ーモスティーニュ童話 眠れる薔薇の王子様?ー
むかしむかし ある王国の煌びやかな一室で
それはそれは とても可愛い王子が生まれました
誕生祭の席には近隣諸国に古くから住む魔導士が12人招待されました
魔導士達はその場にいた 王様やお妃様や従者達に眠りにつく魔法をかけてしまいました
みんなが眠ってしまっている間 魔導士達はとても可愛い王子に
“誰からも愛されず”“誰からも疎まれ”“災いを起こす存在”を呪いの種として植え付けました
10人目の魔女が「王子はこの国から一歩でも外に出れば魔物になる」呪いをかけました
11人目の魔導士が「王子が17歳になった時につむに刺されて死ぬ」呪いをかけました
12人目の魔女が呪いをかけようとしたその時
招待されていなかったはずの もっとも古く力の強い混沌の魔女が現れました
「お前達、よくもまぁ…ぬけぬけと。何処の国の差し金かはとっくにお見通しさ!今すぐ王子にかけた呪いを解くんだね!」
月の光にキラキラと輝く髪を靡かせて 混沌の魔女はスヤスヤと眠る王子を抱きかかえ魔導士達を一瞥しました
「この呪いは完成された呪いさ!いくらオルドローズと言えどこの呪いは解く事ができないよ!」
緑の魔女が言い放つと 混沌の魔女は一瞬でその魔女の首と体を切り離してしまいました
「うわぁ!!」
その場に集まった魔導士達は蜘蛛の子を散らしたように逃げ出そうと走り出しました
しかし 混沌の魔女の前ではなすすべもなく 既に10人の魔導士が息をしていませんでした
「お前。まだ呪いをかけていないんだろう?まだ完璧じゃぁないよね」
「くっ…“今すぐ死ね”!」
青い魔導士が混沌の魔女に追い詰められて 大きく手を振りかざし呪いの言葉を叫びました
「…残念だったね。お前より私の方が魔力は上だ。効くはずがないだろう」
混沌の魔女は青い魔導士を睨み付け 王子を抱いていない手を十字に切りました
すると青い魔導士は十字に切り裂かれ命を落としました
「っ…これは…」
混沌の魔女の十字を切った手がみるみるどす黒く変色していきます
「しまったね…」
混沌の魔女は小さく舌打ちをすると 変色していく手で指をパチンと鳴らしました
するとすっかり眠ってしまっていた王様やお妃様や従者達が次々と目を覚ましました
「うわぁぁぁぁ!」
「きゃぁぁぁぁ!」
誕生祭の宴の席は真っ赤な血に染まり 人々の悲鳴が轟きました
「うるさいね…あんた達の王子はこいつらに呪いを受けた」
「なっ…」
王様は王子を抱えている銀髪の魔女に怯えています
「王子はこの国を一歩でも出れば魔物になるそうだ」
「えっ…」
「そして17歳でつむに刺されて死ぬんだとさ」
「なんと言うことだ!!」
王様は魔女の言葉に愕然としました
「何としてもこの呪いを解く方法を見つけてみせる。それまでこの王子を殺すんじゃないよ」
魔女は片腕に抱いた王子を王様に返すと 雲に隠れて月もない暗闇に消えていきました
-モスティーニュ童話 眠れる薔薇の王子? 第一幕-