表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

企画参加作品(ホラー)

花見のお弁当は妖の腹を膨らませる

作者: keikato

 会社の昼休み。

 昼食はいつも出前の弁当なのだが、歩いて五分ほどにある公園で桜が咲き始めたと聞いたので、今日はそこで花見をしながら食べることにした。


 まさに花見日和だった。

 公園の桜はまだ三分咲きほどだったが、私のように花見目的で来ている者もちらほらといる。

 私はさっそくベンチに腰を降ろすと、来る途中コンビニで買った弁当を膝の上に広げた。

 花を愛でながら弁当を口に運ぶ。

 そして、その途中。

 桜の花に気を取られ、食べることにおろそかになった私は、箸でつまもうとしたウィンナーを取り落してしまった。

――あっ!

 ウィンナーは膝で跳ね、それから足元に転がり落ちた。あわてて目で追ったが、見える範囲からウィンナーは消えていた。

 ベンチの下に転がったのだろう。

 あとで拾って捨てるしかない。

――もったいないことをしたな。

 気を取り直してペットボトルのお茶を飲んでいたら、何かにスカートのすそを掴まれ、それから強く揺すられた。

――えっ?

 びっくりして足元を見た。

 するとそこには、細い骨ばった手がベンチの下から伸びていた。

「きゃあー」

 私は悲鳴を上げて立ち上がった。

 このとき弁当が膝から飛んで、残っていたご飯や唐揚げなどが地面に落ちて散らばった。

 先ほどの骨ばった手は唐揚げを掴むと、あっという間にベンチの下に消えた。

――いったい何なの?

 私はベンチから数歩あとずさり、それから恐る恐るベンチの下をのぞき見た。……が、先ほどの手は消えてもうそこにはなかった。

 桜の花が咲き始めると、その桜の花に混じっていろいろな妖が現れるという。

 あの手も妖のものだったのだろう。


 この日の昼食。

 弁当はだいなしになったが、それであの骨ばった妖の腹が膨れたと思うと、私はそれほど悪い気はしなかった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
ウインナーからの唐揚げ、こやつ、常習犯だな?笑 これをきっかけに主人公がちょっと多めにお弁当を持って桜を見に来るのかなーなんて思ってさらにほっこり( *´艸`)
ヒロインの背筋が凍ったらホラーですが、心が広いと楽しい結末ですね。午後はお腹が空いたでしょうけれど、そのぶん良いこともありそうな(^ ^) おかずコロコロは自分も涙を呑んだ覚えがあり、食べるときは集…
もしかしたら他の花見客のお弁当も、妖の被害に遭っているのかも知れませんね。 古典落語の「貧乏花見」では貧乏長屋の住人達が他の客が弁当のおかずを落とすのを期待しながら花見に赴いていましたが、花見客の弁当…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