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冒険1―日常から非日常


新連載です。

今回は異世界ファンタジーへと挑戦してみました。

良い作品に仕上がるよう、頑張りたいと思います!


是非とも誤字、脱字などがありましたらお伝え下さると幸いです。

宜しければ感想や意見なども貰えると有り難いです。








「ソウマ!一緒に帰ろ!」


いつも通りの日常…学校を終えた後の下校時間、後ろから少年…兵藤ヒョウドウ 双真ソウマに声をかけたのは彼の幼なじみである橋本ハシモト 綾瀬アヤセだ。

ソウマは振り返り、その姿を確認した後に眉間にシワを寄せた。

確か…アヤセには…


「あ?お前、彼氏いるんだろ?」


そう、アヤセには恋人がいる。

確かに幼なじみではあるが、流石に彼氏がいるのに一緒に帰るのはどうかと思う。

何しろ、一緒に帰ってその彼氏から色々と言われるのは我慢ならない。


「トモくんは生徒会だってさ~だから、ね?」


だが当の本人は関係ないと言わんばかり。

何が「ね?」だ。

アンタは良くてもアンタの彼氏はどう思うか考えてみろ。全く…


ソウマは再び前を向き、黙って歩き出す。


「ねぇ~良いでしょ~!」

「うるさい、1人で帰れ」


アヤセはしつこくソウマの隣に並び強請るように言う。

面倒な奴だ…アヤセは幼なじみだからと言って頻繁に接触して来る。

幼なじみと聞くと、仲が良く、家が近所と言うのが相場が決まっているが…

ソウマとアヤセはそうではない。

確かに家は近所どころか隣同時ではある。

それでも仲が良い訳でもない。


「だって家は隣でしょ!なんで嫌がるの~!」


自分の胸に聞いてみろ。

うんざりとしたようにため息を吐く。


「もう良いもん!勝手についていくから!」


そう断言してアヤセは黙ってしまった。

けれどしっかり後ろをついて来ている。

名も知らぬアヤセの彼氏よ…どうかこの女に鎖でも繋いでおいてくれ…

心の中でそう呟いた時だった。


『見つけた』


………?

聞いた事の無い声がその場に響いた。


「今の聞こえたか?」

「う、うん…女の子の声…だよね」


どうやらアヤセにも聞こえたらしい。

と、言う事はこの場にいる二人以外…つまり第三者の事となる。

まさか…アヤセの彼氏か?とも思ったが、声は女のものだったため違う。

なら誰が…


そう考えていた時だった。

謎の声の第2声が聞こえた。


『強い魔力の持ち主…異世界の女神が』

「おい!誰だよ!出てこい!」


ソウマが低く、謎の声に言うと何も無かった空中が割れた。

ピシッと罅が入ったような音の後、形の悪く開き丸い円を描き穴となった。

その穴の中は真っ暗で不気味さを覚える。

一体何が起こったのかと穴を見つめていると、中から人が出てきた。


「んな!?」

「うそ~!?」


出てきたのは女性で白いフードを被っていて、手には杖を持っている。

いわゆる白魔道士のような恰好をしていた。


『やっと見つけた…救いの女神』


白魔道士はそう呟き手に持つ杖を振る。

すると、白魔道士の一番近くにいたアヤセの身体が宙に浮いた。


「な…なんだそれ…」

『用は済んだ…』


そのまま白魔道士は黒い穴に戻り、アヤセの身体も一緒に引き込まれる。

アヤセの表情は恐怖に怯え、助けを求めるようにソウマに向かって手を伸ばす。


「助けて!ソウマぁ!」

「ッ…くそ!」


ソウマは舌打ちを一つして、黒い穴に向かって走りだす。

次第に穴は小さくなり、猶予が無い事を知らせていた。


「アヤセ!」


アヤセの伸ばす手に向かってソウマも手を伸ばす。


「ソウマ!」


そして………お互いの手が繋がれた瞬間、ソウマの身体は強い引力に引かれ黒い穴に向かって行ってしまう。


「……マジ?」


アヤセだけで無くソウマ自身も黒い穴に吸い込まれ、穴は完全に閉じた後、消滅した。

この瞬間、兵藤双真と橋本綾瀬は日本から…地球から姿を消してしまった。





















「ここは…?」

気がつくと、そこは砂漠だった。

どうなっている?

