仮説
小さな小さな
単位として、小さいというレベルではないほどの
微粒子と呼べるぐらいの、細かい粒が、暗闇の中にキラキラと輝いている
それを見ていると、そこが居場所なのではないだろうか
と、仮定してみることがある
そんなわけはないのだが、そんなわけのような気がする
私の頭は、最早おかしくなっているのだろうか
手で触ろうとしたって触れない物質
これは何だろう
私の居場所ではないだろうか
と、仮定する以外に、
この物質を密かに、あるモノに仮定し、定義づけている
それは、言葉や文字に表してしまうにはあまりにも危険な気がして、私はそれを心の中だけの仮定に留めている
こうして書いていたって、そんなもの、危険などあるはずもないのに
そう思い直しては、ひとり、くすりと笑うのだが
そうだ
この物質は、実はアレで
そのアレの中に私も存在できる、そんな居場所
それが、目下の私の仮説だ
こんな仮説を立てる私は、多分世の中では頭のおかしな人になることだろう
それでも良いような気がしているのだ
だって
居場所が明確になっているのだから、その間は
他の99%が、私の頭をおかしいと言い、じゃあ確かにそうだったとして
でも、その99%は私の居場所を誰も提示はしてくれない
ならば
頭のおかしい仮説だったとしても、私は私に居場所を提供してあげられるのだ
はっ
そうして私はまた呼吸のペースを早くした状態でベッドから飛びあがる
そうだ
また同じ夢を見たのだ
居場所のない私は、夢の中でだけ、仮説であっても居場所を見つけられるのに
夢であることを知り
99%と同じく、私は私に居場所を提供できない存在になり
それは100%となる
ああ、100%居場所がない
本当にそうなのだろうか
本当に私には居場所がないのだろうか
なら
どこへ行けばよいのだろうか
世界地図を広げて、ここはどうだろうかと想像してみたり
地球儀を適当に回して、指でぱっと止めたところ
そこは、真っ青な海だったり
そんなこともしてみるけれど
居場所はやはり見つからない
スマホに「見つからない」まで書いて保存し、スマホを閉じた
女は、山手線をもう三周している
上野を起点に、東京方面を二周、池袋方面を一周
池袋方面はもう一周するかもしれない
しかし
それを観察しているように見える私もまた、山手線を三周していることになるのか…