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冒険9―剣職人ティアラ・コーナ


PV5000突破!

ご愛顧、ありがとうございます!







「……ソウマ、その女は誰だ?」

「手がかりだ」


宿に戻ってみたが、ラウナはまだ戻っていなかったみたいなので、部屋でマーサから剣職人について話を聞いていた。

そして一時間ほど過ぎた頃にラウナは帰って来て…最初に発した言葉はそれだった。

知らない人間がいたらそう聞くのが普通の反応なんだが…


「変わり者の剣職人がいるらしい」

「……ちょっと来い」


短く説明したら、ラウナが曇った表情でソウマを部屋の外に連れ出した。


「お前…旅の目的は分かっているよな?」

「もちろん」


旅の目的はレイナ・ソン・ソーマルイの病の原因を突き止めること。

それに当たり、腕の良い医者や難病に効く薬を探すことだ。

加えて、個人的だが元の世界に帰る方法を探す…その二つが旅の目的。


「ならば何故!剣職人なんだ!」


ラウナは激怒した。

つまりだ、剣職人なんて全く関係ないのにどういうつもりなんだ…そう言いたいのだろう。

こんな事なら先に説明して置くべきだった…と思いながらも、変わり者を探すことにして剣職人に行き着いたまでを話した。


話を聞いたラウナはしばらく考え込んだ後、表情を緩めた。


「その考えは確かに効率が良いな…」

「だろ?」

「ああ。大きな声を出して済まなかった」


ラウナが理解してくれたようなので、これで話し合いが終わり、二人でまた部屋に戻る。


「うふふ…会議は終わったの?」

「まあな」


マーサがヤケに楽しそうに聞くが、それに対し静かに応える。

何が楽しいのかは分からない…最初に出会った時から思っていたが、マーサはどこか怪しい雰囲気を発している。

常に油断をせずにいつでも対応出来るように気をつけているが…

どちらにせよ、これからも油断をしない事だろう。


「いつ出発するのかしら?」

「ラウナが疲れていないのなら今直ぐにでも行きたいが…」

「私は大丈夫だ」


ラウナに視線を送ると胸を張ってそう言った。

軍人として訓練していたのだから、少し情報収集したくらいでは疲れないだろう。


「なら直ぐに行こう。マーサは準備が必要か?」

「いいえ、大丈夫よ」


マーサも準備は要らないようなので、三人は宿を出てストラト都市を囲うように聳え立つストラト山に向かった。
















マーサの案内でストラト山に入り、少し進んだ頃…かなり険しい山だと知った。

上り坂は急で道は凸凹としている、ストラト山は森が少なくほとんどが岩ばかりだ。

こんな所で引きこもる事など出来るのだろうか…森の生い茂っている場所なら食料も確保出来るだろうが、周りは固い岩場。

鉱石などは豊富かもしれないが、食料があるとは思えない。

本当にここで引きこもって暮らしているのだとしたら相当な変わり者だろう。


「この坂の上りきった所よ」


そう言ってマーサは少し上を指差す。

指差す先には、既に上り坂の終わりが見えていた。

だが、ソウマは少しの違和感を覚えていた。

今まで歩いて来たストラト山には人の気配を全く感じなかったのだが…坂を上って行くに連れて複数の気配を感じる。

どうやらラウナもそれに気づいたようでソウマに声をかける。


「ソウマ…」

「ああ、先に行って様子を見てくる」


ソウマはそう告げて剣を一本抜き、それを軽く空中に投げる。

剣は銀色の粒子を纏い、曲線を描きながらソウマの足元を通過する。

通過の瞬間にソウマは軽く跳び、刀身の横腹に足を乗せてバランスを保つ。

剣をスケボーのように扱い、空中を飛び抜けてアッと言うまに上りきった。

そこには一人の若い女を中心に周りを柄の悪い男たちが取り巻いている光景が広がっていた。


「盗賊か…?」


服装や人柄を見るかぎり、そういう輩にしか見えない。

決めつけるわけではないが、良い人には見えないだろう。

とりあえず…見てみぬ不利も出来ないうえにラウナが上って来るのにはもう少し時間がかかる。