変な女にアヤセが連れて行かれ、助けようとして巻き込まれた。


「アヤセ…は?」


周りを見渡しても砂漠だけが広がり、人影は見えない。


どこだよ…ここ…


先ほどまでは見慣れた街の中にいたはずなのに、今はこうして砂漠の真ん中に立っている。


ソウマは砂で歩きずらい砂漠をゆっくりと進む。

太陽が真上にある事から、恐らく昼間なのだろう。

最悪だ…昼間の砂漠だと?

手持ちには食料どころか水すら無い。

この砂漠のど真ん中にいたら死んでしまう。

どうにかして水だけは確保しなければならない。






3時間ほど歩いただろうか…

正直、容赦なく照り注ぐ太陽の熱と砂漠からの熱…意識は朦朧とし、脱水症状を起こしていた。

それでも町どころか人もいないうえに食料も水も無い。

誰が見てもソウマの身体は限界で、危険な状態だった。

既に希望など見えず、半分死を覚悟していた…

だが、そんな時、遠くに人影をソウマは見つける。

これで助かるかもしれない、そう思うと披露しきったはずの身体でも動いてくれた。


「なんだ…あれ…?」


しかし、ソウマは更に絶望を知る。

近づいて来た人影は人間ではなかった。

二本足で立って歩いてはいるが、肌は緑色に染まり鼻は潰れ、手には斧を持っている。

数は3…生命体である事に変わりはないが、果たして助けてくれるのだろうか?


次第に近づき、緑色のそれはついにソウマの目の前まで来た。


「オイ、人間ダゼ!」

「久シブリノ獲物ダナ」

「女デナイノガ残念ダガ…」


会話を聞くと明らかに助けてくれそうにはなかった。

目の前には化け物…俺の知る限り、地球にはこんな生命体は存在しない。

つまり…ここは…


地球じゃない。


最悪だ。

しかも砂漠のど真ん中で化け物に遭遇だと?

