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悪の勇者の異世界征服  作者: 東乃西瓜
三章  悪に救われる者たち
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魔物と人間

 負けた。


 魔王を滅ぼすことと悪を倒すことを求められる勇者である僕が。

 魔王には逃げられ、悪に屈し、仲間を殺された。


「………フィーナ」


「………うん、やっとわかったよ。僕はわかってなかったんだ。ナナシもメアリーもネザーも敵なんだね」


 魔王を滅ぼすためにまず悪を倒さなくてはならない。

 ナナシを、友達を倒さなくてはならない。


 背に走る激痛が僕に言う。

『この痛みを与えた者たちは敵だ』と。

 殺されたガリアとリーの亡骸が言う。

『仇をとってくれ』と。




『人間しか守らぬ貴様に正義を名乗る資格があるのか!?』



 でも魔王のあの言葉が頭から離れない。

 僕はメタルドラゴンの額の鱗で作った盾を見る。

 メタルドラゴンが何をした?

 人間を殺したのか?人間の生活を脅かしたのか?

 メタルドラゴンを討伐してくれと依頼されたわけではない。

 ただ強い盾のためにメタルドラゴンを僕は殺した。



 僕の着ている鎧にしてもそうだ。

 素材はミスリルの鉱石だが採掘の際に襲ってきたゴーレムバットやゴブリンは殺した。

 しかし彼らからしたら自分たちの街に入ってきた敵を追い返そうとしただけなのだ。



 人間が人間のためにただただ魔物を殺すことを彼らに受け入れろというのか?

 この魔物の皮は使えないと言って焼き払う人間が正しいのか?



 魔王から見た僕は彼らにとって悪でしかないのだろう。

 仲間を殺し、必要な素材だけを剥ぎ、ただ捨てる。

 そうしている人間を守っているだけで僕は彼らにとって敵なのだ。



 そもそも僕はなぜ魔王を殺さなくてはいけないのだろう?

 魔王に人間が何かされたのだろうか?

 僕は何も知らなかった。

 殺すならば殺すための理由を知らなくてはならない。


「エルザ、僕たちはなんで魔王を滅ぼすのかな?魔王が僕たち人間に何かしたのかな?」


「……魔王に言われたことを気にしてるの?」


「………魔王は魔物の王よ、私たち人間の敵の王。人間と魔物の戦争よ、だから倒さなくちゃ」



 エルザはそう言うが僕の目を見ることはない。

 エルザも分かっているのだ、間違っているのかもしれないと。



「アルメリアの王様に会いに行こうエルザ、このままじゃ僕は魔物は殺せない。魔物を殺す人間を守りたいとも思えない」



 よくもまあ今まで考えなかったものだ。

 捨ててきた彼らの仲間たちの亡骸を覚えているだけでも思い出す。


 ワイルドボアの肉は食べた。

 でも内臓や皮や骨は捨てた、食べられなかったから。


 アクアスライムは何も残らなかった。

 蒸発させるために撃った魔法が強すぎて核も燃えたから。


 ゴブリンはただ捨てた。

 人型の魔物はなんとなく食べたくなかったし、持っていた武器も粗末すぎて使えそうになかったから。


 オークは角だけ切って捨てた。

 肉は臭くて食べられたものじゃないし、皮や骨ももっといい魔物がいたから。




 では彼らはどうだ?

 ワイルドボアは人間を食べきる。残るのは衣服ぐらいのものだろう。

 アクアスライムは人間をそのまま消化する。何も残らない。

 ゴブリンも人間は全部食べる。骨は加工して武器や装飾品にしている。

 オークも人間は食べる。服もそのまま食べるそうだ。



 目の前にいる2人の亡骸にしてもそうだ。

 魔王が逃げたから2人の亡骸はここにあるが僕がただ負けていたら彼らの餌になっていたことだろう。



 殺されるから殺すのなら納得できた。

 だが人間は彼らを自ら求めた。

 素材として、肉として。




 ーーーーーザワッ



 一瞬、背に痛みと共に謎の寒気が走る。

 しかし近くに魔物がいるわけでもなく、寒気はすぐになくなった。



 僕はその寒気の正体に気付けなかった。



 それが魔や悪に敏感な勇者である僕の中に芽生えた悪の感情だと気付くのはまだ先のことだった。

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