12話「久しぶりの温もり」
「さて、そんじゃ次はどこに行く?」
「え?帰るんじゃないんですか?」
「何言ってんだ、出かけるっていっただろ?」
「だからカフェに来たんじゃないんですか……?」
「こんなん出かけるに入るわけねぇだろ」
色々あったけれど、意外と満喫できたカフェ。
店を出たところでここからが本番だとでもいうように、初め家を出た時と同じように行きたい場所を聞いてくる凰牙さん。
(というか凰牙さんもこの近さはお出かけじゃないという自覚はあったのね……)
「えっと、凰牙さんはどこか行きたいところないんですか?」
「俺の行きたかったとこはここだ」
そう言って今出てきたカフェを指す凰牙さん。
「え、近所ですけど」
「男一人じゃ入りにくいんだよ」
「あ……そうですね……」
確かに凰牙さん一人でこのカフェに入っているのは違和感しかないかもしれない。
というかこの店てきとうに入っただけと思っていたが、普通に凰牙さんが行きたかっただけだったのか……
「で?なんか思いついたか?」
何がなんでも私を外へ連れ出したいらしい凰牙さんから圧のようなものと共に再び問いかけられる。
「そ……それじゃあ……本屋……とか……」
苦し紛れになんとか捻り出した私は凰牙さんに少し押されながらもぽつりと答える。
「本屋な」
私の答えを聞くと、にやっと口角を釣り上げ笑った。
「んじゃ行くぞ」
「え、あ、え!?」
行くことにはなるだろうと思っていたけれど、なぜか凰牙さんは私の手を掴んで移動を始めた。
「お、凰牙さん、手、あの!」
「こうでもしとかないとお前気づいたら後ろにいるだろ?」
「……え?」
思いもよらなかった返答に私は思わず足を止めてしまった。
「來香?どうした?」
「え、いやあの……なんで……」
「なんでって……だってお前買い物の時もさっきカフェに行く時もずっと俺の後ろ歩いてただろ?」
最初は俺が歩くのが早いせいかと思っていたがどんだけスピード落としても距離変わんなかったからな、と淡々と答える凰牙さん。
「……」
「……まさかお前、自覚なかったのか?」
「……一応横に並ばないように気をつけてるところはありましたけど」
気まずいので、という言葉は飲み込んでそう答える。
でもまさかあわしてくれているのに気がついていないくらい後ろを歩いていたとは……
(そういえばよく椎奈とかに歩くの早いですか?って聞かれてたけど……)
個人的には後ろというより斜めを歩いているつもりではいたのだ。
「……まぁいい。どっちにしろこうしておけばはぐれることもないだろ」
呆れたようにそう言った凰牙さんは掴んでいた私の手首を掴み直し、手を繋ぐ形へと変える。
正直少し恥ずかしい気がしたけれど、凰牙さんの言ってることは最もなので諦めて大人しくしておく。
(男の人……というか誰かと手を繋ぐなんていつぶりだろう……)
最低限の人としか関わってこなかった人生。
女友達も少なかったし、接触もできる限り避けてきたので手を繋ぐというより人肌に触れることが久々だった。
(……凰牙さんと出会った時に顔掴まれたりしたけどそれはまぁちょっと別よね)
久々に触れた人肌があれというのは今考えるとちょっと……嫌かもしれない。
(……あったかい)
ちらりと凰牙さんの方を見上げると、彼は私の視線に気づき首を傾げる。
「どうした?」
「……いえ、人に触れるの……というか触れられるの、久しぶりだなって思っただけです」
「そうか……奇遇だな、俺も仕事以外で触れるのは久々だ」
多分彼のいう仕事は夜の方だろう。
こちらを見る目が、なんだか少しだけ柔らかいような気がしたから。
「……あれ?鈴音先輩……と矢木さんだ……」
私、轟椎奈は先ほど久しぶりに再開した鈴音先輩たちを再び見かける。
あれから時間が経っているけれど、私が一度家に帰っていた間に再び同じ道に来てしまったらしい。
(知り合いに見つかりたくないっていう割には結構普通に生活しているなー)
先輩の性格と先ほどの感じからするとおそらく二人の目的地はこの先にある本屋だろう。
私が用があるのはその向かいにある服屋なので、しばらく二人の後をつけるという形になる。
(うーん、これ矢木さんに気づかれたらなんか訴えられそうだな……まぁ実際後ろつけてるのは偶然だけど事実だから否定できないんだけど)
仲良さげに手を繋いでいる二人はやっぱり恋仲なんじゃないかな、っと思わせてくる。
矢木さんも無意識っぽかったけど……
(……先輩、怯えてたもんな)
家族からあまりいい扱いを受けていなかったということは先輩自身の反応でなんとなく勘づいていたし、会社はブラックなので言わずもがな嫌いな上司とかはたくさんいるだろう。
けれども私や他の後輩たちは皆、ブラック上司たちから庇ってくれて優しくしてくれた鈴音先輩を慕っており、できる限り彼女の支えになれるよう頑張ってきたつもりだ。
(……頑張ってた、つもりだったんだけど)
私は鈴音先輩にとって信用できる相手……安心できる相手にはなれなかったみたいだ。
「……いや!まだ遅くない!再会できたんだし!これからでも仲良くなれるかも!」
矢木さんの方は警戒しているのかしていないのかわからないけれど、鈴音先輩は確定で周りを警戒している。
ということはつまり、そんなに遠出することはないだろう。
そして私の家はこの辺だ。
(今度から見かけるたびにちょっとずつアタックしていこう!)
次は私が鈴音先輩を助けてあげる番だ。
(やりすぎると矢木さんなんか怖いからそこだけ気をつけないと……)
私としても先輩を脅かすのは本意ではないのでそこだけは絶対に気をつけるつもりだ。
(そうと決まれば作戦を考えないと!)
私は少しだけ足を弾ませながら二人の後をついて行った。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
活動報告でも投稿したとおり、体調を崩してしまい一週間ほど空いてしまいました、すみません!
これからもこのようなことがあるかと思いますが、待っていただければ幸いです。
以上です、よければ次回も読んでいただけると嬉しいです。




