表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/14

プロローグ

短いですが、プロローグを。

『……クリス、リリィよ……』


 山脈に沈む夕陽に照らされ、偉大なる父は愛しい子どもらの名を呼んだ。


「……はっ、はい……っ」


 誇り高く大切な父の呼びかけに、気を失った幼き少女を抱え、少年は精一杯の声で応える。

 けれどもその声は、我慢できない嗚咽で湿っていた。


『ふっ……何を泣いておるか、男であろう? それではリリィを守ることなど、夢のまた夢であるぞ……?』

「でも……でもっ!?」


 父の苦微笑に、しかしクリスと呼ばれた少年は悲痛な声を上げる。

 少年にはわかっいたのだ。これが偉大なる父との別れになると。

 別れの涙を流す少年に偉大なる父は微笑み、ついで少年の腕で眠る幼い少女に視線をおくる。

 疲れているためか、まるで死んだように眠る少女はしかし、確かに生命の息吹を感じることが出来た。


(……まさか、人の子を護るがため、己が命を燃やし尽くすとは思わなんだ……)


 彼にとってこの幼き二人は、いやこの種族はちっぽけな存在であった。それどころか、傲慢にも彼の力を欲して命を奪いにくるような存在。

 けれど、二人は違った。違ったのだ。


(そう……魂の奥底から二人は違った……だからこそ我は見たかった。この子らの未来を……)


 しかし、その願いは叶わない。だがそれでもよかった。二人の未来を奪われるよりは。

 だからせめて、最後に彼は願った。


『我が子らに祝福を……。龍神の祝福があらんことを……』

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