イケメンなんてみんな○ネエエエエエエエエエ!!!!
「はぁ~……ああああ……」
昼食時間。俺はひとり、屋上の塔屋の影で母の作った弁当を食べようとしていた。いや、別に友達がいないぼっちじゃないんだよいやほんと、言い訳じゃなくて。って、誰に言ってるんだろう俺……
ただ、友達みんな、本命なり義理なり女子からチョコを貰っていて。あいつら、チョコの話題しかしないから、俺は今日はひとりで静かなところに……屋上に来たってわけ。
つまり……俺は、まだひとつもチョコを貰えてないってわけ。
「ちくしょう!裏切り者たちめえええ!!!」
頭をワシャワシャと掻きながら、俺は絶叫した。
「はぁ~……腹へった。飯食お……」
ため息を吐きながら、パカッと俺は弁当箱を開けた。すると、弁当箱の半分はご飯が敷き詰められてるんだけど、そのご飯の上に♡の形をした桜でんぶが乗せられていた。よく見ると弁当箱の蓋の上に二つ折りにされた紙が貼られていたので、それを開いて読むと──
──────────────────────
たかしへ
ハッピーバレンタイン!
本当は毎年のようにチョコをあげたかったけど
今日はスーパーに行く用事がないからチョコ
あげられません。
なので、ご飯に桜でんぶでハートを作ってみま
した!
これで許してちょんまげ♡
マジ、めんご☆
母より☆
──────────────────────
と、書かれていた。
「嘘……だろ?うわあああああ!!!」
と、俺は頭を抱えながら叫んだ。
「これで俺は今年、地獄行き決定じゃねえかよ!!『許してちょんまげ♡』じゃねえええ!!可愛いと思っていつもそれ言ってるかもだけど、なんっっも可愛くねぇっつうの!!痛いわ!!つかこれはチョコじゃないからダメなんだよ。いやでもっ……!いつも弁当作ってくれてありがとう、母ちゃん!!!」
と、混乱のあまり、俺は意味のわからないことを叫んでいた。すると。
「うるさいなぁ。折角一人になれる静かなところを見つけたと思ったのに」
塔屋の上の方からそんな声が聞こえてきた。上を見上げるとそこには……
「げっ……星野輝」
俺と同クラで学年一のイケメンの星野輝が俺のことを見下ろしていた。
「ていうか、さっきからわーわー叫んでるみたいだけど、なんか悩みごととか?俺なんかでよければ話し聴くよ?」
「……ふん、お前みたいなモテ男なんかに、俺の悩みなんてわかんねーよ!つーか、なんで星野が1人でここにいるんだよ?モテ男はモテ男らしく、女子に囲まれてろよ!」
俺は八つ当たり気味に星野に言うと、ガツガツと弁当を食べた。
「いや、それが嫌だから1人になれるここに来たんだよ。まったくよ~バレンタインのせいで毎年大変なんだぜ?女子がいつにも増してキャーキャーうるさいし、大量に貰ったチョコを消費するのは大変だしさ」
ピキッと、俺の頭が音を鳴らしたのと同時に、握っていた箸が同じような音を立てた。イラつきすぎて、握る箸に力を入れて折りそうになった。
すると、星野は塔屋からヒラリと飛び降りてきて俺の隣に座った。
「ほら、隆史君も一緒に食べよーよ。俺1人じゃ食べきれなくてさ~」
と、星野は女子から貰ったであろうチョコの箱を開けると、一粒とってモグモグ食べながら、そのチョコの入った箱を俺に向けた。チョコの見た目からしてきっと、手作りのチョコだ。俺はイラッとしながら。
「いるか!それは星野にくれたチョコだろ!それは星野が全部責任持って食べろよ!!」
そう言いながら、チョコの入った箱を押し返した。
「え~美味しいよ?」
「美味しいだろうがなんだろうが、あんたが貰ったもんなんだからあんたが全部食べなきゃだろうが!」
「そうなの?これ以外にもたくさん貰いすぎて1人じゃ食べきれないから、毎年のように友達や近所の人に配る予定なんだけど……」
こいつ……マジでぶち○してやろうか?と、俺は内心でイライラしながら思っていると。
「……本当は一番好きな人から貰いたかったんだけどさ、その人にフラれちゃったんだよね~」
と、星野はため息を吐きながら言った。星野のその話しに俺は少し内心で「ざまぁ」と歓喜しながら、その事に関して少し掘り下げてみることにした。
「へぇ~?(クソ)モテ男の星野がフラれるとかあるんだ。で、誰にフラれたの?」
「……何ニヤニヤしてるの?姫野さん、同クラの姫野美姫さんだよ。先週告白したら『好きな人がいるからごめんなさい』ってフラれたんだよ」
「そうなんだ~ドン☆マイ」
と言いながら、俺は内心で「姫野さんグッジョブ!!」と親指を立てて思った。が。
「ま~でも、その後すぐに綾野先輩(美人)に告られてさ。ま、いっかーって付き合うことになって。顔は姫野さんほど可愛くないけど、セ○クスが気持ちよかったし、しばらくは綾野先輩でいいか~って妥協したんだ。んで、このチョコはその綾野先輩の手作りチョコなんだ。美味しいけど形がブサイクでウケるでしょ?」
と、星野はケラケラと笑った。
俺は。
「クソが!!イケメンなんてみんな○ネエエエエエエエエエ!!!!」
そう叫びながら、屋上を後にした。