6話「殺人鬼と彼という人」
このおかしな同居生活が始まって一ヶ月が経った。
「ただいま」
「お帰りなさい、凰牙さん。洗い物終わらしてしまいたいので先にお弁当箱出してもらえますか?」
「あぁわかった」
以前よりも会話が増え、普通らしい生活になっていた私たち。
「あぁそうだ、來香」
「はい?」
「明日は夜中の出勤だから弁当つくんなくていい」
「……夜中……ですか」
そう問いかけた私に、彼は無言で肯定する。
夜中ということはつまり、そういうことなのだろう。
「……いつもそうなんですか?」
「何が?」
「その……夜中の出勤の時は、昼の出勤ないの……」
「いや、そんなことはねぇよ。帰り道に行く時もあるし」
「……そうですか」
「明日は風呂だけ沸かしといてくれ、飯は食ってく」
「……わかりました」
どう接していいかわからなかった私。
凰牙さんもそれを察してか、今日の夕飯は久しぶりに会話がなかった。
「來香」
今はまだお昼間。
昨日から未だ彼との接し方がわからず逃げるように家事に勤しんでいた私を、凰牙さんがふと呼んだ。
「な、なんですか……?」
「俺が怖いか?」
「は……?」
何を言われるかと思っていたけれど、予想外のことで腑抜けた声が出てしまった。
「いえ怖くはないですけど……なんでですか?」
「昨日から俺を避けてるだろ、お前」
そう言われて気づく。
確かに、「明日殺しに行ってくる」って言ってから相手が自分を避け出したら怖がっていると感じるのが普通のだろう。
けれども私はそんなこと、考えもしなかった。
彼の優しさをこの一ヶ月で知ったからか、それとも感情が薄くなっているのか、はたまた残酷になったのか。
理由なんてわからなかったけれど、彼を恐れていないことだけは事実だった。
「……それは、その、どう接していいかわからなかったので……」
「……?」
「……昨日、あの言葉を口にした時、凰牙さん少し憂鬱そうに見えたんですよ。でもやめてっていうのも励ますのもなんか違う気がして……そう考えると普段通りに接してもいいものかって思ってしまって……」
こんなこと言っていいのかどうかもわからなかったし、もごもごと言い訳をする子供のように理由を話すと、凰牙さんは一瞬ぽかんとした表情を浮かべ、突然笑い出した。
「はっ、ばかだなぁお前っ!くはっ、あーやばい腹いてぇ(笑)」
「ちょ、なんで笑うんですか!」
「いや笑うだろ、お前さぁ相手殺人鬼なんだぞ?何俺の気使ってんだよ(笑)」
「さ、殺人鬼だとしても凰牙さんも人間です!」
「おいwやめろwマジで俺を殺す気かっ!w w」
まるで子供のように笑う彼を見ていると、なんだかばからしくなった私は、色々考えるのはやめにしようと思うのだった。
「來香」
「……なんですか」
「ありがとな」
「……!」
一通り笑い終えた凰牙さんはさっきまでの子供っぽい笑顔ではなく、大人びた表情で静かにお礼を言ってきた。
「……お礼は、いつか私を殺してくれる時にまとめてしてください」
「ふはっ、なんだそれ……あぁ、わかった」
ここまで読んでいただきありがとうございます!
そして一つお知らせです。
今回から今まで10時に更新していたこの小説ですが、18時にと更新時間を変更しました。
二日に一度の更新は変更ありません、今まで通りです。
ということでよければ次回も読んでいただけると嬉しいです!




