3話「新たなる生活」
(……まぶし)
朝、太陽の眩しさで目を覚ます。
そして私は部屋を見渡し、昨日のことが夢ではなかったことを確認する。
(そっか、私……死ねなかったんだ)
仕事がないからいくらでも寝てていいと言われたけれど、家のことは私がする約束なのでとりあえず着替えてキッチンへ向かう。
と、リビングを開けて私は驚愕した。
(昨日は暗くてあまりわからなかったけれど……散らかってるわね……)
足の踏み場はあるものの、棚の上や机の上には物が散乱していた。
(そう言えばあの人は……)
「ん……はよ」
「ひゃあ!?」
いきなり後ろから声が聞こえたかと思えば、目も開いていないような寝ぼけた様子の凰牙さんが立っていた。
「ったく、これくらいで驚くんじゃねぇよ……っでぇ!」
私の反応に呆れた様子だった凰牙さんだが、落ちていた何かを踏んでしまったらしく叫び声を上げる。
「……大丈夫ですか?」
「あーまぁ、いつもんことだ。それより來香、10時30分から仕事あるから弁当頼めるか?」
「いいですけど……」
仕事って殺しのことだろうか。
でも人を殺しに行くのに弁当なんているのかな?っと首を傾げていると、それに気づいた凰牙さんが答えてくれた。
「あ、仕事ってのは表のな。殺しは別に仕事じゃねぇよ」
「そうなんですか……?」
「ちなみに俺は卵焼きは甘めが好きだから。んじゃよろしく」
凰牙さんは謎に卵焼きの好みの味を宣言して着替えに行ってしまった。
不思議なことに変わりはないが、昨夜のような恐ろしい感じは無くなっていた。
(というか仕事って何してんだろ……このマンションももしかしたらそっちの稼ぎだったりして……)
初対面が殺人現場なのもあって、笑顔を浮かべて人当たりよく仕事している様子を思いべることができなかった私だが、彼の注文通り甘めの卵焼きを入れたお弁当を準備することにした。
「…………スーツ」
「なんだその目は」
しっかりとした服に着替えると、意外と彼の顔が整っていることに今更ながら気がついた。
今の彼は見違えるほどしっかりしており、頼りになりそうな上司の雰囲気を醸し出している。
「いえ別に……意外と似合うなと思いまして。あ、これお弁当です」
「おう、サンキュ」
夜は会食行ってくるから遅くなる、とだけ言い残して彼は家を留守にした。
(……それじゃあ私はさっさと片付けしてしまおう)
まず何から始めるかと考えた時、朝お弁当と朝食を作った際に見た冷蔵庫には物があまり入っていなかったことを思い出す。
そのため私は、まずは買い物から始めようと外出する準備をすることにした。
(一体今までどうやって生活していたのだろう……とりあえずお弁当の分はあって良かった……)
と、そこでかなり重要なことに気がつく。
そう、着替えがないのだ。
一応昨日来た時に着替えの部屋着だけは買ったとはいえ、身一つで来たのだから当たり前なのだが……
(あまり気は進まないけれど、この服のまま行きましょうか)
外に来ていけるような服ではないけれど、他に泥だらけの服しかないので仕方がない。
預かっていた財布を手にした時、外からチャイムの音が聞こえた。
(これ…私が出ても大丈夫かな…)
「すみませーん!誰かいらっしゃいませんかー!」
「あ、はい!」
考えていても仕方がないととりあえず荷物を受け取る。
配達員さんにお礼を言い、開けようか迷っていると宛名が私になっていた。
どういうことかと思っていると、タイミングがいいことに凰牙さんからメールが来た。
「えっと……」
『今日お前の服とか適当に買って届くようにしておいたから受け取ったら好きに使え』
なんと用意周到なことか。
というかいつの間に……
ありがとうございます、と返信をしてありがたく使わせてもらうことにする。
中にはいろんなサイズやタイプの服と下着、歯ブラシなどのアメニティや生理用品、カバン、化粧品など生活に必要なすべてのものが詰められていた。
(通りで重かったわけね……)
先ほど荷物を受け取った時に持ち上げられず、配達員さんの台車からそのまま玄関に乗せ押してきたのだ。
だがそれもこれだけの量が入っていれば納得がいく。
(でもなんで一度に全て入っているの……?)
色々気になることはあるとはいえ、考えても仕方がないことに時間をかけている場合ではない。
とりあえず中に入っていたワンピースと下着を1セットに着替えて、私は買い物に出ることにした。
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