赤子故の経験
俺は1歳になった。
喋る事ができない間は瞑想をしていたり、山賊達の話を聞いたりしていた。
こいつらが貴族たちとの揉め事に巻き込まれて村を無くし、仕方なく山賊などをやっている事。
この世界には魔物が至る所に存在している事。
まあ身になるものは多くなかったが、それでも知識として覚えるだけの暇は十分にあった。
ヤギのミルクが不味い事も覚えたな。
今日は仲間の1人が16になるらしく、学園に通うための準備をすると言っていた。
誰かが言っていたがこの国では学園に通うのに金と身分はいらないらしい。
これは好都合だ。自分が16になった時、知識をつける場所に行けるのだから。
だからこそ、それまでにこの世界の常識を学ばなければならない。
時々こいつらが組み手のようなものをやっているが、それもなんとお粗末なことか。
だが魔法というものには感動した。
手のひらから片手で掴めるほどの火の玉が発射されたり、指先から鋭い水が出たり。
遊びでやっているはずなので、本気でやれば人を殺すのも容易い魔法もあるのだろうな。
成長の楽しみは増えるばかりだ。
「おあおお、おーいあ、おあうう」
おはよう、こんにちは、おやすみ。
歯は少し生えたもののまだ発音がうまくいかないため、魔法を唱える事はできない。
まあこいつらが叫んでいるファイアーボール!みたいなのが魔法を使うのに必要なのかは分からないが。
成長するにあたり目標を立てなくては。
今のうちに使いたい魔法は選別しておきたい。
見てきたもので使いたい魔法は3つほど。
転移という移動魔法。
強化という身体強化魔法。
ヒールという回復魔法。
とりあえず真っ先に強化は覚えておきたい。
次に転移。ヒールは後回しでもいいな。
動けず、話せない間も知能のある俺には学ぶ事ができる。
これはある意味、神から与えられた特別な力みたいなものなのかもしれない。