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冒険4―知った世界






ソウマは扉を叩くノックの音で目を覚ました。

まだ重たい身体をゆっくりと起こし、扉までふらふらと危なげに歩き、開く。

そこには昨日、協力を交わし合った相手のラウナが立っていた。


「気分はどうだ?」

「まだ眠いが…それ以外は大丈夫だ」

「そうか、何よりだ。まずは身体を綺麗にしよう…大浴場に案内するから湯に浸かれ」


そう言うとラウナは廊下を歩き出し、ソウマはその後ろをついて行く。

こちらの世界にも風呂に入る習慣があるようだ。

目の前を歩くラウナの髪はしっとりと濡れている。

恐らく、既に彼女は入った後なのだろう。


廊下の所々には警備の者が立っていた。

ほとんどの者が兜を取っていて顔が見えたが、人間は誰1人としていなかった。

ラウナだって顔や身体は人間だが背中には白い羽がしっかり生えている。

天使と形容した方が良いかもしれない。


「着いたぞ」


ラウナがいきなり止まり振り返る。

横には青色の通路が続いていて、奥には扉がある。

逆側には同じ作りだが赤色の通路が続いて奥に扉があった。


「赤い方は女だからな…気をつけろ」

「……わかった」

「着替えは中に用意されているからそれを着ろ。使用人を待たせて置くから、湯からあがったら案内して貰え、いいな?」

「ああ」


返事をしてソウマは青色に染まった廊下を歩く。

青色と言っても白なども混じっているうえに高級そうな装飾品も施してある。

壁に埋まっている宝石や飾られている品を見ながら歩き、奥の扉に着くとそれを開いた。


「………凄いな」


思わずそんな言葉が零れた。

扉を開いた先には100人近くは入れそうなほどの大浴場…

間違いなく日本にこれほど広く、高級感溢れる風呂は無いだろう。

取り敢えず端にある龍の頭型シャワーを取り、適当に色々と動かすとお湯が出て来た。

普通にお湯が出た事に感動しながらも身体を洗い流し、湯に浸かってみる。

湯加減も心地良く、疲れが抜けるようだ。

そのまま30分ほど浸かった後、用意されてある服を着て外に出るとメイドさんが待っていた。

そのメイドさんに案内され、ラウナのもとへと向かった。











「座ってくれ」


メイドさんに通された部屋には長く広い机と椅子が幾つものあり、机の上には豪華な料理が並んでいた。

ラウナに促されるがままに正面に座り、目の前に並ぶ料理を見る。

どれも見た事のない料理ばかりだが、自然と美味しそうに見えるのはシェフの腕だろうか。

それとも、ただ単に空腹だからだろうか。

生まれて初めてこんな豪華な料理を見たし、宮殿に入ったのも初めだ。

そんな庶民のソウマからすれば、あまり落ち着ける雰囲気ではなかった。


「好きなだけ食べてくれ。話は食べながらでも出来るだろう?」

「……じゃあ遠慮なく」


考えて見ると、こちらの世界に来てから食べた物はトカゲの店主から貰ったリンゴ(のような物)だけだ。

非常識な事ばかりが続いていたためか、空腹があまり気にならなかったが、いざ目の前に食料があると空腹に耐えられなくなる。

この世界では通じるか分からないが一応「いただきます」と言ってから、置いてあるフォークを手に取り…一番近くにある料理を食べてみた。


「これ旨っ!」

「当たり前だ。一流の料理人が作っているのだからな!」


なぜかラウナが誇らし気に自慢した。

別に料理を作っているのは料理人たちであってラウナではないだろ。

そう思ったものの、口には出さずにゆっくりと料理を口に運ぶ。

空腹ではあってもマナーは大切にした方が良い。

ましてや今いる場所は宮殿…それなりの態度が必要である。


最初は黙々と食べたが、ある程度まで食べた所でソウマは手を止めて食器を置いた。


「ラウナ…そろそろ話を聞きたい」

「…そうだな」


ラウナはゆっくりとソウマを見た後、語りだした。


「まず…この世界についてを話そう」




この世界には人間・魔族・魔物の3種が存在している。

知能が高く、文明を築いているのが魔族で…魔物は魔族に成り上がれない者を指す。

人間と魔族はお互いにある程度の交流を持ち、協力し合って生きてはいるが…中には受け入れられない地も少なからずある。

王国ソーマルイは受け入れられない訳ではないが、規制として人間には許可証が必至となっている。


技術面では、現在の最新技術は空を移動出来る『飛空挺』と呼ばれる飛行型要塞だ。

だが、それもほんの一部の国でしか見られない。


魔法が存在し世界の基本となっている。

火・水・雷・地・闇の5つの属性があり、その5属性にはそれぞれ司どる龍が存在すると言われている。

炎龍・水龍・雷龍・緑龍・黒龍がそれぞれの5属性魔法の原点と言われているが、それを見た者はいない。

そして『神龍』と呼ばれ、未知の力を持ち世界の流れを作っている神に近い存在が神話として信じられている。

龍は全てを合わせてこれらの6匹しか存在しない。




「これが世界観だ」

「…じゃあ、俺が神龍と出会ったのは相当稀な事だな」

「稀所か…世界的な地位に立ってもおかしくはない。それだけ6匹の龍は素晴らしい存在なんだぞ」


この話を踏まえて考えると、変革者は恐らくそれぞれの龍に出会い、力を受け継いでいる。

それなら数も揃うし、変革者と呼べるほどの力を宿しているはずだ。


「お前が神龍と出会い、変革者の予言と背の魔法陣を受け継いだ……これは偶然ではないだろう」


異界の者が変革者として龍の力を受け継いだのなら、近いうちに世界は混沌の渦に巻き込まれる。


ラウナはそう続けた。

どうやら自分が思っていた以上に自分は特別なようだ…ソウマはそう思い知らされた瞬間だった。


「そして……お前の力、神速についてだ」


そう言うとラウナは椅子から立ち上がり、「上着を脱げ」とソウマに命令した。

いきなり何を言うんだ!…と思ったが、直ぐに背の魔法陣を見たいのだろうと理解し、上着を脱いだ。

ラウナは魔法陣をマジマジと至近距離で観察した後、優しく背に触れ、魔法陣を撫でるように指を移動させる。


「どうだ?」

「この魔法陣には有り得ないほどの魔力が宿っているな。道理であれほどの力が使える訳だ」


ラウナ曰わく、魔法陣には人間や魔族とは違う異質な魔力が膨大に宿っているらしい。

質については不明だが、魔力の量については生命体として有り得ないとの事。

ソウマは手が背中から離れたのを確認して、服に袖を通しながら聞いた。


「じゃあ、昨日はなぜ俺は血を吐いて気絶したんだ?」

「推測だが…不慣れな事に加えて強大過ぎる力を使った反動だろう。あれほどの力を使って身体に負担がかかるのは当たり前だ」


つまり神速は身体への負担が大き過ぎる…ラウナの言葉はそう言う意味だった。

だが、ソウマには神速しか持っている力は無い。

これからの事を考えると、負担が少なく済む使い方か速度を落とすかのどちらか…

そのためには力のコントロールが出来るのが絶対条件のようだ。


「それで、これからお前は私の側近として側に居てもらう事になるのだが…」


考えているとラウナがそう持ちかけて来た。

協力者となってもらう変わりに側近となる…これが交わした条件だ。


「なんだ?」

「私とお前で旅に出ようと思う」

「…………は?」


ソウマはこの時、ラウナの考えている事が全く分からなくなっていた。







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