3話 転校の理由
一話一話が短いのは仕様です。
転校初日から不愉快な目にあった。
いや、悪いのは全力疾走に近い速度で走っていた私と、頭では理解しているのだけれど、
あんな何事もなかったかのように、ひとの下着を見ておいて感想?を述べるなんて
私がカッとなってしまっても仕方がないではないか。
「・・・同じ制服だったよね」
それでもしばらく時間がたてば、頭も多少なりとも冷えてきて冷静な考えができるように
なってくる。
全面的に悪いのが自分と解っているのなら、私が謝るのが筋であり、謝らないというのは私の
信条に背く事になる。
『何事も公平に、一切の偏見や贔屓をしない』
簡単なようで難しい、だからこそ私はこの信条に基づいた生き方をしようとしている。
不幸中の幸いとも言うべきなのか、同じ学校である、という事は判っているのだから、
休み時間にでも謝りにいこう、と道すがら考える。
転校初日から気の進まない、しかしけじめとしてやらなくてはいけない事ができてしまった。
「はあ・・・なんで私ばっかりこんな目に・・・」
思わず独り言をつぶやいてしまう。
そもそも転校だって、あんな事が無ければする必要だってなかったのに。
そして、ふと気づく。
いつも後ろからする気持ち悪い気配が消えている、と。
「え?なんで?」
転校までする原因であった気持ちの悪い気配。
四六時中まとわりつき、それこそ今しがた走っていたのも、その気配を振り切りたくて走っていたのだが。
その、いつも見つめられているような嫌な感じが無くなっていたのだ。
警察にも相談したが、ストーカー被害とすら認められず、なんの対処もしてくれなかった。
そのうち気配だけでなく、以前の自宅に動物の死体や、血まみれのラブレターが送られてきたり、
私の友達が原因不明の大怪我をしたりと、不可解な出来事が続いていたのだが、
「いままであの気配が無くなることなんてなかったのに・・・なんで?」
今まで悩まされていた気配が唐突に消えて、なにがなんだかわからず、その場でしばらく
呆けてしまった。