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第二話

 

 帰り道、近所の大型スーパーに立ち寄るふたり。背高の男性は入口手前の買い物カートを片手で握ると、そのまま猫背の女性に預ける。



「いやぁ、上司に悪い事しちゃったかな? 隣の部署、何か大変そうだったもんねぇ」



 言葉の割りに、悪びれる様子もなく語りかける背高の男性。猫背の女性は買い物カートを押しながら毒づく。



「死なせとけ。あんな糞上司。何時も三徹五徹させやがって……」



 猫背の女性は、既に丸い背中を更に曲げ不満を漏らし続ける。



「第一、何で私達が他部署の尻拭いをしなければならねえんだ? 自分のケツぐらい自分で拭けってんだ。糞が」



 背高の男性は無言のまま猫背の女性の頭を撫でると、猫背の女性は頬を染め、素直にこう言った。



「……もっと撫でろ」


「君が落ち着くなら……」



 背高の男性は猫背の女性の頭を撫でながら、スーパーの中を歩き回る。



「……で? 今日は何を食いやがんだ? さっさと決めやがれ。タコ」



 その質問に背高の男性は、顎に左手をあて、腰に右手を添えながら答える。



「そうだなぁ……美味しいもの?」



 次の瞬間、猫背の女性は買い物カートを感情の赴くまま背高の男性にぶつけ、意想を表す。



「私の振る舞う料理に不味いもんがあるってのか!? あと、勝手に撫でんの止めんな!!」


「……ご……ごめん、ごめん……」



 背高の男性は左脇腹を擦りながら、再度猫背の女性の頭を撫で始める。

 鼻の穴から、幸せそうに息を吐き出す猫背の女性。


 ふたりは、その足で鮮魚コーナーに向かい、蛸や烏賊を見て回る。



「結局の所、何が食いてえんだ? 早くしねえと島流しにすんぞ。塵が」


「……そうだなぁ……それじゃあ……」



 右手を顎にあて、思案に暮れる背高の男性。今度は猫背の女性の頭を撫でるのを止めない。



「激辛ラーメンにしようか?」



 その言葉を耳にした瞬間、猫背の女性は買い物カートを全力で背高の男性にぶつける。



「てめぇ、コンクリで埋められてぇのか!? 私が辛いの苦手なの知ってんだろ!?」


「……うぐ……悪ふざけ……し過ぎました……」



 呻き声を上げながらも背高の男性は、猫背の女性の頭を撫で続ける。



「今度言ったら、くびり殺すぞ!?」


「悪かった……悪かったってば……ね……?」



 暴言を吐き続ける猫背の女性。背高の男性から背を向ける様に買い物カートを回すと、不機嫌そうに声かける。



「……で? 何の激辛ラーメンにすんだ?」


「……別に、無理しな……」



 と、背高の男性は途中で口をつぐむ。



「何時ものが良いな……」


「……次は無ぇからな……」



 ふたりは、赤い袋で三個入りの激辛ラーメンと、それに入れる野菜、数種類を買い物カートに入れ、会計に向かった。


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