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悪の勇者の異世界征服  作者: 東乃西瓜
三章  悪に救われる者たち
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オーガ討伐へ

「はい。ではこれでナナシ・バンディット様、ネザーアルメリア様、ナーガ・ディオネ様のギルド登録は完了です。3名はFランクからのスタートになります。本日からすぐに依頼をお受けになりますか?」


 周りから目線を浴びながらも無事ギルドの登録を完了し、受付嬢から聞かれるが答えはもう既に決まっている。


「あぁ、依頼はカウンター横のボードに貼ってあるアレだよな?受けられるのはメアリーのランクのAランクまででいいのか?」


「左様でございます、あちらの中から選んでいただいてこちらにお持ちください。ランクはAまでですが今張り出されているものだと最大はBランクになりますね。内容はオーガの討伐になります」


 受付嬢から説明を受け、俺はメアリーを見ると顎で持ってこいと指示を出す。

 メアリーはため息をつきながらとぼとぼとボードに向かい、オーガ討伐の依頼書を探す。


「オーガ……オーガ…あ、これですね」


 メアリーは依頼書を見つけ、ボードからパリッと剥がすとそれを俺に渡し、俺はそれをそのまま受付嬢に渡した。


「……あのいくらAランクのメアリー・ロッド様がいるとはいえ初回からBランクは厳しいと思います。初めはFランクの依頼をいくつかこなすべきかと……」


 受付嬢が心配しているのかオーガの討伐に否定的だ。

 学生だからという事もあるのだろうが後ろから睨むネザーの視線に気づいて欲しいものだ。


「なぁ、さっきうちのネザーにボコられた大男のランクは?」


「……Cランクですが?」


「そうか、あの程度のカスでもCランクなわけだ。安心したぜ、やっぱりこの依頼でいい」 


「……あの方は我がギルドで多くの依頼をこなし、我々の厳正な判断においてランクをあげた方です。あまり依頼を舐めてかかると痛い目を見るのは皆さんの方になりますよ?」 


「目と違って口は立派だな節穴嬢、よくもまぁあんなカスをCランクまで上げたもんだ。あんなカス俺なら一生草むしりさせるぜ。いいから早くしろよ、またカスみたいなBランクCランクが間違えて依頼受けちゃう前に俺らが片付けてやるっつってんだからよ」


