赤ちゃん人形マミーちゃん
初投稿です。よろしくお願いします(✿︎´ ꒳ ` )
私、寺内いずみ(40代子持ちのパート主婦)は人形が苦手だ。そもそものきっかけは子供の頃に家にあった、寝かせると目を閉じる赤ちゃん人形。やたらリアルな顔をしていたその子はマミーちゃんと言う名前で、幼稚園児の私が持つには大き過ぎるくらいのサイズ感だった。
当時あまり生活にゆとりがなかった我が家にはちょっと不釣り合いなマミーちゃんは、おそらく誰かのお下がりだったんだと思われる。
マミーちゃんは、クリンクリンの茶髪の短い髪で、おそらく外国人。頭部はプラスチックで胴体は布製品。当時の私には出来が良すぎて不気味でしかなかった。
とにかく視界に入れたくなかった私は、2歳下の妹が遊んで放置したマミーちゃんを投げつけたり投げつけたり投げつけたり…とにかく丁寧には扱わなかった。
本人は視界から消したい一心での事も側から見たら、ただただ乱暴してるだけ。された側が怒るのは、まぁ当然な訳で…
ある夜、父と寝ている時の事。夜中に急に目覚めた私は、音もなく開いたリビングと寝室を隔てる襖に気づいた。リビングにはマミーちゃんがいる。
日頃のマミーちゃんへの扱いの悪さをきちんと自覚していた為、恐怖に駆られた私は必死になって父を起こそうとした。
「パパ!マミーちゃんが来る!怖いから起きて!!」
いくら揺すっても、晩酌でいい感じに酔って寝ている父が起きてくれる事はなく、「うーん、いいから寝なさい」と寝ぼけながら言われて終わりであった。
見ていないけれど、マミーちゃんがこちらに近づいて来ている気配を強く感じていた私は、パニックになりながらもなんとか逃れようとし、布団の中に潜り込んで父の足にしがみついた。
しかし、必死に押さえている布団はバッとめくれ上がり、ガシリ!マミーちゃんの手が首にかかったところで私の記憶は途切れた…
っと言っても現在この話を語っているとおり、私は今もピンピンしており翌日何事も無く目覚めている。両親は日頃の行いのせいでそんな夢を見たんだろうと言い、自分でも「あれは夢だったのかもしれない」と思うようになった。
私の話を信じてはくれなかった両親だが、さすがに怯える我が子に思うところがあったのか、後日マミーちゃんは近くに暮らす伯母の家に引き取られて行った。それ以来、人形は苦手ではあるが怒りを買わないよう丁寧に接するようになったのは余談である。
私も大人になり、昔あんな事があったな~くらいに思うようになったある日。母が急に思い出したようにマミーちゃんのその後を語りだした。
「昔うちにあった人形のマミーちゃん覚えてるでしょ?あなたが動いたって大騒ぎした。」
私は苦笑いしながら「いたね、マミーちゃん。首絞められたし。」と答えた。
「それは意地悪したからでしょ。」
と母にピシャリと言われ、またまた苦笑い。
「伯母さんの家に貰われて行ったでしょう。その後の事なんだけどね。」
何故か母まで苦笑いしながら続けた。
「不思議な事に、マミーちゃん、何もお手入れしないで飾ってあったのに埃が全然つかなかったんだって。本当に動いてたのかも知れないわね~」
信じなくて悪かったわ~となんの悪びれもなく言ってのける母に僅かにイラっとしたのは言うまでもない。
これが、人形が苦手と言った時に聞かれる”何で?”に答える理由である。