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竜とお姫様  作者: 大玉 由美
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殺られる前に殺れ!

砂漠に囲まれた人の国。

国は王による統治が行き渡っている。国を守るのは大勢の兵士達。そして特殊部隊の6人。

特殊部隊は対モンスター部隊のメグ、ハナ、アリスの3名と対人部隊のシズ、セイ、クラッドの3名。

対モンスター部隊の主な任務は国内外に出没するモンスターや類似の者を対象に国にとって害を成す輩を成敗する、正義の部隊である。故に皆に親しまれ、英雄扱いされている。

一方、対人部隊の主な任務は国に仇なす輩を極秘に闇に葬る暗殺部隊である。故に存在は謎に包まれ、表に姿を現すことは殆ど無い。国が暗殺者を雇っている事への避難の声も高いが国の安泰に貢献しているのは確かな話だ。

しかし、最近の国の方針は日々変化してきている。

どんな罪人にも人権があり、むやみに殺すのはどうかと。

対人部隊の廃止の動きが高まっていた。








目の前に広がる砂漠。国を出て少し歩いたこの場所にはかろうじて椅子だけが置いてある休憩所だった。

夜も遅く、人影は全く無い。

椅子に座ってじっと目の前の砂漠を見つめるのは対人部隊のシズ。

砂漠を見ているが、考え事をしている所為かその目には何も映っていなかった。

「……セイか」

シズの横に音もなく現れたのはまだ年若い少年であった。セイ=スタイレット。男、15歳。金髪碧眼で褐色の肌は様々なアクセサリーに飾られている。対人部隊隊員であり、主にシズ同様影の暗殺を多く手掛けている。

「急に呼び出して済まなかったな」

シズの声にセイは微笑む。

「いえ……暇してましたから」

セイはシズの隣にフワリと腰を降ろす。セイは大きな蒼の瞳をシズに向ける。

「話とは…対人部隊廃止の件ですか?」

シズは頷く。

「次の国会で正式に決まるらしい。国の対外対策の為でもある。暗殺者が国に雇われている事実はまずいんだろう」

「……今まで自分達の手を汚さず命令をしてきたのはどこの誰か教えてやりたいですよ」

シズは眉を寄せる。

「暗殺に携わってきたのは部隊の中でも僕と君だ。国としては今までの事が明るみに出るのは避けたいだろうから突然解雇にはならないとは思うが…一兵士という立場に配置換えされるのもな…」

「国にとって俺達は邪魔な存在になっているという訳ですか」

「いや、王の個人的な意見では例え部隊廃止になったとしても今後も殺しではなく確保の形で働いてもらいたいらしい」

セイは小さく溜息をついた。

「…勝手ですね。俺達の手は、もうどす黒い血に染まってる。洗ったって一生落ちやしないというのに……」

「問題はそれだけじゃない」

シズは沈んだ声になる。

「国の貴族達が僕と君を抹殺する計画を立てているらしい。確証は無いが充分考えられる話だ。だから今日君を呼んだ。今まで以上に身辺に気を配ってほしい」

「そこまで話が進んでいるんですか…」

セイは唇を噛んで砂漠に目を向ける。

「殺しが好きな訳じゃない。それなのに勝手に危険人物扱いされて殺されるなんてまっぴらです。王に直訴しますか?」

「いや、もう少し成り行きを見守ろう。下手に動くと返って状況を悪化させかねない」

セイは押し黙る。シズは続ける。

「クラッドには今日の事は内密に。あいつには関係の無い話だ」

セイは立ち上がる。

「分かりました。じゃあまた動きがあったら知らせて下さいね」

2人は静かに別れた。








「平和だなあ…」

クラッドは雲一つ無い空を仰いで呟いた。ここ数日仕事の依頼も無く、ちょっと暇を持て余していた。

「他の奴らはこんな暇な時は何やってんだろうな…」

メールしようかと携帯を取り出したが…。

「どーせ返事すら来ねえんだ。止めだ止め。たまには剣の鍛錬でもすっかな」

クラッドは酒場を後にして城の兵士訓練所に向かった。


「……何だ…?」

城に入ったクラッドは妙に騒々しい空気を感じて眉をひそめた。大規模な会議が開かれる模様で、人が慌ただしく出入りしている。クラッドは首を傾げながらも訓練所に入っていった。

