O田原提灯マン改めナナシ-2
O田原提灯マン改めナナシ
AM:8:45
晴れの日も雨の日も、会社に向かうサラリーマンの群れで
ごった返すO田原駅構内。
男が一人、O田原駅の提灯のオブジェの下に立つ。
O田原提灯マン認証しました。
コンピュータ音声がメットの中に響く。
さあ、出勤だ。
男の姿は提灯のオブジェに吸い込まれる。
ジャンバーを脱いで、ロッカーから取り出したヒーロージャージに着替える。
スタンバイOKだ!
一日で一番充実している瞬間。
ローカルヒーローとしての一日の始まりだ。
AM:9:00
今日は珍しく仕事が入っている。
仕事は商店街の雑用だ。
ヒーローたる者、社会奉仕の一つもやらねばならない。
ある程度の規模の公共機関等には年度初頭にヒーローポイントが支給され、
付与されたヒーローポイントを使用することで、ヒーローに社会奉仕を依頼する事ができる。
先代のO田原提灯マンは高齢の為、O田原の市民は気を使って仕事を依頼してこなかった。
自分の代になった事を知ったO田原の市民が溜まったヒーローポイントを消化しはじめたのだ。
商工会長が作業の説明を始めた。
悪いねー。O田原提灯マン君。
あのね、古い電球をこのLED電球に交換してくんろ。
商工会長が商店街のアーケードの古い電球を指さして言った。
アーケードの電球は切れている物が結構あった。
はい、作業内容はわかりました。
相当ヒーローポイントが溜まっていたんだな。
ほぼ丸1日拘束だな。
まあ、暇だしいいか。
体を動かすのは悪くない。
久しぶりに商店街をあらためて見ると、シャッターの閉まった店舗が増えている事に驚いた。
自分の子供の頃はもうちょっと賑わっていたのにな。
少し寂しさを感じた。
商店街のアーケードの電球を黙々と交換していく。
結構数あるな。
まさか、怪人捕縛用マジックアームが電球交換に役に立とはな。
まあ、便利でいいや。
PM:12:00
やっと昼か。
ごくろうさん。
休憩にしてよ。
商工会長が弁当とお茶を持ってきてくれた。
今日のお昼は駅弁か。
商店街の人のご厚意に感謝。
PM:13:00
午後も引き続き電球の交換だ。
午前中で半分終了。
ふー。
結構しんどいな。
まあ、アーケードが明るくなって、O田原のみんなに喜んでもらえればいいか。
電球の交換がやっと終わった。
お疲れさん。
あがっていいよ。
そう言うと商工会長から缶コーヒーを手渡された。
お疲れ様でしたと頭を下げるとヒーロールームに引き上げた。
PM:17:00
今日も一日平和に終わった。
帰るか。
何時ものようにヒーロージャージを脱いで、ハンガーにかけロッカーにしまう。
通勤ラッシュが始まる前に帰宅の途についた。
2016.12.29