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第1話 「魔王ルシフェル降臨」



 あれからゲーム内時間で2日が経った。今、私はある村に居る。

 セイクリッド・サンクチュアリから少し遠くに離れた場所にある平凡な村。

 そこの人たちは皆優しく始めて村に訪れた私やアーサーを優しく受け入れてくれた。

 しかし、その村にはダークネス・アンダーワールドのゴブリン達の侵略に日々怯えていた。


 昼頃、私は恩返しに村の人たちを守るため村の周囲のパトロールに出ていた。


「この辺りにゴブリンはいないようね」

「そのようですね。どうしますかマスター?」

「一旦村に戻ろうか。多分そのうち向こうの方から来てくれるだろうし」

「わかりました!」


 今のところはゴブリンは居ない。もうちょっと詳しくダークネス・アンダーワールドのこと調べておけばよかったな……。


 ログアウトは出来ない。ゲーム内時間は現実世界とは異なって、現実世界の約360倍の速さで経過していく。

 つまり現実世界の一分はこの世界では六時間。今は気長に向こうから来てもらうのを待つしかない。


 私達が村まで帰ろうとした時、何かが動いたような音がした。


「マスター」

「何か音がした。敵か?」


 物音がした場所まで恐る恐る近づいていく。森の中を入っていくとそこではうつ伏せで倒れている一人の男が居た。


 こんなとこで寝てるなんて……。何者?

 見た感じだとプレイヤーっぽくはないけど。


 私はその男に近づき、ほっぺを数回叩く。

「お〜い。大丈夫?」

「…………」


 反応はない。これはかなり奥深くまで眠りについている……。

 仕方ない。あれで起こすか。


「アーサー。聖剣になって」

「え……?」

「いいから」


 アーサーは戸惑いながらもエクスカリバーへと変化。私はエクスカリバーを握りしめ、男の腹部に軽く刃先を乗せる。


「衝撃……!!」


 私がそう唱えると、電気ショックのような衝撃が男を襲う。

 剣を地面に下ろすと。


「な、な、なんだ!?」


 男は慌てて起き上がる。

 起き上がるとその男にはコウモリのような羽と如何にも悪魔のような尻尾があった。

 男が私に気づくと寄ってきて私に言う。


「今のはてめぇか!!」

「こんなとこで寝てるアンタが悪い」

「なんだとぉ〜!!」


 喋り方からするに間違いなく脳が筋肉で出来ている感じだ。

 その脳筋男が続けて言う。


「オレはな!…………オレ何でこんなとこ居るんだ?」


 ほら、やっぱりバカじゃん。


「てめぇ!今オレのことバカって思ったな!?」


 何コイツ心に読めるのかよ!

 とにかく何者なのか確認しないと。敵意があるなら殺すしかない。


「そんなことよりアンタどっから来たの?」

「ダークネス・アンダーワールドって知ってるか?オレはそこにあるでっかい城から来た」


 ダークネス・アンダーワールド!?やっぱり敵か!!

 地面に下ろしていた剣を再び構える。


「待て待て!オレは別に戦いに来たんじゃない!」

「アーサー、信用できる?」

『無理ですね』


 アーサーの返答を男が聞くと慌てて言う。


「わかったわかった!話をしよう!話を!な?な?」


 あまりの必死さが伝わった為、私は聖剣をキーホルダー状に戻す。

 それを確認すると男はその場であぐらを組みながら話す。


「オレの名前はルシフェル。まぁ自慢じゃねぇけど、魔王様だ。どうだ凄いだろ?」


 魔王ってこんなにバカっぽい雰囲気なの?なんかもっと怖いイメージあったけど。


「ちなみに言うと、オレはこのゲームのラスボスってやつだ」

「ラスボス?嘘でしょ……」

「ホントホント。ほら、ステータス見たらわかるだろ?」


 私はルシフェルと名乗る男のステータスを見てみた。


【クラス】ERR

【HP】123000

【STR】216000

【AGI】175000

【VIT】106000

【DEX】360

【INT】23

【MND】135000

【CRI】21200


 っ……!?ERR!?何この化物並のステータス!?っていうか器用さが死んでる。それよりも知恵がもっと死んでる。23って数字始めてみたかも。


「確かに器用さと知恵以外は私達何かより遥かに上ね」

「だろ?けどな〜……誰も城に来ねぇもんでさ。退屈で仕方なかったんだよ」

「それでここに来たと?」

「来たくて来た訳じゃねぇ〜よ。何か光る魔方陣出したらここに来たんだよ」


 あ〜……。転移先見ないで来たわけか……。ステータス通りのバカだ。


「けど外に出た途端力が抜けちまってよ。それで、ここで寝てたってわけだ。どうだ?これでいいだろ」


 ここまで知恵が低いんじゃ信用性があるというか。

 私はルシフェルに確認をする。


「つまりアンタは退屈しのぎで外に出たのはいいけど力が何故か抜けてここで寝てたってわけ?」

「あぁ。その通りだよ。何かやる気っていうか……力が出ねぇんだよな〜……」


 もしかしたら……。

 私はもう一度ルシフェルのステータス画面を開く。すると、そこには……。


【状態異常】虚脱感


 虚脱感?こんな状態異常まであるのかこのゲームは。

 でもこんな状態異常どうやったら解除出来るんだ?