「よう。やってるか?」

訓練所では国の兵士達が剣の鍛錬に勤しんでいた。クラッドもたまに訪れて一緒に鍛錬を行っている。

クラッドは対人部隊として唯一一般兵士にも知られた顔であり、兵士達に剣のアドバイスを施す事も多々あった。

しかし今日は別である。訓練所に居た兵士達はクラッドの顔を見るなりさっと顔を青ざめヒソヒソと話し出した。

「…?」

どうも様子がおかしい。

「何かあったのか?誰か教えてくれ」

傍に居た兵士がおずおずとクラッドに歩み寄る。

「クラッド様…。多分貴方様には事は及ばない事だと思いますが…。会議室で行われている内容はご存知ですか…?」

「何の話だ」

兵士は仲間の兵士と目配せし合う。

「私達から話すのは憚れます。どなたか事情を知っている方か兵士長にお目通りを…」

クラッドは眉をしかめる。さっぱり事情が分からない。

「そうか。邪魔した」

取りあえずクラッドは部屋を後にして電波が良くて話が聞かれにくい屋上に向かった。。

ピピピ…。

珍しく、電話の応答にすぐ反応があった。

「おいシズ。何か俺に隠してねえか?」

電話先はシズ。電話口で小さく息を飲んだようだった。

「城に行ったら何か会議してんだよ。兵士達も落ち着かねえ感じだし…何か知ってたら教えろ!気分が悪い」

『……分かった。隠しておいてもいずれ分かる事だしな。実は…』


「…対人部隊が無くなる…」

クラッドは呆然と立ち尽くす。寝耳に水とはこの事か。

「しかもお前やセイが処分されるなんて冗談じゃねえぞ!メグ同様お前等の力も国の宝じゃねえか…。国が刺客に狙われたら誰が立ち向かうんだ?あのボンクラ兵士達か!?」

興奮して叫ぶクラッドをなだめ、シズは下手に動かないようクラッドに念をおした。

『会議の情報は追って知らせる。僕達も大人しく処分されたりしない。また連絡するからくれぐれも大人しくしていてくれ』

電話は切れた。クラッドは切れた電話を握り締めて突っ立っていた。








「……疲れた……」

シズは自宅のソファーに横になってクッションを抱え込む。熱い男、クラッドとは話すだけで疲れるのである。

ピピピ…。

しばらくして知らない電話番号通知で電話が掛かってきた。面倒だったが渋々受ける。

「……はい」

『あ、シズ殿ですか!?アリスです!今家の前に来てます』

「……は?」

シズの目が点になった。


「お邪魔します」

扉の外に居たアリスは目が点のシズに構わずさっさと部屋に上がっていく。

「何で君、僕の電番とか家の場所とか知ってるの…?」

「王に聞きましたから」

「はあ……そう……」

シズは突然のアリス訪問にまだ放心中だったがやっと我に返る。

「アリス、男の家に年頃の女性が不用意に入っちゃいけない。危険だ」

「はあ?何言ってるんですかシズ殿。それより聞きましたよ。会議の事!」

シズはアリスの反応にちょっと複雑な気持ちになりながらも取りあえず部屋に戻る。

アリスは持ってきた便せんに何か書き込んでいる。

「これ、対モンスター部隊の電番とメアドです。いつでも呼んで下さい。私達は同じ特殊部隊。全面的に協力させて頂きますから」

差し出された花柄の可愛らしい便せんを取りあえずシズは受け取る。

「ありがとう。2人に連絡しておく。……で、何で君は此処に来たの?これならメールでも良かったんじゃ……」

アリスはシズの顔をじーっと見、首を傾げる。

「何ででしょうね?そうだ。シズ殿、今元気ですか?」

「別に怪我も病気もしてない」

アリスはにっこり微笑む。

「良かった。顔を見るだけでも違うんですよ。貴方が顔を隠さないで堂々と町を歩けるように早く変わると良いですね」

アリスは差し入れのお菓子を押しつけて帰っていった。

「仕事、忙しいだろうに……」

シズは袋の中の色とりどりのお菓子を見る。塞ぎ込んでいた気持ちが軽くなる。

「……すごく元気出たかもしれない…」








「王。会議の準備が整いました」

王は無言で頷き立ち上がる。使いの者に先導されて部屋を出ると扉の外に人影が見えた。

「…ハナか」

ハナは王に会釈した後、真意を問うようにじっと見つめる。王は小さく微笑んだ。

そのまま王と使いの者はハナの横を通って歩いて行った。

「ハナ」

穏やかな声にハナは振り返る。暖かな慈愛に満ちた微笑みを浮かべた女性が其処に立っていた。

「……メグ…。あなたも会議に参加するの…?」

メグは頷く。長い銀髪がフワリと揺れる。其処に居るだけでその存在感を周囲に知らしめる。透き通る様な白い肌、細い肢体は折れそうに細く、か弱い。しかし彼女は一国の命運さえ左右してしまう程の力の持ち主である。箸さえ持てない程の細く美しい指から繰り出される灼熱の炎は一度見た者は恐怖に震え上がると言う。

精霊と人間とのハーフながら精霊の血を色濃く受け継いだメグは色素の薄い肌と目の色をしていた。人の世界では長くその姿を留める事が出来ない精霊と同様、長く外に居る事すら体に多大な疲労を与える為メグはいつも空気の澄んだ閉ざされた空間に滞在していた。対モンスター部隊のリーダー、メアリー=グランフォード。女、19歳。

「体は大丈夫なの?」

心配そうに見つめるハナにメグはにっこり微笑んで頷く。

「心配しないで、ハナ。きっと上手くいく…」

メグの去った後、余韻の様にキラキラとした微かな光が残っていた。

ハナはメグの去った後をぼんやりと見つめていた。

「おーい?嬢ちゃん、なに呆けてるんだ?」

夢を現実に引き戻すようなぼやきにハナは振り返った。案の定、クラッドが其処に立っていた。

「クラッド。何?アンタも参加するの?」

「おう。対人部隊で唯一顔の割れてる奴って事でお呼びが掛かった。でも貴族共の好きにはさせねえから安心して外で待ってな。大丈夫だから」

ハナの頭をポンポンと叩きクラッドは幾分緊張した面持ちで去っていった。

「…あたしがここにいたって何の役にも立たないって訳かあ…。あーあ…」

ピピピ…。

携帯メール。ハナは慌ててストラップやシールの沢山くっついた自分の携帯を開く。

『アリスから連絡先を教えてもらった。協力ありがとう。とても心強い』

「えっ…シズ様ー!?」

ハナはシズからの初メールに驚く。

「このメールは永久保存しなきゃ!」

すっかり機嫌を直したハナはウキウキと歩き出した。








会議が始まった。参加者は王、兵士長、対人部隊隊員クラッド、対モンスター部隊代表メグ、政治の代表者である貴族が11人の計15人。会議室はメグの体調を気遣ってメグの静養する場所と同じ空気を取り込んであった。

メグが部屋に入ると、滅多に姿を見せない深層の姫君登場に貴族達はざわめく。ハナと並んで国の人気を二分するだけあり、その容姿は麗しく神秘的であった。

後ろから一番この中に不釣り合いな無骨な男が姿を現す。貴族達はヒソヒソと囁き合う。クラッドはそんな貴族達の様子など気に掛けない風で自分の席にどっかりと腰を降ろして高く足を組む。

王が席に着き、会議が始まった。

「皆々様、お忙しい所1人も欠ける事無く会議が取り行われる事を嬉しく思います。それではただ今から今回の議題に付いて話し合いたいと思います」

時は正午を少し過ぎた頃であった。








「……落ち着け」

シズの自宅。部屋の中をウロウロ歩いているセイにシズは静かに声を掛ける。

「落ち着かないですよ…死刑になるかもしれないってのに」

部屋を行ったり来たりしていたセイは相変わらずソファーにごろりと横になっているシズに目を向ける。

「シズさんは心配じゃないんですか?」

シズはクッションを抱き締めて少し考える。

「心配はしてたけど…今は何か楽になったかも」

「ふーん…それってこの差し入れの相手のおかげ?」

「……うん」

嬉しそうに微笑むシズにセイはどっかり腰を降ろす。

「シズさんの好みって変!この際ハッキリ言わせて頂きますけど絶対メグさんかハナの方が可愛いって!」

「君の好みはメグやハナなんだ?」

「俺は一般論を述べたまでです。大体アリスは全然役に立たないじゃないですか」

「そうかなあ…」

シズはクッションを抱えたままセイに目を向ける。

「…そういや君、ハナのファンクラブに入ってるんだって?」

セイがギクリと身を竦める。

「……どこでその事」

「内緒」

「うっわマジ…?絶対誰にも言わないで下さいよ……」

「どうしようかなあ…」

「シズさん!」

シズは声を上げて笑う。

「少しリラックス出来た?」

セイは大きく溜息をつく。

「返って疲れました!」








「議題は1点。今まで国の中で暗殺を主な仕事としてきた特殊部隊の対人部隊の解散後、実際に暗殺に携わってきた

隊員3人中2人の処分の決定。以上である」

議長が議題を読み上げる。クラッドは眉を寄せる。

「対人の解散はもう決定事項なのかよ?」

「クラッド殿、意見を述べる時は挙手をお願いする。部隊解散は既に前回の会議で決定している」

「……へえ…俺はお払い箱って訳か」

クラッドは机に頬杖を付く。

「意見を良いかね」

王が挙手する。貴族達は王に向かう。

「対人部隊は何故処分されなければならないのか教えて頂きたい」

年若い貴族が挙手する。

「改めて説明致します。この度、我が国と隣国の対談が開かれて軍事面での互いの国の意見交換を行う場が設けられました。我が国は高い統率力と対モンスター部隊の息のあったコンビネーションが高く評価されたわけですが…。対人部隊に関しては例え命令とは言え人の命を簡単に手に掛ける暗殺者を隊員と認めるのはおかしいとの意見が相次ぎました。もし裏切られたら寝首をかかれて国家存亡の危機に繋がる恐れもあり、早々に2人を処分した方が良い、との意見を頂いた上で今回の会議にかけたのです」

