心と花
出会い
放課後いつものように、部活に行く人や友達と遊びに行く人それぞれの生活が始まる。僕は誰とも話さず学校を後にした。俺が通うのは私立偏差値低いよ高校だ。県内では有名な進学校である。
もちろん嘘だ。僕の希望は私立偏差値高いよ高校に受験し落ちた。滑り止めのために家から近いところに現在は通っている。どうしてこうなったのかなぁ。
周りを見ていても意識の低さに影響を受け、僕も最近は怠惰な生活をしている。
通学路を帰っていると、ダンボールの中に白猫がいた。猫はよく見ると、顔に黒い斑点がある。猫はつぶらな瞳で、ジッと僕を見ている。
しばらくその場で立ち尽くしていると、みんな猫を見て見ぬ振りをして過ぎ去っていく。この白猫を見るとなぜか懐かしいような気分になる。ここで、手助けをしなければならないと何か脅迫観念のようなものを感じる。
「捨てられたのか?」と聞いてみると「にゃー」とだけ鳴いた。僕は放っておくができず、猫を抱え家路についた。
15分ほど歩くと僕の家に着き、びしょ濡れになっている猫を拭き終える。
「これからここがお前の家だよ」
『ここがお主の家か…ちと小さい家に住んどるの』
ん?僕以外いないはずの家から聞こえるはずのない声が聞こえた。
『ここじゃ!ここ!』
声のするほうを見ると猫しかいない。んん!?
『そうじゃよ。ワシじゃよ』
いやワシと言われても。名前はなんて言うの?
『猫神じゃ、なんじゃもう少し驚くと思っていたのじゃが意外と冷静じゃな』
昔から霊感が強かったからね。ただ、猫の幽霊は初めてだよ。
『馬鹿もん!幽霊ではないわ、神様じゃ!』
それで神様がなんで、こんな所にいるの?
『…本当に信じているのか?それはじゃな、天界で少々問題がおこっての…』
歯切れの悪い言い方だな。
『うむ、それがじゃな…ワシのミスで起こってしまったんじゃ。それで罰として天界から追い出されたのじゃ』
それはまた大変なことになってるね。
『うむ、じゃからワシはこうして地上に来て問題の解決をしようと思っているのじゃ』
どんなミスをしたの?
『妖を解き放ってしまったのじゃ』
妖?
『そうじゃ、やつらはちと厄介でのワシもどうしようか悩んでいるのじゃ。あやつらは人の心に入り込み弱さや悪さを助長するのじゃ』
もしかして、妖はこの近くにいるの?
『うむ、そうじゃの…ワシはさっきまで神器「探求の箱」を使って探していたのじゃ』
あのダンボールのことね。
『それでじゃ、妖を見つけることは出来たのじゃが、この地上世界ではワシ一人では捉えられないのじゃ』
神様なのに?
『うむ、妖は心に取り憑くのじゃ。心に取り憑いた妖はワシには手が出せないのじゃ。それでじゃ、お主にちと相談なのじゃが。ワシの手伝いをしてくれんかの?』
どんな手伝いを?
『取り憑いた人の心を埋めて上げて欲しいのじゃ。そうすることで妖を心からおいだすのじゃ。ワシは地上世界では猫以外になれないのじゃ。取り憑かれた者と話すことはリスクがあるのじゃ』
それを僕が?
『うむ、お主が良ければなんじゃがの…ただし少々危険も伴うのじゃ。だからこそ、誰かに頼ることが出来なくての』
神様はほとほと疲れた顔をして言った。
神様の手伝いをする?考えた事もなかった。いや考えたことがあったらあったでヤバい奴だが。
ここで手助けをすると言ったら確実に面倒なことが起こる。今までのような平和な生活ができなくなるだろう。ただ、猫神様には悲しんでほしくないと思う自分がいる。僕はこんなに他人のことを思いやる人間だったろうか?
僕の名前はトピーだよ。何ができるかわからないけど、手伝わせてもらうよ。
この神様との出会いで僕の止まっていた時間が動き出したのだろう。