冒険6―出発
ついに冒険へ出発です。
やっとの思いでここまで来ました、ありがとうございます!
感想など貰えると幸いです。
『―やっとスタート地点に立ったようだな―』
それは、きっと夢の中だろう。
聞き覚えのある声が聞こえ、気がつくと目の前に神龍が聳え立っていた。
「…何でも有りだな…」
『―背の魔法陣の力だ。夢の中でのみ…コンタクトがとれる―』
どうやら魔法陣のおかげで夢の中でのみ神龍と話せるらしい。
だが、これは良い機会だ…力や魔法について聞けるチャンスでもある。
「2つ、聞きたい事がある」
『―言うが良い―』
「力…神速は身体に負担がかかるのか?」
『―察しの通り―』
神速はあまりにも強大な力であるからか、長時間使えない。
今はコントロールも出来ておらず、身体が魔法に慣れていないから負担がかかる。
この先、使って行けば次第に上手く使えるようになる…そう神龍は言った。
それを聞いてソウマは安心した。
最悪の場合は剣技のみで戦うのも…と考えてはいたが、力は使っても大丈夫のようだ。
「じゃあ次だ。俺に魔法は使えるのか?いや…使えるようになる可能性は?」
『―………ソナタの背の魔法陣…それは力の源―』
神龍は威厳のある声で静かに語り出した。
背の魔法陣は、神龍の力そのもの…その魔力を一気に全て使えば、いくら異界の者でも死に堪える。
普通の魔法は知識と魔力、イメージが必要。
だが六龍の力を使うにはそれぞれの条件があり、それぞれ違う。
その中で神龍は『願い』を司っている。
術者の願いが強ければ強いほどに、魔力は引き出される。
魔法も同じで、術者が願えば魔力は引き出され、発動する事が可能。
『―魔法が5属と言うのは知っているな?―』
「ああ」
ラウナからバッチリ説明された事だ。
それぞれ自分に合った属性しか扱えないと言うのも、レイナに会った後に聞いた。
『―だがソナタには無属性のみだ―』
「………は?」
ソウマは耳を疑った。
無属性…?そんなものラウナの説明には無かった。
だいたい、魔法には全て属性が有るものだと思っていたのだから。
意味が分からないと言ったように表情を曇らせるソウマに、神龍は応える。
『―無属性とは極めて異例…ソナタのみの力だ―』
「俺…だけの…」
異例な力…無属性の魔法に神速。
確かに説明されたものとは異なるものばかりだ。
だが…そうなると異界の者はみんなそうなのだろうか…
疑問を神龍にぶつけると少しの間を置いた後に応えた。
『―他の者については不明だ…我が分かるのはソナタのみだ―』
どうやら分からないみたいだ。
どちらにせよ旅をしているうちに出会う事もあるだろう。
『―そろそろ時間のようだ―』
唐突に神龍がそう言った。
時間…それは、つまり夢が終わると言う意味だろう。
『―我が名はラグナロク…変革者としての使命を果たせ―』
神龍、ラグナロクの言葉が終わると次第に目の前が白くなり……
夢はそこで途切れてしまった。
☆
☆
「荷物はそれだけ?」
朝、部屋に呼びに来たラウナを見て思わず聞いてしまった。
ラウナは最初に出会った時と同じ鎧を纏い、リュックサック程度のバックを腰に付けた程度だった。
「食料は現地で調達する。金銭面についてはソーマルイ国から支給されるから安心しろ」
「なるほどね」
この世界の通貨は『ジル』と呼ばれる物らしく…
金貨―約10万ジル
銀貨―約1万ジル
札―約1000ジル
銅貨―100ジル
となっている。
地球のように細かく区切られている訳ではなく、小難しくなくて助かる。
ラウナの後ろにつき、宮殿の正門から出ると多くの者たちが見送りのために集まっていた。
やはり、自国の姫を救う旅に出るラウナは宮殿でも有数の存在のようだ。
頑張って、気をつけて、姫様のために…など様々な声がラウナに向けられる。
それにラウナも胸を張り、任せろと言わんばかりに頷いた。
こうして見ると、ラウナは信頼の厚い人間だと分かる。
それに比べ、ソウマを見る周りの目は冷たい…それもそうだろう。
どこから来たかも分からない怪しい者、加えて人間の若者だ。
「こんな奴が何の役に立つ?」そう言いたいのだろう。
だが、そんな事を気にする必要はない。
元の世界に戻る術を探さなければならないのだ。
レイナの病の原因も探すが、自分の目的も忘れてはいけない。
激励を受けるラウナを横目にスタスタと先に進んで行く。
「ソウマ!」
「鉄門で待ってるから…ゆっくり話とけよ」
焦って名前を呼ぶラウナにそう言い残し、一人で鉄門に向かう。
のどかな街並みを見ると、ここが魔族の街とは思えない…やはり、ここは異世界。
地球と似ている所が無い訳ではないが、常識が通じない。
魔法なんてものがある時点で理解し難いだろう。
こんな不思議な世界から早く帰りたくはあるが…そうもいかない。
レイナの件にラグナロクの言葉、アヤセの事もある。
全部放ってしまえば楽なのだろうが、それでは自分が自分を許せない。
出来る限りの事はしたい。
正面に鉄門が見えて来た頃、後ろからラウナが小走りで追いついて来た。
「ゆっくり」とは言って置いたが…急いで来たらしい、律儀な性格だ。
「早かったな」
「待たせるのは性に合わないからな」
本当に男前だ。
ラウナとソウマは並んで歩いて行くと、鉄門の両脇にいる警備の者が門を開いた。
礼を言ってから通ると、ゆっくりと門が閉まる。
やっと目的のために行動が起こせるな…そんな事を思いながら鉄門を見つめていると、ラウナが催促するように言う。
「ほら行くぞ!」
「…ああ」
前を向くと、長い道のりを既にラウナが歩いていた。
時間がない…レイナの病状は明らかだ。
あの衰弱の仕方は異常と言える…そう長くは持たないだろう。
きっと、ラウナもそれを理解している。
ソウマはラウナの背中を追うように歩きだす。
この時から始まる…ソウマの物語りが。