王はしばらく考えていたが挙手して立ち上がる。

「死刑判決を受けた罪人を処刑する執行人が処分されたら誰が処刑を決行するのかね?」

場が静まる。王は続ける。

「対人部隊の2人は無用な殺生は一度たりとも行っていない。任務報告書と死亡届けを参照して頂きたい。この国で殺生を繰り返した凶悪犯を死刑と会議で決定した上で処刑人である彼らに殺害を依頼している。彼らは野放しになっている殺人犯人を捕らえる正義の部隊だ。そう、対モンスター部隊同様にな」

王はメグに目を向ける。メグも頷く。

「しかし…王は殺されてからでは遅いのですよ?金で雇われた者達だ。いつ裏切るとも限らない…」

貴族が食い下がる。

「殺される危険などどこにでもある。兵士達も私を殺そうと思えば殺せる位置に居るじゃないか?何故対人部隊にこだわる…?」

「それは、彼らの常人離れした強さです。兵士なら多数で取り押さえられる。しかしあの者達はきっと…無理だ」

「……あの」

黙っていたメグが挙手する。

「では、我ら対モンスター部隊が例えば王の暗殺を目論んだら…あなた方に止められますか…?」

貴族は真っ青になって首を横にブンブン振る。メグは微笑む。

「同じですよ。対人部隊を恐れて処分なさると言うなら我らも処分するくらいの覚悟が無ければ…。私は対人部隊の殿方はとても優しくて頼りになる方ばかりだと思います」

メグが隣のクラッドに微笑みかける。クラッドは照れて苦笑する。

「確かに…対モンスター部隊は可愛い女の子部隊だから気付かなかったけど、彼女達も充分驚異ですよ…?」

「良いんだ!可愛いから許す!」

「許されませんって!」

ザワザワと落ち着かない会議室に議長は溜息をついてベルを鳴らす。

「休憩!」







「彼ら2人の存在を知っているのは…私と娘の深琴、兵士長、特殊部隊か…」

休憩中。部屋の隅で王が腕を組んで考え込んでいる。

「貴族様は野蛮なのが駄目なのさ。実際シズなんかちゃんとした格好すりゃ上流貴族様にも見えるくらい見栄え良いのになあ。姿を見せられないのが残念だ」

クラッドのぼやきに王は反応する。

「そうか…2人に来てもらってちゃんとした人物だと分かってもらえば…」

「いけません王。今まで2人が姿を隠して暗躍されていた苦労が無駄になってしまいます…」

メグが言い放つ。

「むしろ…2人の存在を知られていない事を逆に利用出来ないでしょうか」

メグの提案に王とクラッドは顔を見合わせ考え込む。

「その提案、私にも参加させて頂けませんか」

後ろから快活な声がした。会釈するのは年若き兵士長、レイであった。黒髪の威風堂々とした青年で、国の兵士の頂点に立ちながらも全く奢った様子も無く、始終穏やかな人物である。

「私もクラッド殿を含めて彼らのような貴重な人材を無くすのは惜しい。実は大分兵士の数が充実してきたので小隊に分けたいと思っていたのですよ。そう、3隊くらいに…」

王がレイに目を向ける。

「小隊の隊長に任命すると言うのか?」

「はい。今までよりは時間に制約される事になりますが出来るだけ融通を利かせたいと思っています」

「兵役かよ…たりいな…でも良い考えかもしれねえな」

クラッドは頭をボリボリ掻く。

「良い考えですね…」

メグも王と頷き合う。

「ちょっと2人に聞いてみらあ。一緒に待機してるからな」

クラッドはシズの携帯に電話する。

「お、シズ?実は…」

『話は聞いた』

「は?」

『お前の服に盗聴器を仕込んである。会議内容と今の話は全て聞いている』

「そ…そうかよ…で?どうする?俺は別に良いけど」

気を取り直してクラッドは問う。

しばらく沈黙が流れた。どうやら2人で話し合っているようだった。

「おーい?」

クラッドは手持ちぶさたで足を組み直す。

『クラッド、傍にレイ殿は居るか。良ければ変わってくれ』

レイは携帯を受け取る。

「よお、シズ。元気か」

『相変わらずです。ご無沙汰しています』

レイは気さくに話しかける。

「堅苦しい話は後だ。兵役に就け。兵士どもを鍛えてやってほしい。私1人では手に余るんでな」

『…兵役経験の無い僕達に勤まりますか…?』

「案ずるな。お前達の力は私が良く知っている」

『……では貴方にお任せします』

レイは携帯を切ってクラッドに返した。

「どうしました?変な顔をして」

「兵士長殿はシズと面識が…?」

「ああ。彼とは幼なじみなんです。今もたまに会いますが彼の腕にはつくづく惚れ込んでいて。昔はアリスも一緒に兵士ごっこをして遊んだものです……アリスは小さすぎて覚えて無いでしょうが」

クラッドとメグは顔を見合わせる。

「アリス…?」

「妹ですよ。知ってるでしょう?対モンスター部隊の」

兵士長、レイ=テイラーは微笑んだ。








休憩中、貴族達も部屋の隅で話し込んでいた。

「抹殺だ。抹殺以外国家存続の道は無い!」

年輩の貴族がブツブツと呟く。

「暗殺者を野放しにしていたらそのうち我らの命も奪われかねんぞ」

抹殺モードが高まる中、一番年少の貴族は首を傾げて腕を組んでいた。

「そんな腕の立つ方々なら、私は国に今まで通り居て頂く方が良いと思うけどなあ。抹殺に失敗して逃走されたら次こそ報復に来て殺されるのがオチだ。そもそも一体誰が対人部隊の2人を抹殺するんです?」

「そ、それは冒険者とか荒くれ者達が居るだろう!」

「無理じゃないですか?相手は百戦錬磨のプロだ。誰もそんな依頼は受けませんよ…」

「し、しかし…」

年少の貴族は王の方を見遣る。

「それに、我らはその2人の顔すら知らない。知っているのはあそこの方々のみ。いつらでも誤魔化せる」

貴族達は黙る。

「まあ、対外対策なら対人部隊解散で充分でしょう。2人がまだ国に残るのであれば何かしらの形で残るでしょうし」

休憩終了を告げる議長の声に、年少の貴族は微笑んで立ち上がった。








会議はあっという間に終結した。年若い貴族の言葉が功を奏したらしい。対外対策のため対人部隊は解散になるが、暗殺に関わっていた2人には処分無しの決定が出た。

「皆さんにお知らせしたい事がございます」

会議の最後にレイ兵士長が挙手する。

「我が国の兵士は約150名あまり。私1人では隊の統率や強化にあたり目が行き届かない事もあり得る人数になりました。そこで、3つ程の小隊とし、各小隊には私の下に位置する小隊長を設けたいと思います。既に王の許可は取っていますが貴族の方々のご意見を伺いたい」