 私はその場で腕を組んで数分考えた。



 そしてあることを思いついた。

「ねぇ魔王様!」

「なんだよ」

「魔王様って闘うのとか好き?」


 そう聞くと突然やる気が出たのか勢いよく立ち上がるルシフェル。


「当然だ!闘ってる時が一番最高な気分になるんだよ!」


 やっぱり。ならせっかく契約用のキーホルダーも一つ余ってるし、一か八かやってみましょうか!


 私はルシフェルに銀色のキーホルダーを見せながら言う。


「なら、私と精霊契約しない?そうしたらきっと……いや、絶対たくさん闘えると思うよ?」

「何っ!?それはホントか!?」

「ホントホント!どう?」


 するとルシフェルはキーホルダーを持っている手を握りしめる。


「いいぜ、やってやろうじゃねぇか!」


 そう言うといつもの画面が現れる。

〘魔王ルシフェルがあなたとの契約を望んでいます。契約しますか?〙

〘YES〙〘NO〙


 迷わず〘YES〙を選択。

 するとルシフェルの体がアーサーの時と同様に粒子となってキーホルダーへと吸い込まれるように入っていく。

 全ての粒子が入るとアナウンスが入る。


〘魔王ルシフェルとの契約を完了しました。これより精霊へと転生を開始します。容姿と声を設定してください〙


 いつものやつですね。でもなんかあのままで良いような気がする……。

 そう思うと突然アナウンスが入る。


〘容姿と声の設定はスキップしますか?〙


 えっ?スキップできるの?

 ならもうこのままでいいや。


〘容姿と声の設定をスキップしました〙


 ルシフェルの魂が宿ったキーホルダーを見てみると……。


『おいおい!なんでオレだけこのままなんだよ!なんならカッコイイ容姿に変えてくれよ!』

「なんかアンタは多分そのままが一番しっくりくるよ。……うん」

『そ、そうか?ならいいけどよ……』


 なんか照れてるし……。

 まぁとにかくこのゲームのラスボスGET!!っていうか精霊契約しちゃってもよかったのかな?

 まぁいいか!

 その後、ルシフェルのステータスを確認すると状態異常も綺麗さっぱり消えていた。どうやら本人のやる気がなかっただけなのかもしれない。


 私はルシフェルの魂が宿ったキーホルダーを手に気分良くスキップしながら村へと帰っていく。






□とある電脳空間


 ここは運営関係者のみが入ることのできるエリア。

 ここで日々プレイヤー達のプレイ状況や何か異変がないかを監視している。

 しかし、今回は何やら運営関係者も慌ただしいようだが。


「馬鹿なっ!!よりにもよってあのルシフェルが精霊契約しただと!?計算外だ!!こんなことあるのかぁ!!状態異常も付けたというのに……」

 ルシフェルを作り出した管理者Aが精霊契約した場を見て驚きを隠せずに怒鳴り散らかしていた。ちなみに怒りっぽい。


「だからあれほど管理を怠るなと言ったのだ」

 それを叱る管理者B。常に冷静沈着だがちょっと変なやつ。


「それにしても最強クラスのNPCを仲間に引き入れるなんてあの女の子ただもんじゃないわね」

 横になりながらせんべいを食べてる管理者C。リアルでは女性だが、私生活はズボラで部屋のあちこちにゴミが散乱してる。


「それにしてもセイクリッド・サンクチュアリの騎士王アーサーの次は魔王ルシフェルを仲間にするとは。このへんで何か大きなイベントをやって彼女の強さを見てみなくてはならないかもな……」

