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第六話 新生活始めてみた

 私は久しぶりに明るくなった部屋のベッドの上で、私を押し倒したかのように覆い被さっている美少女と目を合わせたまま息を呑む。


 部屋の中は静寂に包まれ、私と美少女の鼓動だけが響いていた。


 

 後ろに吹き飛んだ衝撃から来た痛みで、目の前にいるユナメラは現実のものだと分からされる。

 そして分からされた私は、震える声で、


「ユナメラ、、さん……マジですか……」


と、静寂を破って本音を漏らしたのであった。






 ユナメラを見ると、彼女の目には涙が浮かび、頬は赤く染まっていた。

 ユナメラはそんな状態で、


「燈華様!私を信じてくださって、ありがとうございます……!わ、私、ずっとずっと燈華様が……!!!!」


と、かなり興奮気味に何かを伝えようとする。



 そんなユナメラの目の前に手をかざすと、


「い、一旦落ち着いて!だってほら……ね?」


と言って、今の私達の体制が不味い事になっているのをやんわりと伝えた。



 するとユナメラはハッとしたと思えば更に赤くなり、


「も、ももも、申し訳ありません!!!」


と、大慌てで私から離れるのであった。

 ……どうやら、意外と初心(うぶ)らしい。



 って、あれ?

 私、意外ともうユナメラを受け入れてない?

 私の適応能力ヤバ。





 人一人分ぐらいの隙間を開けて、私達はベッドに並んで腰掛けた。

 私とは違い、ベッドにすら姿勢良く座るユナメラをじっと見つめて、

(大商人の ご令嬢って すげー!)

と、改めて思う冷静な私。


 それに対し私の部屋を舐め回すように隅から隅まで見回すユナメラ。

 その行動に恥ずかしさを覚えていると、ユナメラはパッと突然コチラを向いた。

 疑問符を浮かべていると、


「改めまして、私はユナメラ・サシュヤントです。今日から、よろしくお願いしますね♡」


と、コチラに笑顔で挨拶をした。

 挨拶どころかまともに他人と会話をしていなかった私は、古のバイトの経験を思い出し、


「はじめまして。私は、神崎 燈華と申します。ユナメラ、さん。よろしくお願いします。」


と、だいぶ硬めの挨拶を返したのであった。

 そして、そんな私の挨拶に、ユナメラは少し不満そうなのであった。





 さて、可愛いユナメラを見て楽しむのもここまで。

 そろそろ、今後について真面目に考えなければならない。

 まずは今後どうするのかを決めなければ、私も下手に動けないからね。



 一先ず私は、また部屋の中を観察しているユナメラの方を向き、今後がかなり左右される質問をした。

 本当に大事な質問なので、かなり興奮気味に聞く。


「あの、ユナメラ、さん。聞きたい事がありまして。えっと、今ゲームの中から出てきたじゃないですか。それであの、元に戻る事は出来るんですか?」


 その質問に、またも少し不満そうなユナメラは、長い沈黙の後、


「………………いいえ。帰れませんし、帰る気もありません。……だって私は!燈華様と共に在り続けると誓った身ですのでッッ!!」


と、前半は少し暗かったのに対し、後半は少しカッコつけて言い放った。

 その直後少し恥ずかしそうにしたユナメラへ愛想笑いを返したが、私の頭は別の事に思考をフル回転させていた。



 帰れないだなんて……!

 生活は!?食事は!?家は!?お金は!?戸籍とかどうすればいいの!?

 もし私の家で暮らすってなったら、どうやって家族や実家に説明する!?

 あっ、天井を見上げるユナメラ可愛い。

 貯金はあるから良いけれど、血縁関係でない人との二人ぐらしってどうすれば!?

 てかそもそもユナメラは一緒に暮らすの!?

 私、頼れる人なんて居ないし、相談とかできないよ!!





 一通り考えた私は、余りにも埒が明かないので一度ユナメラと話をしてみる事にした。


「あの、ユナメラさん。」


「はい、如何かなさいましたか?」


 やはりなお不満げなユナメラは、私に話しかけられ、部屋観察をやめた。

 私は、そんな彼女の意思を探ろうとした。



 しかしここで、私は彼女の覚悟の強さを思い知らさせる事になる。



「えっと、これから、ユナメラさんはどうしたいですか?小さくて良ければお家も用意出来ますし」

「必要ありません。」


「えっ、と。なら、大きい家は少し待っていただかないといけ」

「必要ありません。」



 彼女は強い意志を持つ瞳で、私が家を用意する事を何度も強く拒む。

 お家が要らない……?なんで……?

と、困惑する鈍感な私。

 そんな私の手をユナメラは突然両手で掴むと、


「そんなに、私はお邪魔ですか……?私は、お側にいてはいけませんか……?」


と私に問いかけた。




 その時、ハッとした。

 私は先程、ユナメラの事について頼れる相手が居ないと嘆いたが、それはユナメラも同じであるのだ。

 ……単身で見知らぬ世界に飛び込んできたユナメラ。

 この世界の地を初めて踏みしめた時、彼女は今後への不安を嘆いたのではなく、私と会えた事を喜んだのだ。



 そんな相手に、私は何を言っていたのだろうか。




 少しだけ目を瞑って深呼吸すと、私はユナメラの手をギュッと強く握り返した。


「燈華様……?」


と不安げな表情のユナメラ。

 私はそんな彼女の手を離し、座っている彼女の目の前に立つ。

 そして、私は先程までの弱々しく他人行儀な自分を捨て去り、


「ごめん。私の覚悟が足りてなかった。……でももう大丈夫。ねぇ、()()()()。私、ユナメラの事、絶対に大切にする。だから、一緒に暮らそう?」


と、手を伸ばした。


 そんな私の言動と行動に目を見開いたユナメラは、私の伸ばした手を取ると、


「はい……!!私、ユナメラは、いつまでも必ず貴方様のお側に……!」 


と、満面の笑みで応えるのであった。




 こうして、ユナメラを家族愛で見つめる燈華と、燈華を純愛で見つめるユナメラの、奇妙な同棲生活が始まったのであった…………。









 そんな新生活が始まったところで『さて皆さん!』

 私の部屋は、長きに渡る引きこもり生活の結果、ゴミ屋敷とまではいかなくても、かなり汚いのが現状です。


 そんな部屋に対し、ベッドから私に手を引かれて立ち上がったユナメラさんが最初に言い放った一言は何でしょう!




 正解は……?




「理解していたつもりでしたし、ある程度覚悟していたつもりでしたが、これは……。」



でした!!

 ヤバイね!心にだいぶ効いたよね!!



 私は痛む胸を抑えつつ、


「……とりあえず、掃除しなくちゃね……。」


と呟き、忌々しい部屋のゴミたちを睨んだ。




 隣で


「私も手伝いますね♡」


と意気込むユナメラを横目に、私はこれから始まる新生活への少しの不安と大きな期待を胸にして、思わずニヤニヤしながら。

〇〇先生……!ワイルズがしたいです……!!

という事で、恐らく投稿頻度が落ちますが、そうならないように努力します。

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