貴族達は顔を見合わせる。

「王が許可したのであれば我らが異を唱える事は無い」

議長は頷く。

「では兵を3隊に分け、各小隊長を据えることで決定とする。してその選抜方法はいかがするのか?兵士の中から兵士長殿が選ばれるのか?」

レイは首を振る。

「戦力強化を図るため、兵士含め国の内外から広く募集を募ります。少しお時間はかかりますが1対1のトーナメントを予定しています」

「俺も出るぜ。何せ無職だからな」

クラッドは肩をすくめてぼやく。

貴族達は顔を見合わせ合って頷く。

「それは楽しみだ。是非その対戦を観覧したいものだな」

「そのつもりでございます。人数が揃えばまた試合日時は追ってお知らせ致します」

レイは深々と頭を下げた。








「お疲れ様でした。レイ殿の配慮に感謝致します」

会議終結後、メグは会釈をして皆に惜しまれながらも退室していった。

「メアリー殿は拝見する度にお美しくなられて…」

貴族達は一斉にメグの去った後を名残惜しそうに見つめていた。

「対人部隊の事務処理はすぐ取りかかる。少しだが退職金も出そう。すまんが業務に追われておってな」

王は慌ただしく去って行った。

先程の年少の貴族がレイとクラッドの元に来る。

「ウィルと申します。お疲れ様でした。……私も今まで謎に包まれていた対人部隊の方の素顔を見たい。試合には必ず馳せ参じますよ」

まだ二十歳を少し過ぎたくらいの年少の貴族、ウィルは微笑んで去っていった。

「バレバレだな。まあ仕方ねえけど」

クラッドにレイは苦笑する。

「構いませんよ。小隊長は試合に勝ち残った強い3人なのです。まあ私は100%あなた方に決まると確信していますが。

ではまた。貴方とも一緒に仕事をするのが楽しみですね」

レイは会釈をして去って行った。

「……そういやその小隊長になったらあんな兵士長みてえな軍服着るのか?俺等…」

クラッドはウンザリしてレイの去った方を見つめた。








「ここで大丈夫です」

メグは部屋に続く廊下に差し掛かると1人で歩き出した。久しぶりの外界はやはり楽しい。精霊の血の濃い体を厭う事も多いがそのおかげで出会った様々な人も多い。丁重に扱ってくれる王や兵士達、殆ど一緒には仕事が出来ないけどいつも身を案じてくれる対モンスター部隊のハナとアリス、そしていつも頼りになる対人部隊の3人…。

出来れば部隊解散は避けたかったが…仕方の無い事だ。


「……対モンスター部隊のメアリー=グランフォードだな」


空気が変わった。

メグの体を冷たい汗が流れる。

背後から底冷えするような低い声が囁かれる。

「声を出すな。傷付けたくない。あんたの力を欲しがる者だ」

メグの口に布が押しつけられた。

意識が遠のいていく…。

「…嫌…」

メグは意識を失った。廊下に現れた人物はメグを抱えて大きく開かれた窓から外に姿を消した。








「王…!脱走です!弟七牢獄の囚人が脱走を計りました!!」

部屋に戻るや否や大臣が飛んできた。王は囚人のプロフィールに目を通す。

「隣国のスパイか…。3人殺している。すぐに対人部隊……」

「…王?」

動きの止まった王を大臣は訝しげに見つめる。

「居ないんだ…つい先程解散した…。仕方がない。兵士長を呼んでくれ」

「分かりました」

大臣が下がろうと立ち上がった時、扉が大きく開いた。

「王!メグが……メグが拉致された!!」

険しい表情のハナが息を切らせて立っていた。

「何と…。取りあえず兵士長を此処に。ハナ、アリスに連絡を」

大臣は慌てて退室して行った。

「アリスはすぐ来るそうです。対人部隊は…?王」

王はハナの問いに首を横に振る。

「そんな!一刻を争う事なのに!外界に長く居るとメグの命は…」

「私からは命令が出来ないんだ。分かるな、ハナ…」

ハナは王を見つめる。王は静かに頷く。ハナは携帯を取り出した。








「国の出入口に検問を敷きました。メアリー殿は現在そのスパイに拉致されて連れ去られた可能性が高いとの情報が入ってきております。スパイの靴跡がメアリー殿の居た廊下の窓に付着していた物と一致。スパイを捕らえてメアリー殿を早急に連れ戻す事を第一に考えて兵士達は行動しております」

