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ドラグーン戦記〜世界最強の姫と辺境貴族の物語〜  作者: 国伊都
第0章 『それぞれの日常』
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第四話『王都 ベルベット』

感想等いただけましたら幸いです。

またブックマークして頂けると、大変嬉しいです>_<



 カルナ湿原の戦いが終結して三日後。

 リリア率いる王国近衛騎士団第五騎士団は、王都であるベルベットに到着した。


 いつもであれば王都出入りする人々と、それをチェックする検問によって、渋滞が発生している王都正門であるが、この日は違った。

 第五騎士団からの先触れに、王都の治安を預かっている王国騎士団はすぐさま出入都を禁止。騎士団の入都が完了するまで、誰も王都に入れないし、出しもしないことにした。

 これに王都の住人達、特に商人たちは反発するも、帰還するのが近衛騎士団第五騎士団――すなわちこのリディベル王国王女にして、伝説の英雄たるリリアであることを知ると、掌をひっくり返し路上に店を出し始めた。

 英雄の帰還……それも憎き帝国との戦に勝利しての凱旋である。

 普段お目通りすることも出来ない高貴な血筋が、王城へ向って中心道路を歩くのだ。王都に住まう一般市民たちがそれを見逃すはずがない。

 つまり、多大なる利益を生む商機が湧き上がってきたのだ。不満を口にする時間があるなら、売るための商品をかき集めたほうが何倍もいい。

 そうしてリリアたち騎士団が入都する時には、王都外の街道も王都中心道路にも、大勢の人々が集まってウィニングロードをつくり、彼女達を出迎えた。


「「「リディベル王国万歳!! リディベル王家万歳!! リリア殿下万歳!!」」」


 道の脇で王国民達は、自らを統べるリディベル王家に、そして英雄であるリリアに賛辞を送った。

 その歓声に騎士団の中心にいるリリアは、淑女らしい可憐な微笑と、細くきれいな手を振ることで応えた。その姿はまさに『高貴なる存在』。が、心の中では――。


(あー……お腹がすいた。肉だ、私に肉を……あっ、あれは、なんとおいしそうな鶏のから揚げを!? 手を振る暇があったら、私にそれをなげ渡してくれ!! あ、いかん。よだれが……口の中で溢れる――)


 ……まあ、王族とはいえ、育ち盛りの体育会系女子。花より団子というやつである。


(凱旋とはいえ、まったく……人間という奴は、もう少し静かに仲間を迎えることは出来んのか?  どうした、リリィ。歯を食いしばって?)

「ゴクリ……いや、何でもない。何でもないのだ」

(腹が減ったのはわかるが、もう少し我慢しろ)

「わかっている……」


 バロンの指摘に小声で返したリリアは、空腹で音のなりそうな腹に力をいれ一路、王城へと向った。




※※※




 王城へ入城したリリアたち王国近衛騎士団第五騎士団は、騎馬を厩舎に戻すと、武装を解除し城内修練場に再集合した。

 そこで待っていたのは、筋骨隆々の偉丈夫。彼こそは王国近衛騎士団総団長のディラン・マッケンジーであった。

 他の騎士たちと同じく鎧を脱ぎ、制服に着替えたリリアは第五騎士団の団長として、総団長に今回の戦いの報告をおこなった。


「王国近衛騎士団、第五騎士団。総勢五十五名、カルナ要塞軍の救援任務を無事終え、帰還いたしました。負傷者、戦死者ともにゼロであります!」

「うむ。皆のもの、よく任務を果たした! これにより、クレメンス方面からの帝国の侵略計画は大幅な修正が必要になるだろう。諸君らの働きにより、王国の平和は護られた。その事を誇りにし今後も近衛騎士としての任務に臨んでくれ。では今日はゆっくり休んでくれ。

 リリア団長は、私と共に陛下へ報告を」

「はっ! と、その前に……ディラン閣下。少々腹ごしらえをしたく……」


 お腹をさすりながら、リリアはディランに食事の時間を頂きたいと申し出た。その申し出に、ディランは苦笑し、彼女の側近であるアリアに声をかけた。


「アリアよ、殿下に軽食を用意して差し上げよ

「はい。殿下、こちらへ」


 そうして、国王陛下への謁見は予定の三十分遅れで行われることになった。



※※※




「近衛騎士団総団長ディラン卿およびリリア王女殿下が、陛下へのお目通りをと」

「うむ。通せ」

「はっ! お二人をお通しせよ」


 王城中心部にある謁見の間。

 その上座に座る、豊かな髭をたくわえた男こそ、このリディベル王国国王であるアルバート・リディベル。そして右にひかえるは宰相のカイウス・パウエル。

 カイウスの指示を受けた役人がディラン、そして此度の戦の立役者であるリリアを謁見の間へと連れてきた。

 二人は国王へと跪き、ディランが代表して謁見への礼を述べる。


「陛下、此度は我々、近衛騎士団のため、お目通りの時間を作っていただき誠にありがとうございます」

「と、言う割には少々到着が遅かったようだが?」

「申し訳ありません、宰相閣下。リリア殿下が軽く食事をしたいと申されまして」

「陛下、申し訳ありません」


 そういって、リリアは父親であるアルバートに頭を下げる。それをアルバートは片手で制する。


「よい。リリアは王国のために戦場へと赴いてくれたのだ。その程度のことで腹は立てぬ。カイウスも目くじらを立てるな」

「はぁ……かしこまりました」

「では、リリアよ。此度の戦の流れを聞くとしよう。詳細は文にて先に報告を受けておるが、お前の口からあらためて聞きたいのだ」

「……わかりました。では――」


 リリアは立ち上がり、カルナ湿原での戦の内容を説明するのだった。




※※※




「――と、いうことで私は、帝国に王国侵攻への橋頭堡を与えるべきではないと考え、公国要塞を破壊することに致しました」

「……それで、リリア殿下は要塞を破壊したと?」

「はい」


 リリアの報告を脂汗を流しながら聞いていたカイウスは、我慢できずにそう質問を挟んだ。それにリリアは事も無げに首肯する。


「ディラン卿。私は戦ごとに詳しくない。なので教えてほしいのだが、殿下が言われていることを実行することは可能か?」

「……相当数の魔術士を集め、攻撃魔法を叩き込み続ければ、要塞を瓦礫の山とすることは不可能ではありませんが。一人ではまず無理ですな。ただの人では」

「……殿下だからこそ出来るというわけか?」

「はい。殿下のドラゴン・スレイヤーの御力あってこその戦果であります」


 ディランの言葉を聴き、アルバートはため息をつく。


「すまぬな、リリィ。そなたにはいつも助けられておる。正直、親として娘に頼らなければならないこと、情けなく思う」

「いえ、お父上。お気になさらず。王族として義務を果たしているだけ」

「そうであったとしてもだ。リリィよ、何かほしいものはあるか? お前の働きに報いたい。なんでもよいぞ?」


 父のその言葉に、何か思いついたリリアは笑顔で確認をとるのであった。


「本当ですか、お父上?」

「ああ。お前の望む褒美を与えよう」


 その言葉に待ってましたと、リリアは満面の笑みで願いを紡いだ。


「では、休暇を! そして、ゼファー領へ旅立つ許可をいただきたい!!」




これにて、ヒロイン・リリアサイドのお話はいったんお休みです。

次回からやっと主人公を出すことが出来ます>_<


次回をお楽しみに^o^

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