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最悪な第一印象








「丈君、丈君!前に丈君がやりたいって言ってたゲーム買ったんだよ!丈君今日僕ん家こない?」


一個のカギカッコで何回丈君言うねん。


入学して、三ヶ月が経つ頃には、奈良橋は完全に俺に心を許していた。

うーん。嬉しくないわけやないけど、正直めんどくさい。

今まで、浅く広くな人付き合いをしてきたこともあり、俺は予想外の展開に頭を悩ませていた。


大人しめな子は、大体大人しめの子と仲良くなる。

俺は、取っ掛かりにはなるにしても、こんなに懐かれたことは今まで無かったから、自分でもびっくりしている。

いや、無いことも無かったけども、そういう奴は他と関わりを持たせて、そいつの世界を広げて本当に合う奴と仲良くなるよう仕向けるんやけど…。


最初は、奈良橋にも同じ対応を取った。

が、一向に話さない、関わらない、興味をもたない。

俺といるときの楽しそうな顔を見ると、人間嫌いでは絶対無いはずなんやけど。


こうなってくると、俺から離れるしかないんやけど。

基本、一定のやつと一緒に居たないねん。

人に執着したない。されたない。

「奈良橋、A田とかゲームめっちゃ詳しいねん。絶対合うと思うんやけど、今度三人で遊ばん?」


「いい。僕は丈君とやりたくて買ったんだよ。…僕といるのが嫌なら、無理には誘わない。」


悲しそうな顔でそう言われると、弱くなる。


「奈良橋がそう言うんなら、誘わんけど…。でも俺今日バイトやねん。明日は休みやから、明日やろうや。」


これでも仕送り一切無しでやってるんでな

結構大変やねん。

平日三回のコンビニと土日のウェイターで、俺は生計立ててんねや。学校行きながらなかなかハードな生活やでホンマ。

物欲ないから、貯金も結構できとるけどな。


「…そっかぁ。一人暮らし楽しそうって思ってたけど、そこらへんは大変そうだよね。すごいな、丈君は。」


「まあ、気楽っちゃ気楽やけどな。…自分次第なんちゃう?俺は今の生活、リスクもあるけど、今までで一番充実してんで。」


自分がいない者とされている家におるより、よっぽどマシや。マシマシや。


…とにかく、そんな感じで奈良橋とは何だかんだずっとおる。

俺は俺で、他の奴とも連むけどな。

…奈良橋は寂しそうな顔でたまに見てくるけど、俺の人生や、そんなん関係ない。

でも、何故か、俺は奈良橋だけには敵わない。

というかさっきも言うたけど、ホンマ弱なる。


何でやねん。


そんなモヤモヤを常に抱えながら、俺は高校二年生になった。










「丈翔くん、好きです。一目見たときから気になってました…付き合ってください。」


もう何回目か分からん告白。


一年の夏に遂に十人目を迎えたときから、数えるのをやめた。

大阪に居たときも、告白は何回かされた事はあんねんけど、自分で自覚できる程に、こっちに来てから異様にモテる。

モテ期きたか?と考える暇も無いくらい告白される。

最初はあまりの数に、ドッキリかとも思ったけど、顔を見れば大体分かる。


冷やかし、というか本気やない子もおるけど、ホンマに勇気を振り絞って告白してくれる子もおった。

やから、俺も真摯に受け止めて真面目に答える。


「ごめん。今は誰とも付き合えない。恥ずかしいけど、バイトとか忙しくて…恋愛考える余裕ホンマにないねん。でもありがとうな。」


「えっ全然いいよ!私、会えなくても大丈夫なタイプだから。むしろ大変だったら尚更、力になりたい!」


ん?

遠回しに言うてしもうたかな?


「えっと…◯◯高の…御坂さん?やったっけ?ごめん、君のことあんまりよく分からんし、ていうか初対面やし、付き合うのは、絶対、無い。」


俺はハッキリとお断りした。

これでほとんどの子が諦めて立ち去る。

キツイようやけど、諦めてもらうためやし、この子のためにもそのほうが絶対ええ。


「試しに付き合ってみるっていうのはどうかな?辛いとき誰か側にいたら、紛れるし…。今は好きじゃなくてもいいから、私のこと知ってもらいたい。」


しつこいなこの子。

俺は改めて御坂めぐみと名乗った女子を上から下まで見た。

驚くことに普通に、いや結構なレベルで可愛い子やねん。その容姿なら男に困らないんちゃうん?

とか、下世話なことを考えてしまう。


「じゃあ、友達からってことでええかな?」

もう帰りたい。


「友達じゃなくて、彼女になりたいの。私、丈翔君に告白する為に今日の文化祭来たの。」

「私、丈翔君の好きなタイプの子になれるように、頑張るから…!ずっと好きで…お願い、付き合って。」


涙ながらに御坂めぐみは訴える。



いや、怖いよ普通に。

俺にとっては初対面やし、話したこともないのに、俺の何がそんなに好きやねん。


「初めてじゃないよ、会うの。」


「え?」


「私のパパ、引越し屋。御坂引越しセンター。」


あ。

その会社名は聞き覚えがある。

大阪からこっちに来るときに使った、個人経営の引越し業者や。


「私と同い年なのに、しっかりした子だったって言ってた。…いろいろ抱えてる子だとも。引越し作業も少し手伝ったんだよ。それから気になってて、偶然電車で再開したの…覚えてない?」


ごめんやけど、君の事は全然覚えてない。

ああ、そうやった。もう会うこと無いと思って、大阪からの長い道のり、その君のお父さんとやらには、いろんな話をしたんやった。

ていうか、俺の個人情報。プライバシーの権利はどこいった。


「一年のときの△△高の文化祭に行く電車で、痴漢にあったの。」


あぁー…思い出した

ちょうどその瞬間を目撃したから、エロおやじ注意して、追い払ったんやっけ。

君だったんやその時の女子は。


「本当に嬉しかった。そのあともさりげなく後ろにいて、守ってくれて。友達はキャーキャー騒いでるだけだけど、私は違う」

本当に好きなの。と御坂めぐみは少し顔を赤らめ、さらに真剣に言った。

でも。


「気持ちは嬉しいねんけど、ホンマごめん。俺が君の事を付き合えるほどに好きやない。…多分これから先も、ない。」


もう、こうなったら最低な奴になるしかない。


「あの時、友達とおったやろ?JKにモテたくてやったことやねん。」


「それでもいい。好き。」


やっば。全然引かんやん。

むしろ俺がドン引きしとるくらいやわ。



「とにかく絶対無理。あ、父ちゃんから聞いた話は他の子にも言うたん?」


さっきから俺の意識はそっちにあった。

それは、俺が今日まで必死に、ひた隠しにしてきた事実やから。


「言ってない」


「じゃあ、これからも言わんといてくれ。聞いたんなら気持ち、分かってくれるやろ?頼むで。」


そう言って、背中を向けて帰ろうとしたけど、それは次の一言により、失敗に終わる。
















「付き合ってくれないと、バラす。」





「は?」





まあまあ最低な提案に、俺はびっくりして振り返ってしまった。






閲覧ありがとうございます。


次回で丈回ラストです。

よろしくお願いします。


黒川渚

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