ゴブリン転生
グギャ(今日からオレは)
ググ、ギャギャ(エルフや美形の女剣士を囲って)
グ、グギャャ!(ハーレムを目指すんだ!)
醜い緑色の握り拳を天高く上げながら
鬱蒼と茂った薄暗い森の中で
1匹のゴブリンが叫んでいた。
弱肉強食のこの世界。ゴブリンの様な非力で頭の回らない魔物は、1つの縄張りから1日に20-30匹は産まれては死んでを繰り返すのが常ではあるのだが、この1匹は様子が違っていた。
ゴブリンの幼体にしては既に喋る事ができ、
親ゴブリンに成体になるまで育てられるはずが、辺りには何もいない。
突然この世に現れ、ゴブリン語を喋りだしたのだ。
所謂、地球での記憶そのままで異世界に転生してきたジャパニーズゴブリン(ジャブリン)だった。
前世での名前だけは思い出せないが、餅を喉に詰めらせて死んでしまった所を爺さんの神様がこの剣と魔法のある世界に転生をしてくれたのだ。
前世での暗い鬱屈としたニート(引きこもりではない)生活を思い出したジャブリンは
今世からはオレTUEEEやハーレムを目指し、存在進化を繰り返してゴブリンキングの様なモノになってゴブリン王国を作るのもいいなあと思いを巡らせていた。
このジャブリン、爺神からチートもスキルも何も貰えなかった。
だが爺神から薦められた存在進化をし易い種族、ゴブリンになった事で効率的に進化していこうと考えていた。
さっそく、武器無しゴブリンでは辛いので何か棍棒か何かを探して、腰まである草を掻き分けて前に進んでいく。
転生直後なので、人間の半分程の身長で裸体でしかも幼体なのだ。そこら辺の弱小ホーンラビット(一角うさぎ)ですら勝てないだろう。
爺神が言うには人里離れた奥地らしく、ゴブリン討伐がされ難い場所に転生するから、他の魔物にだけ気をつけてくれとの事だった。
早く存在進化しなきゃならないから、早めに何か得物をゲットしないとなと思っていたら、目前に丁度いい硬そうな一本の木の枝が落ちていた。
よっしゃー!ラッキー!
と思って拾おうとしたら
---スン---
と自分の首が飛んで、意識がそこで途絶えた。
そこには、人の身長程もある大きさの蜘蛛がいて
その鋭い尖った脚を垂直に下ろしたその先には
先ほどまで歓喜に溢れていた表情をした
緑の頭と緑色の水溜りが出来ていた。