ソウマは助ける事に決めて、もう一本の剣を抜く。

そして盗賊の集団に向かってもうスピードで突っ込んだ。


銀色の粒子は魔法で構成されている。

その粒子は術者の意志で形を変えられ、上手く使えば殺傷も可能。

だが今のソウマでは明確な形に出来るほどの実力が無く、粒子を放出する程度が限界だ。

それでも盗賊くらいなら問題なくそれで倒せる。


盗賊集団の密集地を粒子を放出しながら走り抜ける。

ソウマが人の間を通れば、銀色の粒子により盗賊は吹き飛ばされ、気絶した。

一分後には、その場に立っている人間は若い女とソウマだけになっていた。


「くそ!撤退だ!」


盗賊たちは急いでその場から逃げるように消え、居なくなった事を確認するとソウマは魔法を解いて地面に着地した。

それと同時にラウナたちが到着し、いきなり現れたソウマたちに若い女が問う。


「…テメェらは何者だ?」


警戒心を剥き出しにする女にどう説明しようかと考えていると、マーサがソウマの前に出た。


「私が連れて来たのよ」

「マーサ!…………ここには誰も連れて来るなと言っただろうが!」

「だって…彼が可愛いんだもの…」


マーサの表情が恍惚に染まる。

どうやら二人は知り合いのようだ…話ている内容は聞かなかった事にしよう。


女はまくし立てるように怒声を発し、マーサに至っては全く話を聞き流している。

これでは話が一向に進まない…すると、困っているソウマを見かねたラウナが二人の間に割って入った。


「私たちは怪しい者ではない。アナタに聞きたい事があって来たんだ」

「……………マーサが連れて来たんなら怪しい者じゃねえのは分かる。とりあえず中に入れよ…助けて貰った礼くらいする」


女はそう言って一軒家に入って行った。

どうやら、話だけは聞いてくれそうだな。

三人は女の後に続くように室内へと足を踏み入れる。

そして、中に入って唖然とした。

室内に入った瞬間に目に飛び込んで来たのは剣…どこを見渡しても剣ばかり。

確かに変わり者だ…ソウマがそう思わざるを得ないほどの量の剣が飾られていた。


「素晴らしい腕だな…」


飾られている剣をジッと見ながらラウナが言った。

マーサの言った通り、腕が確かなのは剣を一目見れば明らかだ。

腰に装着してあるソーマルイ宮殿から持って来た剣とは比べ物にならない。

剣の家庭で育ったソウマには、それが当たり前のように分かった。


「落ち着かないかもしれねえが…まあ座れよ」


部屋の中央に位置付けられている小さめのテーブルに座るよう促され、三人はゆっくりと椅子に座る。


「俺はソウマだ。こっちがラウナ、ソーマルイ国の軍隊長をしている」

「アタシはティアラ・コーナだ。ソウマ、さっきは助けて貰った事に礼を言うぜ」


「ああ」


ティアラは中性的な顔つきなためか、ラウナより男前に見えてしまう。

こちらの世界は男前な女性が多いのだろうか…

そんな事を考えていると、ティアラはラウナに視線を移した。


「ソーマルイ国って言うと隣国だろ。軍隊長さんがこんな所に何のようだ?」

「…妹が原因不明の病なんだ。その類に詳しい者か難病に効く薬とか知らないか?」

「なるほどな~」


ティアラは「う~ん」と考えながら顎に手を当てる。

返答が返って来るまで暇なので、椅子から立ち上がり、飾ってある剣を一つひとつじっくり観察する。

何度見ても、やはり素晴らしい出来上がりだ。

ここまで造れるようになるには、普通は何十年も必要なものだが…ティアラは見るかぎり若い。

二十台の前半と言った所だろう。

その若さでこれほどの技術を持っているのは相当な才能と努力が必要。

スポーツで例えるなら、高校生でプロに入り世界で活躍してしまうほど凄い。


「知らないな…」

「そうか…なら、特別な変わり者は知り合いにいないか?」


ラウナとティアラの話を耳で聞きながらも観察を続けていた時だった。

『その剣』を見てソウマは言葉を失い、固まった。

なぜなら…ソウマの目に映るその剣は……この世界にあるはずがない日本刀だったから…







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