兵士長の報告に王は無言で頷く。

「ただ、兵士達は実務経験に乏しくスパイ捕獲には難航するかもしれません…残念ながら」

「彼を捕らえたのは誰だったかな」

「対人部隊のシズ殿です。仲間を割らせるつもりで捕獲したのにこの始末…兵士の落ち度は私の責任で…」

「責任問題は後だ。今は彼らに任せるしかない」

「対人部隊は解散したのでは…?」

レイの言葉に王は頷く。

「ハナの友人のシズ殿、セイ殿、クラッド殿は丁度職を失って暇していたそうでな」

レイは目を大きく見開いた。








「お友達ハナちゃんの頼み事なら仕方がねえよなあ?皆」

兵士達が奔走する町を見下ろしてクラッドは微笑む。背中には使い込まれた大刀。

夕暮れで赤く染まる城下町は一面オレンジ色に染まっていた。

「メグが何かしらの方法で位置を知らせてくれるだろう」

大きめのサングラスは夜仕様でやや色が薄い。薄手のマフラーで口元を隠した長身の青年はシズ。

腰には愛用の細身の剣。

「俺等正義の味方だもんね~」

しゃがんで下を見ているのは黒いニット帽にシズと同じサングラス、全身黒づくめの少年はセイ。

小太刀の様な小振りの剣を2本腰に差している。

「そうしているとお前等兄弟みたいだな…最近同じ格好なのか?」

クラッドが2人を見る。

「仕方が無いだろう。セイが真似をするんだ」

「同じ様な2人だったら標的になる可能性も半分だと思って」

セイの答えにシズは溜息をつく。

「…その代わり君も僕の敵から命を狙われるけどな」

「……そうでした。まあいっか」

セイは下を見つめて寂しそうに呟く。

「ハナが俺の勇姿を見てくれないのは残念だけど」

「こんな危険な場に連れて来れるか馬鹿。お前はこの間の合同任務の時も来なかったじゃねえか」

「だって……オヤジと違って若者は色々用事があるんだよ」

クラッドはムッとする。

「それを言うならシズだってオヤジだろう!年は俺とそう変わらないハズだ」

「えっシズさんもう30なんですか!?」

じっと下を見ていたシズは迫るクラッドとセイに後ずさる。

「…な、何…?」

「シズさんって歳いくつ?」

「……秘密」

「何じゃそりゃー!」

クラッドが思わず叫ぶ。

「エンコー相手の女子高生じゃあるまいし何でこうなんだうちのリーダーは……可愛過ぎる…」

セイもげんなりして屋根に両手を着く。

「ゴメン。実は知らないんだ。捨て子だったらしくて」

クラッドとセイは顔を見合わせる。肌に当たる風が冷たくなってきた。もうすぐ日が暮れる…。








「やはり連れが居ると動けねえか…。しかし人質か脅して援護させるのには絶好の女だ。国はこの女には手を出せんだろうしな…」

スパイの息は荒い。廃墟の中に逃げ込んだが外の兵士の数が多くて身動きが取れなくなっていた。

「この女を手みやげに国に帰れば王も…俺を再度傍に召してくれるはず。人を殺したからって勝手に解雇しやがって…仕方無かったんだ。顔を見られちまったから…」

スパイは右腕がズキリと痛むのを感じた。

「クソ…特殊部隊にやられた傷が疼く…。あいつにだけは会いたくねえな…」

傍に横たえていたメグが身じろぎしてゆっくりと目を覚ます。スパイは剣を突きつける。

「大人しくしろ。言う事を聞いたら怪我はしない」

メグはコックリと頷いた。その顔色は青ざめていた。息が苦しい。頭がガンガンする…。

「人ごみが収まった。行くぞ」

引きずられるようにメグは外に連れ出された。


「よし…誰も居ないな。行くぞ…」

周囲を見回してスパイの目がメグから逸れた一瞬の隙をついてメグは天に向かって炎を打ち上げた。屋根の上に待機している対人部隊に知らせる為に…。

「おい!何て事しやがる!殺されてえか!!」

スパイがメグの襟首を掴んで怒鳴りつける。

「てめえこそ、何やってんだ?」

後ろから聞こえてきた底冷えのする声にスパイの動きが止まる。メグの顔がほころぶ。

「酷い顔色だ、メグ…。スパイさんよ、あんたこの人が清浄な空気じゃねえと生きられねえの知っててこんな目に遭わせてんのかい?」

スパイはメグの顔色の悪さに改めて気付く。

「何だって!?そんな面倒な女だったのか!?クソ…別の対モンスター部隊にすべきだった」

吐き捨てて悔しがるスパイをクラッドは冷めた目で見つめる。

「は?冗談きついなあー…他の2人連れて行ったらアンタ、それこそぶっ殺されるよ?こいつらに」

クラッドに気を取られていたスパイは鳩尾に鈍い衝撃を受ける。ガードする隙さえ与えない早さ。

「同じ顔は見飽きた…次は無いものと思え」

サングラス越しの冷たい瞳がスパイを見下ろしていた。

「く、そ…またお前か……!!」

スパイは苦痛に顔を歪めて自分の腰の剣に手を伸ばそうとして気を失った。

「クラッド」

シズの呼び掛けにクラッドは頷き、青白い顔のメグを抱えて城に走り出す。

「俺の出番は無しっと」

待機していたセイが屋根から降りる。シズは携帯を取り出す。

「レイ殿ですか。メグ奪回完了です。今クラッドが城に向かっています。脱獄囚は気絶している状態。今から運びます」

シズはセイに目を向ける。

「ハナにも報告しておこう。心配していたからな。…君がするか?」

セイはちょっと頬を赤くしてシズの携帯を受け取る。

「……あ、ハナ…?」

『シズ様~vvメグの事聞きましたよ!すごい!さっすが!もうハナ超感激~vv』

「……俺はシズさんじゃねえよ」

『あぁ?その声はセイ?何よー!シズ様はどこよ?出しなさいよ!』

「……うるせーブス」

『何ですって!この…』

ブッ!!

携帯を切って無言でシズに突き返す。

「セイってハナ好きじゃなかったっけ?」

「あんなブス好きじゃないです」

セイは面と向かうとどうもハナとは喧嘩になってしまうらしい。

「何でシズさんが良いんだよ…そりゃあ顔良し腕立つし大人だし?あ~全然負けてるじゃん俺…」

落ち込むセイを尻目にシズはスパイを念入りに縛り上げた。

「行くぞ」

シズとセイは屋根に身を隠す。

「おーい!ここに脱獄囚が縛られてるぞー!」

セイの大声で集まった兵士達は縛られて転がっているスパイに驚きつつ城に連行していった。

「『お友達ハナちゃんの頼み事』完了…」

2人は引き上げて行った。







クラッドがメグを抱えて城に入ると、待っていた大勢の側仕えの女性達がかっさらうようにメグを受け取り去っていった。

「対応早え~…つーか、深琴姫の側仕えより絶対あっちの方が多い気がするんだがな?」

一息ついて額の汗を拭う。息を整えていると赤いビロードの絨毯の敷かれた階段の上からハナが大きく手を振って階段を駆け下りて来た。アリスのほっとした姿もある。

「お疲れ様!ありがとうクラッド~v」

ハナが感極まってクラッドに抱きつく。クラッドはハナの頭をよしよしと撫でてやる。

「城に待機させて済まなかったな。お前等の身の安全の為にゃ仕方がなかったんだ」

アリスは首を横に振る。

「対人部隊の強さを信じていましたから心配無く待つことが出来ました」

「そっか」

クラッドはハナを引き剥がしてメグの部屋に目を向ける。

「対モンスター部隊は女ばかりの部隊…。守ってやるナイトが必要なんじゃねえかな」

アリスは腕を組んで考える。

「今回の様なスパイや刺客が相手では確かに私達には分が悪い…。まともに対応出来るのは兵士長殿くらいでしょう」

「そういや兵士長殿はお前の兄貴なんだって?驚いたぜ」

アリスは小さく頷く。ハナは驚く。

「へ?あの超エリートの兵士長がアリスのお兄さんなの?ちょっとマジ?紹介してよ!」

レイ兵士長はなかなか甘いマスクで国内外の若い女性に絶大な人気を誇っているのである。

「無理。だって兄には恋人が居るもの」

「え~ちょっとショック~!!」

ハナは心底残念そうに肩を落とす。

「じゃあさ、今度お兄さんの知り合いとマルモで合コン!」

「あのねえ…」

クラッドがポンと手を打つ。

「そういやも一個衝撃の事実を聞きかじったんだが…」

「やあ、ここでしたか」

落ち着いた声と共に扉から現れた兵士長は階段の上から3人に目を向けて微笑む。落ち着いた色合いの深い蒼の軍服が良く似合う。流れるマントを優雅に払って階段を下りる所作はどれも気品に満ち溢れていた。

レイはクラッドの前に来て深々と頭を下げる。

「クラッド殿…並びに対人部隊のお二方には何とお礼を申し上げてよいか…。ご協力、本当にありがとうございました」

クラッドは豪快に笑う。

「まあ俺等にとっちゃあ朝飯前よ。今回もシズが余裕で仕留めてくれたしな」

「そうですか…」

レイは振り返ってアリスに微笑む。

「アリス…久しぶりだな。なかなか家に顔を出さないから兄は悲しいぞ」

「別に…用も無いし…」

「まだ兵士志願を断ったのを根に持ってるのか?お前には剣は似合わない。大人しく結婚しろと言ってるのにまだこんな所に居るんだから。これでは死んだ両親に申し訳が立たない」