 如何にも勤勉そうな彼は管理者D 。このゲームを開発した最高責任者でVRマシンを開発したのも彼である。四人の管理者の中では一番マトモ。


「ならば!魔王討伐戦というとはどうだ!?」

 管理者Aがデカイ声でイベントの内容を提案する。


「また魔王を作るのか?しかし、魔王討伐戦か。確かに面白い提案かも知れないのだ」

 管理者Bは珍しく管理者Aの提案に乗る。


「私は何でもいいわ〜。おとなしく見守りま〜す」

 管理者Cはやる気がないのでほっときましょう。


「では初となる第一回イベントは"魔王討伐戦"で決定する」

 管理者Dはそれを決定すると、早速そのことを公式サイトへ掲載。

 その後、プレイヤーにも通知を送った。


「さぁマリナよ。君の力存分に見せてもらうぞ」

 管理者達はどこか不敵な笑みを浮かべる……。




 村へと戻ってきた私。

 とりあえず夜になるまで村で楽しく過ごすことにした。


 そしてあっという間に夜になる。

 そして遂に……。


「ゴブリンだぁ!!」


 村の市民が慌ててこちらへ走ってくる。

 待ってましたと目に涙。さて、恩返しをしましょうか。


 私は村の外へ出る。その先には百体ものゴブリンが群れを成してこちらへ歩いてくる。


「来たな……」


 戦闘準備のためアーサーの魂が宿ったキーホルダーを手にしようとした途端。


『ちょっと待ったぁぁぁ!!』


 魔王ルシフェルが大きな声で私に叫んだ。

 何!?今忙しいんだけど!!


『こんなにたくさんの敵が居るんだ。今回はオレにやらせろ!』


 大丈夫なの?


『あったり前だ!オレ様に任せておけ!』


 しょうがないな……。村には被害出さないでよ。

 私は呆れた表情をしつつもルシフェルのキーホルダーを選択し、呪文を唱える。


「ルシフェル、契約(コントラスト)融合(フュージョン)!!」

 呪文を唱えると魔方陣が私を包み込む、頭部から角が出現、手足の爪が伸び、腰部からは悪魔のような翼が出現。

 服装も別の衣装に変化。

 目には血涙のような紋章が浮かび上がる。


 契約(コントラスト)融合(フュージョン)完了!

 ステータスには《ダークネスディストラクション》と表示されていた。恐らくこの形態のことだろう。

 その姿は聖騎士ではなく、魔王そのもの。

 しかし、意識がルシフェルと入れ替わった気がした。



「よっしゃ!久々に暴れてやるぜ!!」


 あれ?どうなってるの!?


「悪いなマスター。オレの場合だとこうなっちまうらしい」


 どうやら私の意識とルシフェルの意識が逆転した様だ。

 つまり今は見た目は私の姿だが、中身はルシフェルと言うことになる。


 たくさんのゴブリンを見てルシフェルは言う。

「おぉ〜お!たくさんいるじゃねぇか。これは暴れがいがあるぜ!」


 そう言うと右手から魔方陣が出現し、そこから一本の剣が現れた。


 何それ?

「魔剣だ。魔剣レーヴァテイン。オレの一番使いやすい剣だ!」


 ルシフェルがそう説明すると、ゴブリンの軍勢目掛けて突っ走る!


「行くぜ行くぜ行くぜぇぇ!!」


 ゴブリン達も私達に気付いたのか突撃してくる。

 突撃してくるゴブリンを次々と魔剣で斬っていくルシフェル。

 あっという間に十、二十とその数を減らしていく。


「ナンダアイツハ!?」

 ゴブリンもルシフェルの余りの強さに驚く。

 そりゃそうだよね、魔王だもん。


「ヒルムナ!イッキニイケェェ!!」

 ゴブリン達は村ではなく一斉に私達の方へ向かってくる。

 一斉に来たけどどうすんの!?


「心配しなさんな!」

 ルシフェルが魔剣を強く握りしめる。

 すると赤黒いオーラを魔剣が纏う。


「行くぜ、オレの超絶カッコイイ必殺技!【災厄の(デザストル)破壊(カタストロフィー)】!!」


 その言葉と共に魔剣を一閃に切り裂く!

 すると周りに居たゴブリンの上半身と下半身が分離し、そのまま血を吹き出したまま地面へと落下。


 斬り終わると魔剣は煙を上げていた。

 凄い……。一撃でゴブリンの群れ全部倒すなんて。

 もう感心した。


「決まったぜ。やっぱオレってカッコイイな〜」

『全く、戦い方が荒すぎる』


 アーサーがルシフェルの戦い方に苦情を入れる。


「うるせぇ。騎士王様と一緒にすんじゃねぇよ。オレはカッコ良く戦うことを心情にしてんだ」


 ま、何であれこれでもう二度ここにゴブリン共は来ないだろ。

 っていうよりゴブリンってアンタの配下じゃないの?


「あ?確かにそうだけど」


 倒して良かったの?

 普通に疑問だった。同じダークネス・アンダーワールド出身同士が戦うなんて普通ありえない。


「別に侵略とか興味ねぇよ。ただ戦いだけだ。相手は関係ねぇ!同じ国家の魔王だろうと何だろうと敵なら倒す。それだけだ」


 なるほど。アンタらしいというか何というか。

 て言うかそろそろ融合解除してくれませんかねー?


「はいはい。わかってますよっと!」


 契約融合は解除され、意識が再び逆転。

 どうやらちゃんと戻れたようだ。


 契約融合……。初めて使ったけど結構面白いかも!

 私がそれにワクワクしていたとき、運営から通知が届く。

 開いてみるとそこには第一回イベントについて記載されていた。

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