何度も夢で抱きしめた
あれから早いことに一か月がたった
あの後御坂は「もう二度と関わらないで」と言い捨てて僕の前から立ち去った。
何度も電話やメールをしたが、着信拒否設定されてしまったので、連絡の取りようがない。
自宅、つまり僕の家まで行ったが…母に追い返されてしまった。
「あなたみたいな子と、うちの子はやっぱり釣り合わなかったわねぇ。…あなたに浮気されたって落ち込んでるのよ、男のくせにダラシないわよねぇ。でも、今はそっとしておいてあげて?」
そんな事になっているのか
僕は黙って帰るしかなかった。
僕はあの日から満足に眠れなくなっていた
やっと寝れたとしても、悪夢で目が覚めてしまう。
寝ても覚めても地獄だった。
それでも何とか今日までやってこれたのは、事情を一切知らないのに、励まし続けてくれたミポリンのおかげだった。
僕はあれから御坂の演技をする余裕など全くなく、学校に行っても抜け殻のようにただ机でじっとしていた。
そんな僕に唯一、今日まで話しかけてくれたのは、ミポリンだけだった。
御坂、お前、こんなにいい友人がいるのに、本当に勿体ねえよ。
「さっ、明日は待ちに待った△△高の文化祭だよ!メグメグも丈翔君狙いだったよね?二人で癒されに行こ!」
「そうだね…じゃあまた明日。」
…
帰り道
僕は下半身に違和感を感じた。
何か温かいものが落ちてくるような…
不快な、感覚
下腹部の鈍痛。
僕は早足で家に帰り、すぐに確認した。
血
僕は一瞬血の気が引いたが、次第に理解した
生理だ。
「うわ…」
初めての経験。当然だ。
男として生まれてきた以上、ある訳がない。
僕は下着を洗いながら、何だか情けなくて涙が出た。
…
次の日
つまり文化祭当日。
僕はお腹が痛くてたまらなかったが、ミポリンが待っているので行かないわけにもいかず、軽く準備をして家を出た。
「メグメグ!…っていつもに増して顔色悪いよ。生理?」
「…うん」
女友達っていうのは互いの生理周期を把握しているのか?
「体調、大丈夫?今日…やめとく?」
「いや、大丈夫。行こう。」
僕は強がりを言って歩き出す。
ミポリンの心配そうな顔に少しだけ、残念そうな表情が隠れていたからだ。
それに、僕も会いたい人がいる。
「辛くなったら言ってね?」
ミポリンはまたもや僕の身体を気遣ってくれた。
いや、ミポリンが心配しているのは、僕ではなく御坂なんだけど。
「ありがとう。」
僕達は電車とバスを乗り継ぎ、△△高に着いた
「め、メグメグ、着いたよ…聖地についたよ!」
分かりやすくテンションが上がるミポリンだった
「えっとー、丈翔君がいるB組は…」
クラスまで把握済みですか…ミポリンは貰ったパンフレットを早速開いた。
僕は、一か月前にはもう準備が始まっていたので知っている
「たこ焼きだね!」
そう、たこ焼き。
関西生まれの丈君の一押しにより決まった。
まだ一か月前の事だというのに、とても昔の事のように思えた。
「よぉし、早速行ってみよう!」
僕は緊張していた。
丈君に会うこともだけど、それより…
B組ということは、自ずと
「きゃあ!丈翔君、発見!」
ミポリンが指差す方へ目を向けると、いた。
そして、その隣には。
僕が目撃した先には、二人隣り合って仲良くたこ焼きを焼いている姿だった
丈君と僕…の姿をした御坂。
そうだ、僕と丈君は全て同じ時間割だった。
分かってはいたが、どうしても、目の前の現実が直視できなくて目を逸らそうとした瞬間。
叫び声に反応したのか、丈君がこちらを見たので、僕はバッチリ目があってしまった。
僕はその先を覚えていない
覚えていることといえば、たこ焼き屋の周辺にいた人達の騒めきだけだった。
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次回もよろしくお願いします。
黒川渚