僕の無駄な自白
「何、奈良っちそんなの信じてるの?そんな訳無いじゃん、非科学的だよ。」
「非科学的とかお前に言われるとなんか腹立つ」
じゃあ、他に何か方法があるって言うのかよ。
僕は今藁にもすがる思いだと言うのに。
「ていうか、もしその話が本当だとしたら、奈良っちは、あーしになりたかったと言うことになるけど、それはどう説明がつくのかな?」
どうせ馬鹿にするような顔をしているのだろうと、顔をあげたら、御坂は思いのほか真剣な表情をしていた。
しまった。
完全に墓穴を掘ってしまった。
いいや、変に言い訳するよりも正直に話したほうが、後々楽だ。嘘はどうせばれるし、…もう叶わない願いだしな。
「僕は君と入れ替わりたかったんだよ」
「丈君の彼女の君が、…羨ましかった。」
「は?」
御坂は今まで見せたことないような顔で僕を見た
「意味わかんない。どういう事?」
「僕は…丈君のことを恋愛対象として見ている。」
「あ、そうなんだ、そういう事。」
御坂は妙に納得といったような表情で、しかしながら怒ったような声で僕を責め立てた
「じゃあ、願い叶ったんじゃん?おめでとう…なんて言うと思った?普通に気持ち悪いんですけど。」
冷たい口調が僕の胸に突き刺さる
「僕もそう思うよ。諦めようとしても…やっぱり無理だった。」
「でも、願いは叶っていない。」
「叶ったじゃん!」
「だって君達は仮面カップルじゃないか。それにそれがなくとも、僕自身じゃないと意味ないって気づいたんだ。」
「何それ…」
御坂は心底軽蔑したような顔で僕を見る。
「それでどうなの?」
「はぁ?何が?」
「さっきの質問。まだ答えてないよね。その方法が本当だと仮定したらでいいから教えて。」
僕は包み隠さず話したんだから。
「そんなの、形だけの遠い彼女より、近い親友の方がいいと思ったからに決まってるじゃん。それ以外理由ないっしょ。」
「そうか…」
御坂には御坂の悩みがあったんだな
事情を知っているだけに、なんだか複雑な気持ちになった。
「じゃあさ、この入れ替わる方法に今のところお互い全部当てはまっているみたいだからさ、ちょっと試しにやってみようよ。」
「ちょっと待って」
「ん?」
「私達は仮面カップルだけど、私、ジョーカと付き合ったままだよ。だからそれは成立しない。」
確かに。でも…
「そう思ったら…という事は、実際に振られなくても、思ってしまったらそれは同じ事なんじゃないの?」
僕だって振られた訳じゃないし。
「付き合い始めてから、そう思ったことなんて、一度もない。」
ここに来て振り出しに戻るか…
本人が言うんだから、それは間違いないよな。
「それに」
「ん?何?」
まだ何かあるのかと僕は再び耳を傾ける
「私、元に戻りたくなんてないから。」
「は?」
「何言ってるんだよ!冗談だろ?いくらなんでもこのままはキツイって!御坂だって、今の身体じゃ不便だろ?…それに、家族や友達はどうするんだよ。その身体じゃ、もう不可能だぜ、特に家族とは永遠に…」
「私、言ったよね?」
「丈翔と一緒にいられることが幸せって。」
言った。確かに昨日言った。
でもそれは、言葉の上だけの…
「本気だから。」
僕は絶句した
どうしようもない、焦燥感と絶望感に襲われる。
「明日から、私は、奈良橋裕貴として生きる。」
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黒川渚