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14話「隠された傷跡」

「凰牙さん」

「……」

「凰牙さんってば」

「……なんだ」

「なんですか?これ」

「……知らん」

「知らないわけないですよね!?」


ある日の午後。

私は凰牙さんの腕に包帯を巻いていた。

そう、この間の殺しの際にやったらしい傷だ。

たまたま風呂から出てきた凰牙さんと鉢合わせた私は、申し訳ないとか恥ずかしいとかそういうものより先に抉れた右腕が目に入った。


「なんで手当てもせずに放置してたんですか!」


しかも驚くべきことに見るからに抉れているというのに一週間近くもそのまま放置していたということだ。

おかげで未だにタオルで拭けば血がつくというむしろ悪化しているのではないかという状態になっている。


「人間これくらいじゃ死なねぇよ、放っておけば治る……ぐっ」

「治ってないじゃないですか!いいから大人しくしててください!」

「滲みるんだからしょうがねぇだろ!」

「だからそれは放っておいた凰牙さんが悪いんですよ!!」


私を気遣ってくれる凰牙さんと、雇い主(?)である凰牙さんに遠慮している私なので言い合うことはあまりない。

それでも今回ばかりは私は見過ごせず、お互い一歩も譲らずにひたすら同じことを言い合っているのだ。


「はぁ……クソ痛ぇ……」

「まったく……これからはちゃんと言ってください……言わなくてもせめて手当くらいはしてくださいよ……」

「……まぁ善処する」


ずっと言い合っていたせいで手当が終わる頃には二人ともすでに疲弊しきっていた。


「というかよくこんな状態で平気でしたね……」


正直我慢でどうにかなるレベルの怪我ではなく、周りに違和感を抱かれないようにすることなんて私なら絶対不可能だ。


「痛みには強い……というより人よりも痛覚が鈍いんだよ、俺は」

「……その割にはさっき消毒では痛がりまくってましたけど」

「それはほらあれだ、意識すると痛いんだよ」


もうなんというか、ここまでくると心配や怒りを通り越して呆れてくる。


「まぁとりあえず、傷がわからなくなるくらいまで夜の仕事はなしです。後ちゃんと包帯も変えてくださいね」

「……あぁ」


嫌な空白が入ったけれども、どうやら一応はわかってくれたようだ。


(でもしばらくは見張っておいた方がよさそうね……)


素知らぬ顔をしている凰牙さんをみながら、私はそう心に決めたのだった。























「來香、手を出してみろ」

「……?なんです?急に」

「いいからほら」

「あ、はい」


ある日の夕方、突然凰牙さんに手を出してみろと言われ、言われた通りにする。

初めの頃は色々と戸惑った凰牙さんの行動だけれど、最近はもう凰牙さんはそういう人だで全て納得してしまっている気がする。


(まぁ流石に急に足を出せと言われた時は何されるのかと思ったけれど……)


ちなみにその時は新しい靴を買ってこようとしてくれたらしく、サイズを測ろうとしていたらしい。

普通に既存の靴のサイズを見ればいいだけの話なのに、なぜわざわざ直接測るのか聞いたらなんとなくと返された。

意外と気まぐれ屋なのである。


(というか凰牙さんは私に甘すぎるのよね……そんなにいっぱい買ってもらわなくても十分なんだけれど)


今度は一体なんなのかと思っていると、手のひらに小さな箱が乗せられた。


「……?なんですか?これ」

「クリスマスプレゼントだ」


……くりすますぷれぜんと……???


「え!?クリスマス?!」

「うおびっくした、んだよ急に叫んで」

「え?あ、え?その、今日って何日ですか?」

「いやだからクリスマスだって言ってんだろ、12月25日だ」

「……ほんとだ」


慌ててスマホを見てみると、確かに日付は12月25日となっている。


(そういえば確かになんか色々飾り付けされてるな〜とは思っていたけれど……)


今まで縁のない行事だったから忘れていた。


「す、すみません、私何も用意してなくて……」

「まぁ今の反応見てたらそれはわかる。ってかそんな気にしなくてもどうせ俺の金なんだから気にしねぇよ」

「……確かに」


そんなことよりせっかく買ってきたんだから開けてみろよ、と凰牙さんに急かされてもらった小さな箱を開ける。


「これ……ネックレス?」

「あぁ、來香に似合いそうだと思ってな」

「い、いいんですか?こんな高そうな……」

「よくなかったら買ってきてねぇよ」

「そ、そうですね……」


入っていたのは中央にオパールが埋め込んである小さな桜型のネックレス。

シンプルだけれど高そうだというのは入っていた入れ物から見てもなんとなくわかる。

でも今まで凰牙さんがくれたものは、どれも返品不可だと半強制的に私の物となっている。

つまり凰牙さんにお返しして受け取らないという選択肢は私にはないのである。


「……あの、凰牙さん」

「どうした?気に入らなかったか?」

「あぁいえその……次からはできるだけ安いのをお願いしてもいいですか?」

「……まぁ無理に高いのを買ってお前が困るってならそうするか」

「……わかっていただけて嬉しいです……」


それとなーく伝えてみると一応意図は伝わったらしいので次回からはもう少し庶民でも手が出せるものになっているといいなと淡い期待を抱いておく。

贈り物自体が嬉しくない訳ではないので、結局今回も受け取って大事に使わせてもらうことにする。

それと最近気づいたことなのだが、凰牙さんはなぜか私に何かを買ってあげるのが趣味らしい。

なんというか、孫に何かを買ってあげたい祖父母のような雰囲気を感じるのだ。


(なんか凰牙さんも凰牙さんで嬉しそうだから、これ以上私に贈り物しないでくださいとは言えないのよね……)


「それじゃその、大事にしますね。ありがとうございます」

「あぁ、そうしてくれ」


そうして私たちは、凰牙さんがちゃっかり買ってきていたケーキを食べながらいつもとはちょっと違う日常、クリスマスの夜を過ごした。

ここまで読んでいただきありがとうございます。

よければ次回も読んでいただけると嬉しいです。

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