「私はまだ結婚なんて全く考えていません!」

アリスはぷいと横を向いてしまう。レイは小さく溜息をつく。

「剣も充分使えず潜在的に発掘された魔法の力もお遊び程度。自分が特殊部隊の足枷になっている事くらい、分かっているだろう…?そろそろ真面目に退役を考えなさい」

アリスは横を向いたままじっと唇を噛み締めていた。兄の言葉が心に重く突き刺さる。分かってはいるのだ。

ハナとクラッドは不安そうに顔を見合わせた。

「頑固な所は母親にそっくりだ。まあ、私も同じ様なものだがな。せっかく久しぶりに会ったんだ。喧嘩は止そう」

レイはアリスの肩を軽く叩く。

「大事な可愛い妹を守りたい兄の気持ちを分かってくれ」










スパイが城に連行されて来た。クラッドとハナはその場を後にして兵士達の騒ぐ群に付いて行った。

兄妹水入らずで話す機会を持った方が良いと思ったのだろう。

階段の手すりにもたれたアリスはその様子をぼんやりと見つめる。

「……両親がこの国の特殊部隊だったと聞いた時から私もその仕事を受け継ぎたいと強く思った。その気持ちは変わらない。でも今の自分には力が無い。今のまま此処に居続ける事は出来ない事くらい分かります…」

アリスの両親は国の特殊部隊で任務中に殉職したのだった。

「兄さんが立派に兵士長を勤めているのをねたましく思う事もありました。どんなに努力しても、追いつけないのが悔しくて何もかも投げ出したくなる時もありました」

「でも、投げ出してないじゃないか」

レイは穏やかに言葉を発する。アリスは頷く。

「お前は頑張ってるじゃないか。訓練所で良く姿を見かける」

「でも……駄目なんです。ちっとも上達しないんです…」

言葉を切ったアリスを見つめ、レイはちょっと考える様に頬杖を付いた。

「……お前の頑固さに負けたよ。言うまいと思ってたんだが…」

アリスは訝しげにレイを見つめる。

「お前は剣よりボウガンの方が使える。集中力と命中率は群を抜いて際立っているからな。魔法についてだが、潜在的な力は精霊に直接会う事で最大まで引き出されるだろうから世界を回って精霊を探す事が出来ればお前の本当の力が目覚める可能性は高い」

「兄さん……その話は…本当ですか?」

レイは苦笑して頷く。

「ボウガンの件はシズ殿の意見だ。彼はお前を良く見てくれている。魔法の件はメグだ。お前には強い魔法の力を感じると話していた。今まで彼らに私から口止めしていたんだ」

「何で…」

レイは頭を掻く。

「お前は心身共に強い。もしかしたら今後特殊部隊最強になる可能性もある。そうなったら結婚なんて絶対しなくなるだろう?だから、黙っていたんだ」

アリスは口を開ける。しかし、声が出て来ない。レイは続ける。

「お前は今でも並の兵士よりずっと使える。兵士としては充分活躍出来るだろう。しかし特殊部隊となれば話は別だ。それこそ人並み以上の努力が求められる……それでもやれるか?」

アリスは大きく頷く。その瞳は少し潤んでいた。

「魔法が使える様になれば私も特殊部隊に居られる…。私、ずっと才能が無い駄目な奴だって思ってた……」

レイはアリスを抱き寄せる。

「お前の努力は知ってた。もう止めたって無駄なら精一杯やれることをやりなさい」

アリスは頷く。レイは微笑んだ。

「兄より妹が強いなんて情けない話にならないように私も剣の腕を磨いておくとしよう」








スパイの連行もあっという間に完了してクラッドとハナは手持ち無沙汰に歩いていた。

「……んん?」

謁見の間の扉からひょっこりと顔を出している少年がいる。

「あれ?セイじゃん!」

ハナの大声に気付いたセイは慌てて首を引っ込める。

「今更隠れたって無駄だっつーの…」

ハナとクラッドは謁見の間に駆け出す。

「さあ、もう逃げられないわよ!」

「うわ!やっぱり追いかけて来た!!」

謁見の間に飛び込んだハナとクラッドはウンザリした顔のセイを捕まえる。

「セイが居るって事は…」

ハナは首を巡らせる。奥の方で資料に目を通しているシズを目敏く見付ける。

「……ハナ…」

「やっぱり!居た!シズ様っ」

ハナはシズの元に突進する。

「何見てるんですか?」

ハナはシズの手元の資料を覗き込む。

「見る?今日の会議の資料だけど」

ハナは渡された資料に目を通して眉をしかめる。

「対人部隊解散ってもう決定なんですか?今日だって一杯活躍してくれたのに…」

ハナは沈んだ顔で資料をシズに返す。

「僕達3人は兵士をまとめる小隊長に誘われているんだ。でも……」

セイはクラッドの腕を振りきってシズに詰め寄る。

「まだシズさん悩んでるんですか?」

「どういう事だ?」

クラッドの問いにセイは肩を竦める。

「シズさんは今回の提案、辞退する気らしいんですよ…」

クラッドは仰天する。

「何だって?特殊部隊も無くなった今、国に居る為には兵役しか道は無いだろう。まさかお前」

シズは小さく頷く。

「国を…しばらく出ようかと考えている」

ハナは青ざめる。シズが居なくなるなんて考えもしなかったのだ。

「ヤダ!何で国を出るなんて言うのシズ様!」

「小隊長のトーナメント。残った3人が対人部隊だという噂が流れたら、皆に無用の血が流れる恐れがある。クラッドは顔が割れてるし恨みも買っていないから良い。セイは実家への仕送りがあるから残った方が良い。でも僕は特に必ずしも国に残らなければならない事情は無い。小隊長の1人が全く関係の無い者である事が安心に繋がるんだ」

