授業かギルドか
ディーンとの決闘から一月程経ったある日の事。
学園長からまたもや呼び出された俺は放課後に学園長室に向かっていた。
前回と違うところがあるとすれば呼び出されたのが俺だけでなく、メアリーとネザーも一緒だという事だ。
「まさか僕まで呼び出しにかけられる日が来るとは……貴様のせいだぞバンディット」
「だから説教だって決めつけんなよ、まだわかんねえだろ!」
「私とネザーさんも一緒ですし今回は本当にお説教ではないと思いますよ?」
「前回も説教じゃねえよ!」
しかし今回ばかりはなんで呼び出しを受けたのか検討がつかない。
ディーンの件ならば俺1人で良いはずだし。
そんな事を考えているうちに学園長室に着いた。
ーーーコンコン
扉をノックして学園長室に入る。
中にいたのはセレス学園長と3人の知らない生徒であった。
「どうも、今回は何の用でしょうか?」
「いらっしゃい、悪いけれど呼び出した方が揃うまでもう少し待っててね」
ふぅ、と息を吐き横にいる3人を見る。
見るからに肉体派という男とメガネを掛けた賢そうな男、そしてもう1人は栗色の髪をした女だった。
すると見ているだけで暑苦しい男が話しかけてきた。
「お!お…….お前もしかしてナナシ・バンディットか!?あのディーン・ナイトハルトと決闘して勝ったって噂は本当なのか!?」
「あぁ、よく分かったな。その噂も本当だ、ディーンが戦えなくなって騎士団を退団したって噂もな」
「はー……マジだったのかアレ!見た目だけだとそんな強そうには見えないけどな、やっぱアレか?脳あるなんとか?みたいなやつか?」
「能ある鷹は爪を隠す、ですよガリア君。あと初対面の相手にはしっかり自己紹介をすべきです」
横にいたメガネが口を挟んでくる。
メガネを指でくいっと持ち上げる仕草も合間って、その斜に構えた態度がなんとも気に入らない。
「お、それもそうだな。オレはガリア・ドラン!よろしくなナナシ!」
「はじめまして、ナナシ・バンディット君。僕はリー・テオン、よろしくお願いします。ほらナーガ、君も挨拶を」
「………どうも、ナーガ・ディオネです」
「……?どうしましたナーガ?」
「……別になんでもないです」
「………?すいませんナナシ・バンディット君、いつもはこんな感じではないのですが……」
ナーガという女の態度が随分素っ気ない。
リーがフォローしてくれているが俺が何かしたのだろうか?
ーーーコンコン
覚えのあるこのノック、間違いない。
「誰だ?」
俺は扉に背を向けたまま問い掛ける。
「僕だ」
そう言って入ってきたのはフィーナとエルザ、そしてもう1人は黒髪の女生徒だった。
「おいフィーナ、学園長室に入る時に僕だはないだろ?」
「ナナシこそ、学園長室に入ってくる人に対して誰だ?はないんじゃないか?」
そんな事を言いながら2人で笑い合っているとセレス学園長がパンパンと手を叩く。
「来ていただいてありがとうございます皆さん、早速ですが本題に入らせていただきますね。このアルメリア学園からは毎年各クラス三名までをギルドに派遣しています。それが今回呼び出した方達です。もちろん強制ではないので断っていただいても構いません」
なるほどな、ギルドというものには興味があるが今学んでいる勉学を投げ出すのはもったいない。
「どうするナナシ?」
「なんで俺に聞くんだよ、お前のクラスの奴に聞けっての」
「あ、それもそうだね、どうするエルザ、あと……えっと……スズさん?」
「いいんじゃない?学園で身体も鈍ってきてそうだし」
「ボクもいいよ、ギルドには興味があるし」
黒髪のスズという女は友達ではないようだ。
さっきまで元気だったガリアやリーが黙ってフィーナ達を眺めているのを見るとクラスの連中もこうなんだろうなと同情してしまう。
しかしナーガという女だけが下を俯いている。
「……あ、ナナシさんナナシさん」
メアリーがコソコソと話しかけてくる。
「なんだよ」
「この子あれですよ、あの入学式の日にナナシさんにフィーナ様がなんとかって言って騒いでた子です」
「………あぁ、どっかで見たと思ったらあいつか」
道理で俺に素っ気ないわけだ。
フィーナが入ってきてから下を俯いているのも納得である。
「学園長、Bクラスは全員参加します」
「分かりました、AクラスとCクラスはどうしますか?」
「バンディット、どうするのだ?」
「あー興味はあんだけどな、今の授業を途中で投げ出すのはちょっと気が引ける」
「……相変わらず変なところだけ真面目ですね」
「ふむ、僕としてはギルドに参加してひと暴れしたいところではあったのだがな」
「ナナシは行かないの!?じゃあ僕もやめようかな……」
「え!?ちょっとフィーナ!?ナナシ、貴方も来なさいよ!勉強ならあたしも教えてあげるから!」
「……マジで?魔法も教えてくれんの?」
「……しょうがないわね」
「学園長、Aクラスも参加で」
「あ、Cクラスももちろん参加します」
「かしこまりました、全員参加でいいですね。後でギルドの方から使いの方がクラスごとに来ると思いますので対応は皆さんでお願いします。では話はこれで終わりです」
セレスがそう言うと生徒達はゾロゾロと学園長室から出て行く。
「ねえナナシ、パーティーはどうする?ギルドのパーティーは4人以上じゃないと組めないんだけど」
「あ、そうなのか?出来ればお前と組みたかったけどメンツ的にな。あ、ちょっと全員いいか?」
そこにいる9人でパーティーの話をする。
分かれるとすれば4人と5人、どうするかという話である。
「ナナシとフィーナ様は別の方がいいだろ、強いのは分けた方がいい」
「ならAとCはそのままでそこにBが分かれて入る感じでいいだろ。そこはそっちで決めてくれ」
「オレは正直あの黒魔法の中で動ける自信はねえし……それにあのナナシとかいうのは正直な……」
「僕もです、ナナシ君は危険過ぎます」
「……私は1人でいいよ、2人はCクラスの方に行って」
ナーガがそう言うとナーガがこっちに歩いてくる。
「……よろしく、ナナシ・バンディットくん」
「あぁ」
俺も仕返しとばかりに素っ気ない返事をする。
「うーん、出来ればナナシと一緒がよかったなぁ」
「文句言うなよフィーナ、それに男2人がそっちに行くんだぜ?仲良くなるチャンスだろ?」
「……そうだね!!それもそうだ!!よしみんな、早速ミーティングと行こうじゃないか!!」
俺がそう言うとフィーナは4人を連れてそそくさと歩いていった。
「おいナーガ、愛しのフィーナ様と一緒じゃなくて俺とでよかったのかよ?」
「……覚えてたんですね、クラスのみんなが慰めてくれたのでもうナナシくんを恨んでないですから。どっちかと言うとフィーナさんと一緒の方が気まずいですし」
「思い出したのはついさっきだけどな、でもアレは別に俺が悪いわけじゃないだろ」
俺がそう言うとナーガは顔を背ける。
「バンディット、貴様の知り合いか?」
「あーまぁな。フィーナに怒られたフィーナのファンみたいなもんだ」
「余計なお世話ですよナナシくん」
「まあまあ、これからは私たちもパーティーなんですから!仲良くしましょうよ」
そして俺たちもフィーナ達と同じようにミーティングのために適当な場所を探しに向かうのだった。




