「社長にしては若い気もするけど顔立ちとか雰囲気的には思っていたより老けてたといいますか…」
「おい」
「あ、ちなみに私は29です」
「聞いてねぇよ」
「じゃあ凰牙さん卵焼き以外で何か好きな食べ物ってありますか?お弁当のネタが尽きてきてしまったので」
「別に被っても俺は気にしないが」
「そうですか?まぁでもせっかく作るならより喜んでもらえるほうがいいじゃないですか」
「そういうもんなんか」
「そういうもんなんです」
「ならそうだな……強いていうなら冷しゃぶって知ってるか?」
「冷しゃぶですか……?いえ、知らないですけど……しゃぶってことは豚ですか?」
「あぁ、しゃぶしゃぶを冷やしてポン酢とかかけて食うんだよ」
「へぇ……なんか意外ですね……卵焼きといい……」
「聞いてきたのそっちだろうが」
「じゃあ今度挑戦してみますね」
「頼んだ」
日が落ちてきて、彼が家を出るまで私たちは他愛もない話を続けた。
偽らなくても、合わせなくていい彼との会話は、久しぶりに楽しかった。
そうして深夜。
夕飯を食べ終えた彼は特に何かを準備するわけでもなく、出会った時と同じ服に着替えてきた。
「…えっと、手ぶら…ですか?なんか武器とか…」
「武器ってなんだよ、せめて凶器だろ?まぁそうだな、俺は基本的に外にあるもんを使うからな」
この間だったら山ん中にあった石だ、と準備体操をするように体を動かしながら答えてくれた。
「そうなんですか…帰ってくるのって、あの時と同じくらい…ですか?」
「いや、今回はもうちょい遅くなるだろう。ま、気にせず先寝てろ。帰ってくる時は血だらけだろうしな」
「あ…は、はい」
最初と比べてかなり口数の増えた凰牙さんは、この頃私を気遣うような言動が多い気がする。
(……ううん、凰牙さんは普通に優しい人だ。優しいから、私のことを殺してくれるだなんて約束を)
「來香?」
「……」
「おい來香、どうした?」
「え?あ……すみませんちょっと考え事してました…」
「はぁ、ったく……んじゃ、行ってくるわ」
「い、行ってらっしゃい……です」
「よし……今日はこれで全部終わりかな……あとは寝るだけだけど」
凰牙さんに先に寝てていいって言われたものの、家主よりも先に寝るのは…と少しだけ思ってしまう。
「かといってすることもないし……」
そういえば凰牙さんの書斎に色々な本が置いてあった気がする。
「基本的に家にあるものは使っていいって言ってたし……ちょっと読んでみようかな……」
ここまで読んでいただきありがとうございました!
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