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悪の勇者の異世界征服  作者: 東乃西瓜
最終章  悪と正義
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悪VS正義 毒蛇 前

 みんなは分かってくれるのかな。

 強くなれるのが楽しいって気持ちを。



 多分、弱かったことのある人じゃないと分からないんだと思う。

 強くなることに挫折した人じゃないと分からないんだと思う。



 体力はあんまりないし、筋力もない。

 魔力だってフィーナさんみたいにキラキラと輝くようなものでもない。

 少しはナナシくんみたいに気味の悪い魔力にはなったかなって思ってるけど。





 それでもやっぱり、私は普通に弱いんだと思う。




 ナナシくんみたいに人の心を壊しちゃうような魔力が羨ましい。


 ネザー様みたいに戦いながら相手の動きを読めるのが羨ましい。


 メアリーみたいに白魔法を使用不可にしたくらいで凄い力が手に入るのが羨ましい。


 ディーンさんみたいに英雄と呼ばれる強さの証明があるのが羨ましい。


 イツァム・ナーさんみたいに巨大な身体が羨ましい。


 魔王様みたいにたくさんの魔物を従えられるのが羨ましい。


 フィーナさんみたいにナナシくんを前にしても折れないような強い心が羨ましい。


 エルザさんみたいに化け物みたいな魔力を生まれた時から持ってるのが羨ましい。




 私にはまだ、強さなんてない。

 魔法の誓約をして、ようやく戦えるようになったくらいだもん。



 風魔法以外の赤魔法はもう二度と使えないし、白魔法や黒魔法は使えるとはいえ、誓約に差し出しても大したリターンを期待できない程度の魔法。




 それでも。




「19人目!!!!」



 私にも、戦える。



 強いみんながいるから、みんなを目指せるから。

 悪意も魔力も戦術も精神も全部。



 誰かを見習える。



 だから強くなれる。



 もっと、もっと。

 もっと、もっと、もっと。

 もっと、もっと、もっと、もっと。




 私の弱かった過去を、強くなれた未来で笑えるようになるまで。




 私はもっと、強くなる。






 -------だから






「邪魔だよ!!!!ディーン・ナイトハルト!!!!!!」




 私の経験の邪魔をしないで。

 私を強くしてくれるかもしれない人を私より先に殺さないで。



 その人は私が殺さなきゃいけないのに。

 その人も私が殺さなきゃ意味ないのに。



「ナナシくんの指示だ!!我慢してくれ!!」






「うるさい!!!!」




 …………ん?



 あれ?



 え?ナナシくんが?

 指示を?



 なんて?ナーガを助けに行けって?なんで?

 そんなわけない。

 だってナナシくんは私に言ったもん。



 強くなれるって。私のことを雑魚だって。

 そんなナナシくんが私が強くなるのを邪魔するわけないじゃない。



 だってきっとナナシくんは、もっと私に強くなって欲しいんだもん。

 私がいないとダメになるってくらい……あ、違う、これは私の願望だ。



 でもナナシくんだってきっとそう。

 自分がいなくても私がいれば大丈夫だってくらい、私に成長して欲しいはずなんだもん。





『先に死ね』





 嘘だ、そんなはずない。

 ナナシくんが私のことを見捨てるはずない。

 だってナナシくんは私を強くしてくれたんだもん。



 私のことが大事だから私の強くなりたいって願望を叶えてくれたんだもん。



 でも、じゃあ、なんで?

 なんでディーンさんがここにいるの?

 なんでここに来たの?



 ナナシくんの指示じゃないならなんで?

 なんで『勝手に』来たの?



 ナナシくんの邪魔をする気なの?

 なんで?ディーンさんだってナナシくんに救われたんじゃないの?



 ……ダメだ、私は思考力も弱いんだ。

 ううん、ダメ。

 ダメなんて言葉を諦めることに使ったら絶対にダメ。




「……ディーンさん、もう一回だけ言いますね。私の邪魔をしないでください」




「…………はぁ、了解。僕はナナシくんのところに戻るよ」




 よかった、分かってくれて。

 ディーンさんを殺さなきゃいけないところだった。






 ……ディーンさん、強いよね。

 あの人も殺せばきっと、私はもっと強く。




 ……ってダメじゃん。




 七つの大罪を従えてナナシくんは世界を救うのに。

 私は絶対、ナナシくんの邪魔はしない。

 ナナシくんのことを、私だけは絶対に裏切らない。



 死んだって、殺されたって。

 強くなれないまま今すぐ死ぬって言われたって。



 絶対、ナナシくんの側にいるから。





 ポタッ




「……あれ?」

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