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この作品には 〔ボーイズラブ要素〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

ダウト

作者: ニュー速Vip

何の因果か、俺は昔から女にモテた。

そう聞くと皆が決まって聞くのだ。『お前そんなイケメンか?』

俺は決まって思う。見れば分かるだろうしむしろ中性的な顔立ちであろうよ、と。無論口には出さず言い飽きた無難な答えで返す。

次の質問も決まりきっている。『じゃあお金持ちなのか?』

そうではないし、そうであっても言える訳が無いだろう、と言い飽きた答えを返す。

そしてまた決まりきった質問だ。ならば何故、と。

そしてまた言い飽きた答えを返すのだ。自分はそういう星の元に生まれたのだ、と。


残していた仕事を片付けて帰路につく。見慣れた風景を通り駅へと急いでいるとふと、繁華街で声をかけられた。

見るとそこには見知らぬ女がいた。


差し込む朝の日差しで目が覚める。起きて周りを見渡すと見慣れた部屋の風景。音をたてずに服を着替え、荷物を持つ。そして机に鍵といくらかの金額、書き置きを置いて部屋を去る。

部屋を出るとここの清掃員と眼が合った。もはや顔馴染みとなっている彼と軽く挨拶を交わし、階下へ向かう。

そう、ここは自宅などではなくホテルで、それもいわゆるラブホテルというやつである。


自宅に戻ったのは朝日が大分高く上り、もはや朝とは呼べぬ時間だった。遅い朝食を口にしながら、友人たちから幾度となくされた質問を思い出す。『そういう星の元に生まれた』というのは少々臭すぎる気もするが本当のことを言うよりはましであろう。

なにせ自分は生まれつきの床上手というやつである。本来は女性側に使う言葉であろうがさすがにありのまま言うのは憚られる。自分のそんな性質に気づいたのは何時だろうか、とにかく今朝のように顔も知らぬ女性と一夜を過ごし何食わぬ顔で帰る、ということが日常なのである。無論そんなことは辞めたいのであるが何処かしらを一人歩きしてきた噂とこれまた生まれつきの押しへの弱さ、そして場数を踏んだことにより発生している色気(?)がそれを許さないのである。せめて面倒が起こらないよう此方の情報は微塵も渡さないし、朝焼けと共に現場を去るようにしている。そんな生活を何年も続けた後、『その気』になった女性達が流したかどうかは判らないが自分が『詐欺師』と呼ばれていることを知った。なるほど的を射た表現ではなかろうか。


別段この生活を不満に思っていたわけではない。一般的にホットミルクを飲んでから寝たりするように自分は女を抱いて寝るのが自らの習慣だと思っていた。ただ世間とずれたその在り方にどこか思うところがあったのか、どこかでストレスを感じていたのか、原因は多数考えられるがある日自分の生活を赤裸々に他人に語ってしまった。いやはやげに酒の力とは恐ろしいものである。

おおよそ何百人と寝たか、最長記録はどれだけで逆に最短はどれだけか、なんて自分でもよく覚えていたななんてことまで一つも残さず暴露してしまった。それも同僚の女子にである。


朝の日差しで目が覚める。辺りを見回す---見慣れない景色である。一言で形容するなら女子の部屋だ。まさかあの後何かあったのかと自分にしては珍しく焦ってみる。なにせ周りが自分の色気(?)に当てられているなか自分にただ一人普通に接してくれたのは彼女だけなのだ。人並みの恋慕とはこういうものなのだろうか。


なんて考えていたら扉をあけて件の彼女がやってきた。

自分が開口一番、昨夜そういうことがあったのかとあまりに焦った様子で聞くものだから、彼女は困ったように笑いながら首を横に振った。

それで安心した矢先とんでも無いことを口走ったことに気付く。赤面して取り消そうとする自分に彼女はこれまた微笑みながら昨夜の事について話してくれた。


---どうも自分は柄にもなく酔いつぶれ、彼女の家に運ばれたらしい。それは迷惑をかけた、と頭を下げると自分の格好の違和感に気付く。どうも不自然に足がスースーするし服の素材も何かが違う。まぁ彼女が着替えさせてくれたのだろう、ならサイズも合わないだろうし違和感の一つや二つあるだろうと自分を納得させ立ち上がる。

ふと部屋に鏡があるのに気付き今の自分はどういう格好なのか鏡に写してみる。



まだ酔っているのでなければ、自分はスカートを履き、女物の服を身に浸けているらしい。


「お似合いですよ♪」


そんな声が後ろからした気がした。


「前から似合うと思ってたんですがここまでとは...」


なにか感嘆されている、


「思いきって家に運んで正解でした」


家に連れ込んだのはそんな理由だったのか、


「いやぁ惚れ直しちゃいましたよ あっ」


こんな状況じゃなけりゃ喜ぶ台詞なんだが。


その後はよく覚えていない。

とにかくひたすら彼女に連れまわされた。

こんな格好でなければデートと呼べるだろうに、なんて思っているうちにまた彼女の家に戻っていた。

もはや脳が正常な判断を為さぬまま彼女への恋慕を打ち明けた。

どうせ彼女からの想いも判っているのだ。据え膳食わぬは男の恥であろう。どうせならこんなことになる前に言っとけば---


「私男ですけど...それでもいいなら///」


ダウト。嘘だ。『詐欺師』がここ一番で騙されるとは笑うしかない-----


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


昨夜の事は良く覚えていない。もはや男でもいいじゃないか自分を受け入れてくれれば、なんて思い彼女...いや彼と一夜を共にした。意外と良かったなんて思っている自分が他人の様に感じられる。あと何故か彼女の自分への態度はそんなに変化していなかった。それはある意味で良かったと言える。過去の女達と同じような事になってはとてもじゃないが彼女とこれ以上共に居られなかっただろう。ただ一つだけ気にかかることは、

彼女が昨夜から一回も息を乱していないことである。



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