「売られた喧嘩は買えば良いさ。お前が居なくなる方が国にとって損失が大きいぜ」

クラッドは頭を掻く。セイもハナも頷く。

「また帰って来るよ。腕を鈍らせないように少し鍛錬もしたいし……。この機会にあいつ等も探すつもりだ」

「あいつ等って?」

ハナは不安そうに言葉を紡ぐ。シズの目が冷たく光る。

「……僕を捨てた両親。手掛かりは少ないけど探せない事は無い」

「おいおい忘れたのか?シズ。お前は極端な方向音痴じゃねえか。無理だぜ」

「ではアリスと同行して頂けませんか?シズ殿」

扉から聞こえた快活な声に皆振り返る。レイが微笑んで立っていた。シズはレイをじっと見つめる。

「アリスもすぐに旅立ちます。例の件でね。貴方と2人なら私も安心だ」

「ちょ、ちょっと。何でアリスまで旅立つの?例の件って?」

レイはハナに微笑み掛ける。

「心配は要りませんよ?ハナ殿。あの子もまた、成長が必要なのです」

「でも…。じゃああたしも一緒に…」

「お前メグさんだけ残して行く気なのか?」

セイの言葉にハナはふくれる。

「だって…。アリスもシズ様も出て行ったら寂しいんだもん」

「あのな。俺もいるしオヤジも居る。俺等じゃ駄目か?」

ハナはセイを見つめる。ハナの大きな瞳に見つめられ、セイは顔を赤くする。

「セイ、遊んでくれるの?」

「気が向いたらな」

「生意気…」

ハナは小さく溜息をついた。

「シズ様。私待ってますから…。浮気しないで下さいね!」

シズはそんなハナを綺麗に無視してレイと話し込んでいる。

「同行の件はアリスと話をします。勝手に決める訳には行きませんから…」

「ついでに式も挙げてくるといい。私はお前になら妹を託せる」

レイの言葉にシズは首を振る。

「僕と彼女はそんな関係では無いですから。期待されても困ります」

「そうかな。俺は充分期待してるけど?」

シズはレイの肩にポンと手を置いて部屋を出て行った。シズの頬が少し赤くなっているのをレイは見逃さなかった。








「…旅立つと言っても、特にこれといって準備するものは無いか」

アリスは城の自室で旅の準備をしていた。

「手掛かりも無い精霊を見付けるには結構な長旅も覚悟しなきゃいけないけど、町には店もあるし…そうだ。ボウガン」

レイのアドバイスを思い出す。取りあえずボウガンを武器庫で借りていく事にしておく。メモに付け加える。

「替えの服も2着くらいでいっか。武器に傷薬にお金に地図に…コンパスも…」

コンコン、と扉がノックされる。

「はーい?」

「アリス?ちょっと話があるんだけど」

アリスはてっきり兄かハナあたりだと思ったので開けようとした扉からさっと離れる。

「その声は…シズ殿…?」

「うん」

アリスはますます混乱する。

「な、何の御用でしょうか…?」

「直接話したい事があるんだ。部屋に入れてくれないか?」

「駄目ですよ!女の子の部屋に入っちゃ駄目!」

「……君だって僕の家に押し掛けて来たじゃないか…」

「それはそれ!これはこれ!まだ服とか出しっぱなしだし」

「じゃあ待つから。あんまり外で話せる話じゃないんだ」

アリスは手早く荷物を鞄に詰めた。周囲を見回し頷く。

取りあえず扉を開ける。

「ど、どうぞ…散らかってますが…」

シズは部屋に入って中を見回す。

「…対人部隊の自室より広いな。天井も高いんだ…」

「そうですか?ハナの所もこんな感じですよ」

アリスはシズに椅子を勧める。

「何かあったんですか?」

飲み物を準備するアリスにシズはちょっと言いにくそうに言葉を探す。

「……?」

「レイ殿から聞いたが、君は旅立つらしいな」

アリスは頷く。

「実は僕も旅立つんだ。それでレイ殿が…その…」

「もしかして、私とシズ殿を同行させたい…とか?」

シズは頷く。アリスはコーヒーのカップを置いて考える。

「私は構いません。シズ殿は強いし安心出来ます。でもシズ殿は構わないんですか?」

あっさり了承されてシズは拍子抜けする。

「僕としても君が居てくれた方が心強い。方向音痴だしね…。じゃあそういう事で…道中宜しく」

ぺこりとお辞儀され、アリスも取りあえず返す。

シズは慣れない女性の部屋が落ち着かないのかちょっと居心地が悪そうだ。

「シズ殿、今更ですが的確なアドバイスありがとうございます。今からボウガンを見に行こうと思ってたんですが、私に

合うものを見繕って頂けませんか?」

アリスの提案にシズは頷いた。








アリスはシズと武器庫に向かいながら今更ながら考え込んでいた。同じ特殊部隊とはいえ、シズとは赤の他人。しかも男女である。その2人が昼も夜も片時も離れず2人きり。当然夜も同じ部屋…。

「ちょっと…問題かもしれない…」

アリスは前を歩く長身のシズを見遣る。ハナが超格好いい!と絶賛するのは良く分かる。彼は格好良いのだ。服のセンスも悪くない。普段穏やかでもの静かな青年だがとにかく強く、国には欠かせない貴重な人材だ。そんな彼がいつ終わるかも分からないアリスの精霊探しの旅に付き合ってくれるなんてどう考えても何か裏があるのではないか?兄に

泣きつかれたとか何か弱みを握られているとか。

「シズ殿…何で私に同行してくれる気になったんですか?」

シズは立ち止まって振り返る。素顔のシズの穏やかな瞳がアリスに注がれる。何か、遠い昔にもこんな事があった様な気がする。

「…君に何かあると悲しむ人が沢山居るから」

ちょっとかわされた気もするがシズが歩き出したのでアリスはまた無言で後を追う。彼の旅の目的も聞いて、効率良く進

められるようにしなければならない。アリスの頭は忙しく回り始めた。

前を歩くシズも同じく考え込んでいた。

アリスに男として見てもらえていない……。

「旅にはその方が良いとは思うけど。情けない…」

ちょっと気持ち落ち込みながらも武器庫に到着する。

武器庫の前の兵士が訝しげにシズを見遣る。アリスは慌てて前に出る。

「すみません。ちょっとボウガンの貸与を申請に来たんですが」

兵士はアリスの特殊部隊手帳を見、敬礼する。

「特殊部隊の方ですね。構いません。中にどうぞ」

アリスとシズは中に入った。



「そう言えば僕らには手帳は無いな…」

シズは首を振る。アリスは微笑む。

「対人部隊が手帳持っても出す機会が無いですからね」

「理不尽だ。食事も、服も、武器の研ぎ出しも全部実費だったんだ。出るのは交通費くらいで」

「そうなんですか?私達は手帳で城の設備を利用していますよ」

「利用してるのはクラッドだけだ。あいつは顔パスだからな…」

シズはボウガンの棚に行き、すぐに一つ選んだ。黒っぽいスレンダーなタイプである。

「君のボウガンはコンテンダーが良いだろう。軽くて扱い易い。撃発で踊るからパームレストは交換。フロントは切断して

グリップも削って…」

「詳しいですね」

「武器の扱いは一通り教わったから」

一体誰に教わったのか。シズの謎はまた深まる。ボウガンの改造を兵士に委託して2人は武器庫を後にした。



メグが目を覚ましたらしい。メグの部屋の前に人だかりが出来ていた。

「用の無い者は撤収しろ!」

レイが大声で兵士達を追い出している。アリスとシズは部屋に向かった。レイは頷き中に2人を招き入れた。

メグの自室はフリルの世界だった。

真っ白い壁にピンクや白のフリルのカーテン、可愛いぬいぐるみ、天涯付きのベッド。

シズはクラリと目眩を感じて傍に居たセイに気付く。セイもクラッドも同様に青い顔をしていた。

「アリスとシズ殿…?」

メグの声に取りあえず2人はメグのベッドに寄る。メグは体を起こして微笑んでいた。顔色も随分良い。

「心配掛けてごめんなさいね。もうほとんど大丈夫なんだけど今日一日は横になって居ろって言われちゃって」

メグはクスクス笑う。アリスはメグに抱きつく。メグは黙ってアリスの背をさする。

「シズ殿、いつもご迷惑をお掛けして申し訳ありません」

シズは恐縮する。

「いえ、大した事は」

「アリスと旅立つそうですね。一つお願いがあるのですが」

「はい」

アリスもメグから離れてじっとメグに目を向ける。

「同じ精霊とのハーフである深琴姫は自由に外に出られるのに私はこの体。体質的なものなら仕方がありませんが何か関係している事が無いか精霊にお会いしたら聞いて欲しいのです」