何の拷問だ、これは…

だいたい、これも全てはあの白魔道士の女が原因だ。

ましてやアヤセまで…アヤセまで…


「ハッ…アヤセは連れて帰らないと駄目だろ…こんな所で人生終わり?ふざけやがって…」


ギロリとソウマの眼光が化け物に注がれる。

先ほどまで弱っていたソウマでは有り得ないほどの眼光に殺気。

既に死にかけている人間を前に化け物たちは圧倒的有利にも関わらず、退いてしまう。


「チッ!ナンカヤバイナ…サッサト殺ルゾ!」


一体のその言葉で3つの斧が振り上げられる。

その斧を避けられる体力は既にソウマには無い。

ソウマは無力な自分を悔やみながらも目を瞑った。

死にたくねぇ…




……………………………しかし、いつまで経っても痛みや衝撃はやって来なかった。

ゆっくりと目を開いて見ると、斧は振り上げられたまま…

それを握る化け物たちは何故か空を見上げて固まっている。

その表情は恐怖に染まっていた。


そこでソウマは自分の周りが暗い事に気がついた。

周りに大きな日影が出来ている…何者かが太陽の光を遮っているという事だ。

化け物たちの視線を追って自分の背後上空を見た。


「………嘘だ…」


ソウマの目に映るのは…ドラゴン。

数十メートル級のドラゴン…銀色の肌に睨まれただけで死んでしまうような目、触れただけで切れてしまうであろう鋭い爪と牙。

頭部に生やす角は太陽と重なり黒く見えるが、長さとその尖り様は分かる。


『去れ、ゴブリン共』


ドラゴンから発しられた言葉を聞いた化け物たちは直ぐにその場から逃げてしまい、ソウマ1人が残された。


逃げなければ殺される…


ソウマはそう頭では理解していた。

理解はしていたが身体が動かない。

何故だろうか…恐怖を通り越し、このドラゴンになら殺されても文句は言えないと思ってしまう。


『異界の住人よ…ソナタを待っていた』


ドラゴンはゆっくり翼をたたみ、顔を下げる。

ソウマの目の前で止まったその頭部は凄まじかった。

近くで見ると体全体に纏っている龍鱗には艶があり、とても強靭に見えた。

この龍鱗には刀も銃弾も…ミサイルさえも効かない、そう思わざるを得ない程に…


『臆するな。ソナタに危害を加える気はない』


嘘じゃない。

本能がそう言っている。

このドラゴンの言葉は全て真実で、疑いようがない。

そんな事は有り得ないのだけど、そう思ってしまう。


「アンタは一体…」

『我は神龍。ソナタには我の協力者になってもらう』

「は?」


いきなりわけの分からない事を言い出すドラゴン。

協力者?

こんな何の力も持たない人間に?


『この世界には6人の異界の者が放たれた。ソナタはその1人…異界の者はこの世界に変革を齎す存在。ソナタには我の力を受け継ぎ、『変革者』となってもらう』

「変革者…」


言っている意味は分からなかったが、世界を変えろ、そう言われてるのは分かった。

世界に6人の異界者がいる。

もしかしたら…いや、間違いなくその中にアヤセもいるはず。


『では、ソナタに力を与える』


ドラゴンがそう言った後、砂漠だったはずの地面に魔法陣が現れた。

魔法陣は銀色に光り、ソウマの身体を包む。


「なんだ…?」

『ソナタには『神速』を授ける。願えばソナタはどこまでも速くなれる』


魔法陣は地面から足を伝わってソウマの背中で止まる。


『背の魔法陣が神速の証。頼んだぞ、ソウマよ』

「!、なぜ俺の名前を…?」


ソウマの問いにドラゴンは答えず、翼を広げ、羽ばたきだす。

風は砂漠を抉るように舞い、次第にドラゴンの体が宙に舞う。


『さらばだ』

「おい!ちょ、待………て」


ソウマは必死で制止を求めたが、ドラゴンは空へと姿を消してしまった。

残ったのは沈黙と背中に刻まれた魔法陣…

これは何を意味するのだろうか…


「つうか…どちらにしろ砂漠を出なきゃ死ぬな」


そう呟き果てしなく続く砂漠の地平線を見つめる。


「?」


見つめていて気がついた。

町が…見える。

微かにだがアレは町だろう…恐らく、さっきまでは披露や熱中症で視力が低下していたため分からなかったのだ。


そういえば、あのドラゴン…神龍は俺に力を与えたと言っていた。

神速を授けると、願えばどこまでも…と。

それは強く願えば力を使えるという意味なのだろうか。


ソウマは町の方向を向き、目を閉じる。

願う…町まで…速く…速く。

するとソウマの目の前に魔法陣が現れ、それに触れる。

瞬間、周りの景色が見えなく確認できないほどに過ぎて行く。

そして気がついた時には町の入り口に立っていた。


これが……『神速』…

今体験したスピードは飛行機でも有り得ない。

変革者…世界を変える者たちが持つ力が……俺に…


信じられなかった。

それでも信じるしかなかった。

あのドラゴンが何者かなんて分からない。

それでも、俺に生き抜くための力をくれた。

運命なんて信じないが、これも定めかもしれない。


何にせよ、アヤセを見つけて地球に帰らなければならない事に変わりはない。

そのための力だ…


「礼を言う」


聞こえてるはずはないが口に出した。


帰るためにはまず世界を知らなければならない。

町では情報を集めるのが妥当だろう。


そう考え、ソウマはまだ知らぬ町へと足を踏み入れた。

この一歩が…波乱を呼ぶとは知らずに…







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