お似合いな程に最低
「脅してるん?」
俺は内心焦りながらも、その心中を探った。
「もう、ここまできたら好きとかやなくて、後に引けなくなっとるだけやろ?自分。」
「仮に、俺の事情…過去をバラしたとして、御坂さんに何の得があるん?よかったら教えてくれへん?」
多分、普通に嫌がらせやと思うけど。
「困るかな…と思って。嫌なら、付き合ってよ。」
案の定や
最低すぎて清々しいわ
それならこっちも、それなりの態度をとらせてもらうで。
「ホンマに性格悪いな。人、助けたこと、初めて後悔したわ。そんなんで本気で付き合うてもらえる思ってんの、頭沸いてるんちゃうか?脅しとか…人として、あかんやろ。」
「俺、嫌いな人とか今までできたことあらへんけど、御坂めぐみ。お前の事は確実に好きにならない。」
「嬉しい」
「丈翔君の、特別になれたって事?だよね?そう受け取っていいよね?」
「…もち…い…じゃ」
「え?」
「気持ち悪いんじゃ、お前。ええかげんにせえよ。俺やって人間やねん。もうお前と話したない。とっとと消えてくれ。」
「今の、録音した。」
「は?」
「これ聞いたら、学校の皆さんどう思うかな?」
「今まで完璧を演じてきたんでしょう?尚更ショックが大きいんじゃないかなぁ?」
絶句。
こいつ、俺の弱点完全に把握しておる。
何やねん。ホンマに俺の事好きなん?
久々に歪みに歪んだ愛情を向けられ、俺はただ呆然としていた。
いや、両親のは愛情ですら無かったけど。
否、必死に頭を回転させた。
ここは付き合っておいて、後で考えんねや。
この秘密だけは、絶対に誰にも…
「分かった、付き合う。でも覚えとってな。俺はお前を好きにならない。絶対に。形だけでええんやったらそれは勝手にせえ。」
「絞りかすのお前に対する情をかって、アドバイスしてやる」
「最後まで、お前が傷つくだけやで。」
「いいの。これで私のものだもん。」
二年生の文化祭の日、俺には狂ってるとしか思えない彼女ができた。
俺は、こうやって人に支配される運命なんや。
今も昔も。
…違う。分かってんねん。
ホンマは運命なんかやなく、弱くて流されがちな自分が原因やと。
環境が変わっても、状況は変わらへんのや。
俺はそういったもののせいにでもしないと、何かが爆破しそうやった。
自分次第。
いつも言っていた、座右の銘のような、俺の考え方そのもの。
今はそれさえ失っていた。
嫌われてもええ。
それを体現して、今もなお続行中の奈良橋を
俺は心からうらやましいと思ったんだ。
閲覧ありがとうございます。
丈翔の話は今回はこれでおしまいです。
次回は、奈良橋サイドの現在に戻ります。
よろしくお願いします!
黒川渚