アリスとシズは揃って頷いた。メグも微笑んで頷いた。







メグの部屋を出た後、アリスは廊下の隅から自分を呼ぶハナに気が付いた。

「アリス。旅に出るって本当…?」

アリスは小さく頷く。ハナは溜息をつく。

「兵士長から旅立つ理由は聞いたんだけど……あたしはアリスが頼りないなんて全然思ってないよ!」

「うん……ありがとうハナ。でもね、やっぱり皆に気を使わせてるの分かってたから」

アリスの頭一つ背が低いハナが俯く。表情が分からなくなる。

「折角……友達が出来たと思ったのにな……」

アリスは瞬きする。

「何言ってるの。友達じゃない。今までも、これからもずっと」

ハナはアリスにギュッとしがみつく。

「早く帰って来てね。絶対だよ!?」

「うん」

「毎日メールする。ちゃんと返事してよね」

「うん」

「それと、シズ様に悪い虫が付かないように見張っててね」

「…そ、それは私にはどうしようも出来ないかも…」

ハナは向こうで対人部隊と話し込んでいるシズに目を向ける。

「……分かってたんだけどね。相手にされてないって事くらい」

「え?」

アリスはハナを不思議そうに見つめる。クラッドと兵士長から先程入手した情報。アリスは覚えていないらしいがアリス

とシズはレイも含めて幼なじみだったらしい。シズは小さなアリスをいつも守ってくれていた。そしてこれからもきっと…。

「やっぱ幼なじみには適わないや……アリス」

「うん?」

「決めた。あたしはアリスとシズ様との仲、応援する!」

アリスは目をしばたく。

「……へ?」

ハナは初めてシズと会った時からシズファンと公言して憚らなかったのだ。それが今、一転してアリスとシズとの仲を応援している。アリスは首を傾げる。

「何だか良く分からないけど……シズ殿の事はもう良くなったの?」

ハナは首を横に振る。

「良く無くはないけど……良いんだ。あたしはもっと望みのある人を探す事にする。……ちょっと切ないけどね」

ハナはシズの方を向く。ルックスで始まった恋はハナの中で幕を閉じようとしていた。

接するうちに彼の内面的な優しさに触れる機会もあった。多分、ルックスだけでここまで惹かれた訳じゃなかった。

「だからさ、あたしに遠慮しないでアリスはシズ様と仲良くなって良いからね」

「仲良くと言われても……そりゃ仲悪くなったら旅に支障出るし……」

ハナは困惑するアリスを見、苦笑する。シズとアリスの仲は長期戦が予想されそうだ。

これからのシズの頑張りを見守りたい気も大いにあるが、しばしの別れ。

「いつでも帰って来て良いからね。精霊見付けるのは奇跡に近いって言うし、もし駄目でも良いじゃん。あたしはアリスが帰ってくるのを此処で楽しみに待ってるよ」

アリスは大きく頷いた。








「おいおいシズさんよ。そんな大々的に婚前旅行なんてして良いのかい?」

クラッドとセイはシズに詰め寄っていた。

「オヤジ、シズさんにそんな度胸無いよ。頑張ってもやっと手を繋ぐ程度が関の山」

「何いってやがんだ。男は皆狼だぜ?いくらシズでも…」

「こんな少女漫画のヒロイン並に純情なシズさんがそんな事出来るわけないよ」

「それもそうか。じゃあ無防備なアリスも安心か?」

「…や、それはどうだろう。やっぱりシズさんも男だから襲いかかりたくなる衝動に駆られる事も……」

「……あのな…」

膨らむ妄想。すっかり狼に仕立て上げられたシズは静かに憤っていた。

「妄想はその辺にしてくれ……切られたくなければな」

クラッドとセイはピッタリと口を閉じる。

シズは考え込む。やはりアリスとの2人旅は無理があるのではないだろうか。

確かに2人旅は両者にプラスに働く事も多いしアリスには1人旅は絶対進めたくない。

だが…。クラッドやセイの発送は極端だがあり得ないと言い切れないのが悲しい。

アリスへの想いはそう考えると酷く後ろめたいものに感じてしまう。

「……別にベッドで一緒に寝る訳でも無いし…」

宿は貧乏旅だから同室にならざるを得ないかもしれないが。

「2人旅に抵抗があるならうちの兵士を供に付けても良いが」

レイがやって来た。

「ただ、うちの兵士に妹は結構人気だという事を付け加えておこう。いつも訓練所で汗する可憐な一輪の花だとさ。旅への同行なら誰もが挙手するだろうな」

ムッとするシズにレイは微笑む。

「……王がお待ちだ。旅立ちの件の報告を待っている」

シズは取りあえずアリスに声を掛けて謁見の間に向かった。








「話は聞いた」

王はアリスとシズの頭を上げさせる。

「知っての通り我が波留国は世界4つの人の国の中で一番兵士の数が少ない。その数150程だ。その代わり特殊部隊の暗躍で国を守っていると言っても過言では無い」

アリスとシズは王の話しに耳を傾ける。

「対人部隊の解散も隣国の我が兵力を削ぐための画策だと今でも思っている…。アリス、シズ。また我が国に戻って我が国の為に働く意志はあるか?」

「もちろんです王。私の両親は特殊部隊の任務中に殉職しました。両親の意志を受け継ぎ、国の特殊部隊として働く事が私の望みです」

アリスは答える。

「……僕も戻ります。理由は特殊部隊に入った時と同様です」

2人の答えに王は頷く。

「テイラー家は代々国の特殊部隊を勤め上げている。兵士長の腕も確かだ。今後のアリスにも期待しよう。シズには去られると本当に我が国の痛手なのだが事情は分かった。2人の道中にも給料の確保を行おう。ただし、他の国や部落への乗り換えはせず、目的を果たしたら速やかに国に帰る事と、他国の内部事情に何かあれば知らせるように」

2人は頷く。

「本当は君達にうちの馬鹿娘も一緒に連れていってもらおうかと考えていたが…メグによれば全く精霊の力が感じられないらしくてな。魔法使いには向かん娘なんだろう」

あの手の掛かる深琴姫が同行されたらたまったものじゃない……2人は曖昧に頷く。

「道中の2人旅も楽しかろう。気を付けて行くが良い」

2人は謁見の間を退室した。








色んな不安と希望に胸を膨らませつつ、2人は翌朝旅立って行った。

「マジで2人旅だぜ。帰って来た時にアリスがシズの子供抱いてたらどうすっか?」

クラッドは2人を見送りながら呟く。

「あの2人での任務って無かったよね…いつもシズさん遅刻だったし」

セイは首を振る。

「遅刻はお前もだろ…」

クラッドのぼやきにセイは肩を竦めた。

「大丈夫だよ。シズ様はアリスをしっかり守ってくれるから…大丈夫」

ハナは大泣きしている。

「あーあ…嬢ちゃんの可愛い顔が台無しだ。俺の胸で良かったら貸すぜ?」

「いらないよ!」

ハナは空を仰いで杖を振り上げる。

「2人に精霊の加護がありますように…」

歌うような不思議な言葉の羅列と共に杖から噴出したキラキラとした光が空を駆け上がる。

「呪文斉唱を伴った魔法なんてメグしか使えないかと思ってたが…。ハナも結構やるな」

「あたしも頑張るから……アリスも頑張って」

声は呪文に乗って遠く馬を走らせるアリスに届いた。

アリスは一度振り返り、またすぐに前を見据えて走り出した。








果てしない旅が、始まる。





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