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13話「頑固者」

「えっと……流石にこんなに買ってもらうのは……」

「いいじゃねぇか、迷ってんだろ?ガキのお使いじゃねぇんだからそんな一冊に絞らなくてもいいだろ」

「いやまぁそうなんですけど……」


自分で言い出したが、半ば引きづられるように訪れた本屋。

凰牙さんが欲しい本があれば買ってくれるというのでお言葉に甘えて本を選んでいたのだが、久しぶりに本屋を訪れると読みたい本がたくさんあって迷ってしまった。

そんな私を見た凰牙さんは迷っていた本全てを買おうと言い出してしまった。


「てかこんなにつっても5冊だろ?」

「う……いやまぁそうなんですけど買ってもらうとなると……」


私の今までのお給料でもまぁ買えないことはないくらいの値段だ。

だからと言ってじゃあお願いしますと買ってもらえるほど私は図々しくない。


「ならこうするか。この4冊は俺が欲しかった。よしこれで解決だな」

「……いやいやいやいや」


どう考えても凰牙さんが読むような内容ではないし、さっきまで「面白いのかこれ?」と言いたげな顔をしていたのだ、全然納得がいかない。

しかし凰牙さんは一瞬固まった私を今のうちとばかりにすり抜けて、5冊とも持ってレジでお会計を済ましてしまう。


「よし。まぁこんなもんか」

「えっと……ありがとうございます……」

「気にすんな」


俺が欲しかっただけと言っただろ?と、にっと笑う凰牙さん。

多分この人は自分で決めたことは絶対に曲げない人なんだろう。

意外に頑固だという凰牙さんの新しい面を知れた気がするが、正直私が申し訳ないのでこういうところで頑固を発動するのはやめてほしい。


(まぁ優しいことに、変わりはないんだけどね……)


「他にどこか行きたいところはあるか?」

「い、いえ!もう十分です!本まで買ってもらっちゃったし……」

「お前それずっと引きずる気か……?まぁいい。それなら今日はもう帰るか」

「はい」


凰牙さんは当たり前のように本を持っていない方の手で私の手を握る。


(……なんか凰牙さんって女慣れしているというか……なんというか……)


だがまぁ生きた人に触れるのは久々と言っていたから実際には彼女がいるとかそういうわけではなさそうだ。

……凰牙さんにとっての久しぶりがどのくらいなのかはわからないけど。









「あ、」

「ん?どうした?」


帰り道。

いつものスーパーを通りかかった時に卵を切らしていたことを思い出す。


「すみません、卵切らしてたので少し買ってきてもいいですか?」

「あぁ。なら行くか」


ほんの少し引き返す形になってしまったが、凰牙さんは気にすることなくスーパーへと方向を変えてくれる。


「ほんとに卵だけなのでここで待っててもらって大丈夫です。あ、なんか今日食べたいものありますか?あるならそれも買ってきますけど……」


ちなみに今日のメインはハンバーグです、というと凰牙さんは


「なら他は別にいい」


と答えた。

凰牙さんは意外と子供舌っぽいところがあるので甘いものやハンバーグオムライスなどが好きということが最近わかってきた。

だからこそ今日はハンバーグにしたのだが、気に入ってもらえたようで良かった。

言葉は少なかったが表情が嬉しそうだった。


「じゃあちょっと待っててください、すぐ済ませるので」

「あぁ、わかった」







(セールやってたから他のも買っちゃって少し遅くなっちゃった……えっと凰牙さんは……)


買い物を済まして外に出た私は凰牙さんを探して辺りを見渡す。


「……あ」


「ねぇねぇ、彼女さんとかいるんですかぁ?」

「時間あるなら私たちとお茶しましょうよぉ♡」


そんな声を聞いてまさかと見てみれば、前に絡まれた(?)近所のお姉様方のような綺麗な二人のお姉さんたちと全く一ミリも興味がなさそうな(むしろ不機嫌)凰牙さんがいた。

あそこで凰牙さんに声をかける勇気もなく、近寄ることすらできなかった私はどうしようかと思って凰牙さんの方を見ていると、凰牙さんとふと目があった。


「來香」


人の気も知らないで何の躊躇もなく私の名前を呼びながら近づいてくる凰牙さん。


(うぅ、お姉様方の視線が痛い……)


「終わったか」

「お、終わりました……けど……」


ちらりと凰牙さんの後ろにいる女性たちを見ると明らかに「何あいつ」とでも言いたげな目でこちらを見ていた。


「それじゃ帰るか。面倒な奴に絡まれてウザったらしかったんだ」


凰牙さんはわざと彼女たちに聞こえるように悪い顔で笑いながらそう言った。

何あれ、感じ悪!という声が、再び手を取って歩き出した私たちの後ろから聞こえてきたが、そこは知らないふりをしておいた。



ちなみにその日から、手を繋いで歩けば後ろにいかないと気づいた凰牙さんが、出かけるたびに私の手をとるようになった。

ここまで読んでいただきありがとうございます!

よければ次回も読んでいただけると嬉しいです!

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