 受付嬢と俺の口論を見てナーガは周りをキョロキョロしているがネザーとメアリーは変わらず堂々と立っている。

 受付してもこれ以上は無駄だと判断したのか依頼書に筆を乗せる。


「……本当に大丈夫なんですか?オーガ討伐なんて熟練の冒険者がやるような依頼ですよ?」


「大丈夫だ、オーガなら授業で習ったしな。対策もあるし問題はない」


 オーガ。

 魔物の中でも高度の知能を持つ魔物。

 群れをなし人間や他の魔物を狩り、それらを餌として生きている。

 落とし穴などの簡単な罠も使うが何より特徴的な部分はその大きさである。

 小さなものでも2mを超え、全身を硬い体毛で覆う事で刃や牙を通さない。



 これがオーガについて授業で学んだ事だ。

 ナーガは心配しているがほぼ間違いなく勝つ事が出来る自信がある。


「……はい。これで依頼の受付は完了致しました。依頼はオーガ3匹の討伐になります。討伐の証拠としてオーガの右耳をお持ちください、それでは無事をお祈り致します」


 全く心の篭っていない祈りを受付嬢から受け、俺たちはギルドの出口へ向かい、外へ出る。


「では森へ転移しますね、皆さん私の身体に触れてください」


 メアリーは俺たちに促し全員が自分に触れたのを確認すると転移の詠唱を始める。


「……転移」


 メアリーの転移が発動すると、ギルドのある街から少し離れた丘に来ていた。


「メアリー、オーガの魔力感知は出来るか?」


「いえ無理ですね、オーガは魔力を持ちませんから。歩いて探すしかないです」


「チッ、無能僧侶が」


「何か言いましたか人間擬きの悪魔が」


「貴様たち!痴話喧嘩はその辺にしておけ!僕は早くオーガを狩りたいのだ!」


「………本当に大丈夫なんでしょうか」



 騒いでいる俺たちを見てナーガは深くため息を吐くと魔力を練りながら早く終わらないかなと言わんばかりに座りはじめた。



「………あ」 


「なんだよクソ僧侶」


「強い魔力反応があります、正体までは分かりませんがどうしますか?」


「どうするネザー」


「くははははは!!決まっているだろう!そいつの元へ向かえロッドよ!!」



 メアリーから魔力反応の事を聞いたネザーは身体から魔力が溢れ出して興奮している。

 こいつの戦闘狂にも困ったものだが先陣を切ってくれるのは助かるので黙っておく。


 俺たちはメアリーを先頭にその魔力の元へ歩き始め、狩りの準備をする。

 一つ気になるとすればナーガが怯えている事だけだった。


 ーーー


 魔力を探った先にいたのは3匹のオーガとそれより一回り大きく見るからに群れのボスだと言わんばかりのオーガだった。

 4匹は既に狩りを終えたのか魔物の死骸を食い漁っており、ナナシ達は茂みからそれを眺めていた。


「おいおい、授業で習ったオーガと違うぜアレ」


「ジャックオーガですね、キングオーガの子供です。キングオーガ程ではありませんが魔力を持っている魔物です」


「くはは…ジャックオーガの討伐が初陣になるとは流石はバンディット、これは悪運というヤツか?」


「……笑えない冗談ですよネザー様、どうします?退きますか?」


「それこそ笑えない冗談だなディオネよ、先陣は予定通り僕が行くぞバンディット。ディオネよ、僕が奴らを牽制しながら地面に武器を生成する、貴様は麻痺毒を生成して纏わせておいてくれ」


「………はぁ、私はここから出ませんからね」


「貴様は後衛と言ったであろう?前線に上がって来てみろ、貴様から殺すぞ?」


 ナーガにそう告げるとネザーは剣を生成しながら茂みから抜け出し物凄いスピードで走り出し、早々にオーガの内の1匹の背中に剣を突き立てた。


 グギャァァァァァァ!!!!!


 オーガ達は死骸を貪るのをやめるとネザーの方に向き変える。

 ネザーの剣を背に突き立てられたオーガもダメージはないのか同じように敵対している。


「くはははは!!ダメージはないか豚め!!ほれ、こっちだ!!」


 ネザーは模擬戦でナナシと戦った時のようにオーガの周りを周りながら武器を生成していく。


 オーガは武器に警戒していないのか次から次へと突進して来るがネザーは剣を器用に使い突進をいなしていく。

 しかし剣や槍をいくら投げてもその刃がオーガの致命的なダメージになる事はない。


「相変わらず楽しそうに戦うなネザーは、オーガ達もイライラしてんだろうな」


「そうですねぇ、食事の邪魔をされた上に蜂が刺してくるようなダメージでしょうし」


「………ナナシ君は行かないんですか?ネザー様一人では厳しそうに思うのですが」


「ネザーなら大丈夫だろ、アイツが死んだら行くけどよ」


 話しかけたナーガの方を見もせずに言うナナシを軽く軽蔑しながらもナーガはネザーとオーガの戦いに目を戻し、ネザーの生成していく武器に毒を纏わせていく。


 その後もネザーは30分以上その戦い方を繰り返しながら次々と武器を生成し、気付くと辺りは一面の武器に囲まれていた。


「ふむ、そろそろかと思っているのだがやはりそう思い通りには行かぬか」


 ネザーは未だに汗の一滴も垂らす事なくオーガ達をまるで子供のようにあしらいながら戦っていく。

 そしてオーガ達も痺れを切らしたのか4匹同時にネザーに突進していく。



 しかしオーガ達の突進がネザーに辿り着くことはなかった。

 気付くとネザーが円を描くように回っていた中央付近は既に多量の武器の生成により土や鉄などはなく、そこはただただ柔らかい砂と化していた。


 その砂は大きく重いオーガ達を支える事なく足から飲み込んでいく。


「くははははは!!知能があるとはいえやはり豚だなオーガよ!!!」


 オーガは下半身が飲み込まれると腕でなんとか抜け出そうともがくがナーガの麻痺毒により勢いなく振り下ろしている腕が砂を抑える事はなく少しずつ沈んでいく。

 そしてネザーはオーガが砂に飲み込まれたのを確認すると、ナナシ達を呼ぶ。


「バンディットよ、もうよいぞ」


「おう、満足か?」


「ふむ、まぁ腹八分とは行かぬがまあ満たされたわ。やはり命を本気で刈り取る為に向かってくる殺意というのは良いものだ」


 ネザーは随分満足気にしているが、ナナシにはどうしても引っかかる事があった。


「んで?ネザー、ちょっと聞きたいんだが?」


「なんだバンディット?」


「証拠の右耳は?」


「…なんの事だそれは?」


 ネザーは真顔でキョトンとしている。

 顔を手で押さえたまま、またオーガを探さなければいけない苦労を考えるとナナシはネザーに言う。



「………討伐した証拠にオーガの右耳がいるって受付嬢が言ってたろうがこの戦バカが!!!」

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