知らず知らず
自動販売機にはコーラやサイダーといった炭酸飲料から、緑茶や紅茶といった茶類、コーヒー類に、果ては「フリフリプリン」といった変わり種まで、多種多様な商品が取り揃えてある。
自動販売機の前で、男が商品を決めあぐねている。しばらくした後、小銭を投入した男は、ようやく商品の購入ボタンを押し、販売機は「ガコン」という音と共に、取り出し口に商品を出現させた。
「ガコン」という音と共に、絞首台の床板が開き、それに伴い落下した死刑囚はゆっくりと窒息死した。その光景を見ていた一人の刑務官が呟いた。
「全国の自動販売機の購入ボタンが、まさか絞首台の床板開閉装置と連動していると、一体誰が想像出来るだろうか…。商品を購入する人々は知らずの内に刑の執行人となり、我々はストレスを抱えずに、ただ刑を見守るだけ…。全く以て良い世の中…」